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コラム 29 の検索結果: 20

ワインコラム 第93回 シャンパーニュの話 エグリ・ウーリエ編

偉大なワインとは何か、ということを考えてみると、この問いに対する答えは難しく、人それぞれになるかもしれません。

 

ある人は豊富ながらも溶け込んだなめらかなタンニンを持つ赤ワイン、と答えるかもしれませんし、ある人はとろりとするような濃厚な甘口ワイン、またある人は香り高くミネラル感が溢れる白ワインと答えるかもしれません。

 

偉大なワインと呼べるワインに共通しているものは、美しい色調、豊かで複雑な香り、果実味と酸味の高度なバランス、そして長い余韻でしょう。

 

今回は、シャンパーニュChampagne地方トップ・クラスの造り手のひとり、偉大なワインを生みだすエグリ・ウーリエEgly Ourietをご紹介いたします。

 

シャンパーニュ地方、モンターニュ・ド・ランスMontagne de Reims地区、グラン・クリュに指定されているアンボネイAmbonnay村に居を構えるこの造り手は、自らが栽培するぶどうからワインを造る、レコルタン・マニピュラン(R.M.)というカテゴリーに入ります。つまり、購入したぶどうからワインを造るネゴシアンではなく、ブルゴーニュ地方で言うドメーヌDomaineにあたります。

 

大手メゾンが豊富な資金やスケール・メリットを生かして、シャンパーニュ地方内の各地から原料ぶどうを調達し、膨大なリザーヴ・ワインを含む複雑なアッサンブラージュ(=ブレンド)により上質なシャンパーニュを造るのに対し、小規模なレコルタン・マニピュランは限られた原料(=自らが所有するぶどう畑のぶどうとリザーヴ・ワイン)からワインを造るしかありません。

 

完璧主義者」と評されるエグリ・ウーリエの当主、フランシス・エグリ氏は、醸造はもちろんですが、ワインにとって一番大切な上質なぶどうを得るために厳しい畑仕事を行います。

 

このドメーヌには複数のキュヴェがあります。スタンダードなブリュット・トラディションBrut Traditionから、ブリュット・ロゼBrut Rosé、ピノ・ムニエPinot Meunier100%のレ・ヴィーニュ・ド・ヴリニーLes Vignes de Vrignyなど...

 

アンボネイは上質なピノ・ノワールで知られておりますが、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールBlanc de Noirsや赤ワインのコトー・シャンプノワCoteaux Champenoisは、ワインが好きな方なら一度は試すべき素晴らしいワインです。

 

スティル・ワインとシャンパーニュを別のものとして捉える方もいらっしゃいますが、エグリ・ウーリエの一連のワインを飲むと、まさに「シャンパーニュ地方の偉大なワイン」だなと実感することでしょう。

 

時にはじっくりと、エグリ・ウーリエクラスの上質なシャンパーニュとゆっくりと向き合ってみるのも有意義な時間の過ごし方ではないでしょうか。

Egly-Ouriet Ratafia - コピー ラタフィアも造っています。 

Clos Yは、3月4日のレストラン講座のテーマを「マイナー品種の実力」とし、世界の様々なぶどう品種の上質なワインを、それに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。エグリ・ウーリエのピノ・ムニエのシャンパーニュ、レ・ヴィーニュ・ド・ヴリニー(2009年8月デゴルジェ)も出します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第83回 2011年秋 フランスで出会った素晴らしいワインの話

2011年9月にフランス、スイス、イタリアのワイン産地を回ってまいりました。
 

今回は、パリで出会った素晴らしいワインについてご紹介させて頂きたいと思います。

 

日ごろ私は、日本には世界中のワインが集まっており、世界的に見てもかなり広いワインの選択肢が与えられていると思っております。実際、フランスでも入手困難なフランスワインが比較的容易に入手できることがありますし、その点で恵まれていると思います。

 

しかし世界にはそれこそ数えきれないほどのワインがあります。地元で消費されてしまい、他に出回らないワインも少なくありません。

 

さて、フランスの首都、パリ。パリは「ワイン産地」と言える場所ではないと思うのですが、世界中の素晴らしいワインが集まる場所と言えるでしょう。

 

まずはパリのレストラン、プティ・ヴェルドPetit Verdotでのお話です。このお店のオーナーは、ボルドー地方を代表するレストラン、コルディアン・バージュCordeillan-Bagesで日本人ながらシェフ・ソムリエを務めていらした石塚氏です。レストランというより気軽なビストロ風のお店ですが、流石に素晴らしいワインが揃っています!

 

食事と合わせて、グラスで10種類(!)ほど飲ませて頂いたのですが、特に印象的だったのは、

 

Mâcon-Villages Terroir de Clessé 2006 Domaine Michel

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Vouvray Clos du Bourg Moelleux 1959 Huet

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前者はブルゴーニュ地方南部、マコネ地区のシャルドネによる甘口白ワインです。この地区ではプイィ・フュイッセPouilly-Fuisséなど素晴らしい白ワインが産出されていますが、通常は辛口です。例外的に甘口を造る生産者がいますが、片手で数えられるほどでしょう。この造り手さんのワインは初めてだったのですが、やはり、世界にはいろいろなワインがあるものですね。

 

後者はロワールを代表する生産者の熟成甘口ワインです。1959はロワールでは伝説的な超優良年です。その味わいは...ブショネ(主にコルク中に発生してしまったT.C.A.という物質が原因で起こる、ワインの劣化の1種。ワインが濡れた段ボールのようなひどい香りを放つようになってしまいます。)でした!出していただく前から、「ブショネだけど試してみる?」と聞かれて試したのですが、なかなか派手なブショネでした。半世紀以上経った極上ワインを開けて、ブショネって辛いですよね...

 

さて、気を取り直して、ワインショップで発見した珍品をご紹介いたします。

 

Vin de Table de France Le Vin des Amis 2009 August Clape

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ワインの格でいうと、何ということはないテーブル・ワインなのですが、これがとんでもないワインでした。造り手のオーギュスト・クラープはローヌ北部、コルナスCornasを代表する生産者です。ローヌ北部にはコート・ローティCôte-Rîtie、エルミタージュHermitageなど錚々たるクリュがひしめいており、中でも高級ワインはバリック(225ℓ容量の樽)で長期間熟成させることがあります。そんな中、オーギュスト・クラープは昔ながらの大樽熟成で、しかも新樽は一切使いません。原料となるぶどうが生まれ育った環境をそのままワインとして表現しています。誰もが、ひと口目から「素晴らしい!」と言ってしまうようなワインではないのですが、特にある程度の熟成を経ると他のワインでは得難い感動を与えてくれる極上ワインとなります。

 

そう、オーギュスト・クラープのワインは素晴らしいのですが、真価を発揮するまで時間がかかるな、というのが私の個人的な正直な感想です。恐らく、その点は造り手さんも自覚しているのでしょう。そのため今回このコラムでご紹介するワインを造ったのかな、と思いました。このワインが...素晴らしかったです!2009年、まだまだ若いですが、素晴らしくおいしかった!いかにも北ローヌのシラーという感じで、極上のシラー飲みが持ち得る芯の通ったスパイスのアロマを持ち、果実味、酸味ともに豊かで、何より明らかにオーギュスト・クラープのワイン、コルナスを思わせるニュアンスに富んでいるのです。このワインの名前を訳すと「友人たちのワイン」。クラープの偉大なワインを、若いうちから、手ごろな価格で飲んでもらいたいと、正に友達用に少量生産したのでしょう。私はこの造り手さんを2004年に訪問しましたが、このようなワインがあるとは知りませんでした...この品質で12ユーロほどでしたので、毎日でも飲みたいほどです!

 

改めて、世界は素晴らしいワインで溢れています。

 

あなたは今晩、何のワインを飲みますか?

 

 

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ワインコラム 第61回 美食の話 フランス&イタリア編

前回に引き続き、訪問してきたばかりのフランスとイタリアのお話です。

 

秋真っただ中、秋と言えば食欲の秋ですから(笑)、今回は、旅先で出会ったおいしいものについてご紹介したいと思います。

 

まずはサンテミリオンSaint-Emilionのレストランで食べた、トゥールーズのソーセージSaucisse de Toulouseです。

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フランスでは豚肉加工品が多く消費されています。生ハムやパテ、ソーセージなどいろいろありますが、それら豚肉加工品も有名な産地があります。例えば、バイヨンヌBayonne(フランス南西部、スペインとの国境近くに位置する町)の生ハムや、モルトーMorteau(フランス北東部、フランシュ・コンテ地方の町)のソーセージなどです。

 

トゥールーズのソーセージはフランス南西部の町、トゥールーズで発達したもので、やや粗引きの豚肉のソーセージです。シンプルですが、ジューシー(ナイフで切ると肉汁が飛び出すほど!)で素材由来の甘味があり、ワインと良く合います。

 

続いて、今度はフランス北東部のアルザス地方Alsaceから、チーズのパイ包み焼きStrudelです。

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フランスではチーズの生産も盛んですね。各地に個性的なチーズがありますが、アルザス地方ではウォッシュタイプのチーズ、マンステールMunsterが有名です。今回出会った料理は、マンステールをたっぷりと使い、ソーセージも入れてパイ生地で包み、オーヴンで焼いたものです。ボリュームのあるこの料理には、赤ワインを合わせたいものですね。となると、アルザス唯一の赤ワイン、ピノ・ノワールPinot Noirの出番ですが、比較的軽いタイプのものが多いので、できればある程度濃縮感のあるものを選びたいものです。

 

次はイタリアに参ります。イタリアもおいしいものの宝庫ですね!

 

フランス料理とイタリア料理、全く違うもののように考えられていますが、私はそれほど大きな違いは無いのではないかと思っております。

 

一言で「フランス料理」といっても、地方ごとに郷土料理は大きく異なりますし、同じことがイタリア料理にも言えると思います。なので、フランス、イタリアと国で分けることにあまり意味はなく、地方ごとに分けて考えるほうがわかりやすいでしょう。

 

ひとつ、フランス料理とイタリア料理の大きな違いがあると思います。「パスタ」です。フランスでもパスタ類は食べますが、パスタが主役、という料理はほとんど見られないですね。大抵は肉であれ魚であれ、何かの料理の付け合わせとして使われています。

 

イタリアでは、コースの場合は前菜の後に登場します。コースの場合は一皿あたりの量は少なめです。コースではない場合は、たっぷりとした量で出てきますね。

 

今回ご紹介するのは、カンパニア州Campaniaで出会ったポルチーニと黒トリュフのフェットチーネです。

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イタリアの真ん中を南北に走るアペニン山脈を移動中に、近くに大きな町が無く、でもそろそろ食事をしたい、というタイミングで出会ったレストランの料理です。

 

イタリア語しか通じない小さなレストランで、正直料理に対して期待せずに入ったのですが...

 

このパスタにはやられました!(笑)

 

出された瞬間に、トリュフの香りに包まれます。ポルチーニはとろりとした状態にまで火を通され、太めのパスタであるフェットチーネに絡み、食べているこちらがとろけそうになります。ワインは地元の赤ワインを合わせて、良く合ったのですが、もっと熟成した状態のものがあれば尚良かったと思います。

 

日本も、おいしいものが溢れる秋。この週末にでも、秋の味覚とワインのマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

 

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ワインコラム 第48回 カリフォルニアの話 ナパ・ヴァレー編 その2

前回に引き続き、ナパ・ヴァレーNapa Valleyのお話です。
オーパス・ワンOpus Oneの後、私はスタッグス・リープ・ディストリクトStags Leap District地区に位置するスタッグス・リープ・ワイン・セラーズStag’s Leap Wine Cellarsを訪れました。

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ナパ・ヴァレーは南北に細長い地区で、東西には山脈が走っています。スタッグス・リープ・ディストリクトは東側の山の斜面に位置し、ぶどう畑は急な斜面にも展開されています。

スタッグス・リープ・ワイン・セラーズは、1976年、パリで行われたフランスワインとカリフォルニアワインのブラインド・ティスティングにおいて、フランスの錚々たるワインを押さえ見事1位に輝いた伝説を持っています(このワイナリーのすぐお隣に、スタッグス・リープ・ワイナリーStags’ Leap Wineryというよく似た名前のワイナリーがありますが、まったく関係のない別ワイナリーなので注意が必要です。とはいえ、スタッグス・リープ・ワイナリーのワインも上質です。)。

ここでは、畑を見せてもらい、樽熟成庫でワインを試飲させてもらいました。白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ、赤はメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の4種類のキュヴェです。樽で熟成させたソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネはどちらもしっかりとした構成がありながら、過度なボリュームが無く、上品にまとまっていました。赤は伝説のカスク23Cask 23はもちろん素晴らしいものでしたが、興味深かったのがアルテミスArtemisでした。カベルネ・ソーヴィニヨンに少量のメルロをブレンドしたこのキュヴェは、アニマル系の香りが立っていて、食事と合わせたら面白そうだなと思いました。いずれ、レストラン講座でご紹介できればと思っています。

続いて、カーネロス地区CarnerosセインツベリーSaintsburyを訪れました。

DSC00295 看板のないワイナリー入口。

カーネロスはナパとソノマ、2つの地方にまたがっていて、冷涼なサン・パブロ湾に近く、冷たい空気が流れ込んできます。そのため、栽培されているぶどう品種もピノ・ノワールなど冷涼地に適したものが多くなっています。

DSC00297 リラ仕立ての畑

ここではシャルドネとピノ・ノワールの複数のキュヴェを試飲させてもらいました。キュヴェによりワインの性格が異なり、いかにも新世界的なものもあればブルゴーニュ風のものもあり、面白い比較ができました。同じ地区のぶどうから同じ造り手が造るのに、こうもワインの性質が異なる。要因はいろいろあるのでしょうが、不思議と言えば不思議ですね。これがワインの面白さなのでしょう。

さて、夜はレストランで食事しました。セント・ヘレナの町を北側に抜けてすぐのところにある、ザ・ワイン・スペクテイター・グレイストーン・レストランThe Wine Spectator Greystone Restaurantです。

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このレストランは料理学校が運営しており、料理学校の敷地の中にレストランがある、という格好になっています。

店内は広く、テーブル・クロスのない木のテーブルが並んでいます。

前菜は、小さなスープ、魚のフライなどの盛り合わせを選びました。

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トーストしたパンに乗せたブランダードがおいしかったです。

メインは牛肉のステーキです。

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牛肉の質、ソースが抜群に良く、非常においしかったです。ワインはソノマ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンを合わせたのですが、とてもよく合いました!

デザートも前菜同様、小さなポーションの盛り合わせです。

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やはり世界的に有名なワイン産地だけあって、美食家も集まるのでしょう、予想以上に上質な料理を楽しむことができました。それと、サービスが素晴らしかったです。カジュアルな雰囲気ですがきめの細かいサービスをしてくださり、それは感動に値するものでした。

旅はいいものですね。勉強になります!

Clos Yでは、4月15日のレストラン講座のテーマを「カリフォルニア」とし、上質なワインとそれに合わせた料理を召し上がっていただきます。ご興味のある方は是非いらしてください。

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ワインコラム 第44回 ワイン産地で見つけた面白い看板の話

毎度とりとめもないことを書いているこのコラムをいつも読んでくださっている方、ありがとうございます!

今回は、ワインとは関係の無い(?)、ワイン産地で見つけた面白い看板をご紹介いたします。

恐らく今までで一番くだらない内容になりますが...

少しでも笑っていただければと思います。

まずは初級編。イタリアで、シチリア島のパレルモPalermoへ電車で移動しようとしていたときのことです。ホームで確認のため掲示板を見てみると...

Palermoへ
看板の文字がおかしいですね!掲示板が壊れていたのか、細かいことにこだわらないイタリア気質か...危うく別の世界に連れて行かれるところでした(笑)

さて、続きまして、オーストラリアの広い公園で見つけた看板です。

PICT0184
日没から日の出までの間、アルコール禁止!よほど夜中に酔って騒いだ人がいたのでしょうね。この看板が立って以来、この公園は昼間からアルコールを飲む人であふれたそうです。←(うそです...)

続きまして、またまたイタリアから、シュールな看板です。
Montepulciano5
「?」マークは私が書いたのではありませんよ!ホテルはこちら、という看板だと思うのですが、確かに、ベッドはわかりますが、傍らにある謎のボックスの意味がわかりませんね...

では最後に、とあるブルゴーニュのドメーヌを訪問した時に見つけたフランスらしいユーモアあふれるものです。

D. Hudelot-Baillet - コピー

訳しますと、「このメゾンは、両親を連れ添った70歳のお客さまにしか掛売りをしません。」

...

そんな客いないって!!

素直に掛売りはしません、と言えばいいのに...

そんなフランスが好きです(笑)

ワインとともに楽しい生活を!

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ワインコラム 第43回 ジュラの話 その2

コラム第29回で、ジュラJuraについて書きました。

個性的な、注目に値する産地です。

今回は、実際に訪問した時のお話です。

ワイン産地としてのジュラ地方は、アルボワArboisの町を中心に、南北に細長く広がっています。

アルボワは小さな町ですが、この地方の大手ワイン生産者やミシュラン・ガイド2つ星のレストラン、ジャン・ポール・ジュネJean-Paul Jeunetなどがあります。特にこの町の名を有名にしているのは、ルイ・パストゥールLouis Pasteur(生化学者、細菌学者で、発酵のメカニズムを解明した)が暮らしたこと、そして今日ではその記念館があることでしょう。

Arbois2008 アルボワの教会

今回ご紹介するドメーヌ・ジャック・ピュファネイDomaine Jacques Puffeneyを私が訪問したのは2005年の11月でした。フランスで評価の高いこの造り手は、アルボワの町のすぐ隣村にあります。

案内してくれたのは一見怖そうなひげもじゃのムッシュ。しかし私の質問に丁寧に答えてくれて、いろいろな種類のワインをテイスティングさせてくれました。

ここで珍しいワインを見つけました!ムロン・キュー・ルージュMelon Queue Rougeというもので、梗の部分が赤い、小さな房の白ぶどう品種です。ワインは熟した黄色い果実のニュアンスがあり、アルザスAlsaceのピノ・グリPinot Grisが連想させられました。

Arbois Melon-Queue-Rouge - コピー

しかし、なんと言っても圧巻は黄ワインVin Jauneです。サヴァニャンSavagninというこの地独自のぶどう品種を発酵させ、6年以上も樽で熟成させたこの地の特産品です。偉大なワインの要素として、長い余韻が必要不可欠ですが、このワインの余韻は強く、果てることなく続くかと思われるようなものでした。

帰り際にムロン・キュー・ルージュを買おうとしたのですが、ムッシュは「お金はいらない!」とのこと。風貌は怖い(失礼!)けど心は優しいかたでした。お金は払いました(笑)。

ジュラ地方の白ワインは、全体的に共通した個性があるようです。スペインのシェリーにあるような、ナッツのような香り、ややしっかりした酸味です。このような風味は、料理と合わせると実に楽しいものです。ジュラ地方では料理にジュラ地方のワインを使い、ますます食事とワインの相性を高めています。

少しもったいないかもしれませんが、例えば鶏肉の煮込みなどに少しジュラの白ワインを入れるだけで、料理の風味がぐっと深くなります。一度試してみてはいかがでしょうか?

Clos Yでは、心優しきジャック・ピュファネイのなかなか見つけることができないアルボワ・黄ワインを3月7日のレストラン講座で登場させます!興味のある方はご連絡ください。

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ワインコラム 第29回 ジュラJura地方の話

ワイン王国フランスには、様々な個性を持つワインを生むワイン産地があります。スパークリング・ワインの代名詞にもなっているシャンパーニュChampagne地方、重厚な赤ワインで知られるボルドーBordeaux地方、歴史あるテロワールのワインを産するブルゴーニュBourgogne地方...

 

数あるワイン産地の中で、では最も知られていない産地はどこかと考えてみると、「ジュラ&サヴォワJura et Savoie地方」かもしれません。

 

そもそも、ジュラ地方とサヴォワ地方は全く異なるタイプのワインを生み出す別産地です。なのに、ワインに関する本などを見てみるとほとんどの場合ジュラ地方とサヴォワ地方がひとくくりに扱われています。この事実だけを見ても、いかに注目されていないかがわかるというものです。

 

しかしながら、私はジュラとサヴォワは素敵なワイン産地だと思います。

 

特に今回ご紹介するジュラ地方は実に個性的なワイン産地です。

 

まずは位置を確認しましょう。ジュラ地方はフランス東部、スイスとの国境近くに位置しています。ブルゴーニュ地方の町ボーヌから、ジュラ地方の町アルボワArboisまで約90kmほどと近く、ブルゴーニュ系の品種であるシャルドネやピノ・ノワールも盛んに栽培されています。

 

ジュラ地方のワインの魅力は、ブルゴーニュ系品種も良いのですが、やはりジュラならではの品種にあると思います。

 

ジュラ地方の地場品種は複数ありますが、ここでは白ぶどうサヴァニャンsavagninをご紹介いたします。サヴァニャンはこの地方のワインに広く使われますが、この品種による特に有名なワインが「黄ワイン=ヴァン・ジョーヌvin jaune」と呼ばれるワインです。

 

黄ワインは十分に糖度の上がったサヴァニャンから造られる白ワインの一種で、樽で6年以上もの長い期間熟成されてからでないと出荷されません。結果、じっくりと熟成=酸化が進み、ワインは黄色く見えるほどの濃い色調を呈します。シェリーのような独特の香りがあるワインです。フランスではカレーの香りがあると言われていますが、確かにカレーの香辛料の香りがすることがあります。

 

黄ワインはアルボワを始めジュラ地方全域で造られていますが、シャトー・シャロンChâteau Chalonのものが最良とされています。

 

ch-chalon2 シャトー・シャロンのぶどう畑

 

他にもジュラ地方には個性的なワインがあります。陰干ししたぶどうから造られる甘口ワインヴァン・ド・パイユvin de paille、ぶどう果汁とマールmarc(ぶどうの搾りかすを原料とするブランデー)のブレンドであるマックヴァン・デュ・ジュラMacvin du Juraなどです。

 

いずれもジュラならではの、「テロワールのワイン」だと思います!

 

生産者も家族単位の小規模な造り手が多く、私が訪問したジャック・ピュファネイJacques Puffeneyピエール・オヴェルノワPierre Overnoyベルテ・ボンデBerthet Bondetなどは生産量こそ少ないものの上質なワインを造っていました。

arbois-jqcques-puffeney ジャック・ピュファネイのカーヴ

p-overnoy2 ピエール・オヴェルノワのドメーヌ

berthet-bondet ベルテ・ボンデのドメーヌ

 

ジュラ地方のワインは個性的で、本当に面白いと思います。しかしあまり知られていないのは、やはりその生産量の少なさが原因のひとつかと思われます。もし幸運にも見つけることができましたら、試してみてくださいね!

 

 

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ワインコラム 第26回 オーストラリア横断の話 南オーストラリア州編 その2

南オーストラリア州の旅は続きます。

 

リヴァーランドからアデレードに戻った私は再びバロッサ・ヴァレーBarossa Valleyに向かいました。グラント・バージGrant Burgeジェイコブス・クリークJacob’s Creekなどの大手を訪問し、安定した品質のワインに感心させられました。

grant-burge グラント・バージの畑

jacobs-creek ジェイコブス・クリークの近代的なセラー・ドア。レストランも併設されていて、たくさんの人が集まっていました。

 

jacobs-creek2 ジェイコブス・クリークの畑

 

少量の上質ワインを造ることよりも、良質なワインをたくさん造るほうが難しいのでは、と思います。

 

この日はバロッサ・ヴァレーの中心地であるタヌンダTanundaという町で夜を過ごしたのですが、ホテルがどこも満室で、町のはずれにあるキャラバン・パークに泊まりました。キャラバン・パークとは、広大な敷地にキャンピング・カーが置かれていて、利用者はそこに宿泊します。キャンピング・カーの内部にはベッド(私が利用した車には4人分のベッドがありました。)、キッチン、テレビ、冷蔵庫など必要なものはほとんど備わっています。トイレとシャワーは無く、パーク内の設備を使うことになります。4人で泊まれば安いですが、一人では一般的なホテルよりも高くつきました。一人旅は切ないものです...

 

ただ、夜の星の奇麗だったこと!オーストラリアでは美しい自然に何度も感動したものでした。

 

翌日は、エデン・ヴァレーEden ValleyヘンチキHenschkeを訪れました。英語を見て、どのように発音すればよいのかわからなかったのでワイナリーの人にどのように発音すればよいのか尋ねたところ、日本の発音そのままに「ヘンチキ」で良いとのことでした。面白い名前ですね!

 

名前は面白いですが、ヘンチキは実に高品質なワインの造り手です。トップ・キュヴェのヒル・オブ・グレースHill of Graceは恐らくオーストラリアで最も高価なワインです。試飲できなかったので、ワイナリーからやや離れた所にある畑を、舗装されていない道を走り見てきたのですが、見た感じはそれほど偉大なテロワールには見えませんでした。でも何か特別な要素があるのでしょうね。

hill-of-grace2 ヒル・オブ・グレース。貴重なぶどうを鳥に食べられないよう、ネットで保護されています。

 

続いて向かったのは、動物園です!ワインの話とそれるので、このお話は次回に番外編としてお届けいたします。

 

さて、次に向かったワイン産地はアデレードからやや南に下ったマクラレン・ヴェールMacLaren Valeです。ここも重要なワイン産地です。ダーレンベルグd’ArenbergピラミマPiramimma2つのワイナリーを訪れました。ダーレンベルグは老舗ワイナリーで、ワインは安定した品質を誇っています。品質の割に値段が安いので、感心させられます。ピラミマも優良生産者です。この造り手の甘口ワインは、私の心を打ちました!オーストラリアの甘口ワインは全体的にレベルが高いと思います。

 

この地区にはヌーンNoonというカルト・ワイナリーがあります。高品質なワインを造るものの生産量が少なく、常に高い値段が付けられています。ワイナリーの入口には訪問者を受け付けない「Soled Out」の文字が!

noon ヌーン入口。

 

残念ながらワイナリーの訪問はできませんでしたが、畑を見ることはできました。収穫間近の黒ぶどうが健やかに育っています。小粒で、いかにも濃いワインができそうです。後にシドニーでこのワイナリーのワインを飲んだのですが、私のワイン人生の中でも最も濃く、凝縮されたワインのひとつでした!

 

次に向かったのは、もしかするとオーストラリアで最も有名なワイン産地、クナワラCoonawarraです。クナワラはお隣のヴィクトリア州に近く、マクラレン・ヴェールから離れています。途中川を渡ったのですが、川には橋が無く、定期的に船が行き来していて、車を運んでくれます。

pict0104 向こうから、移動式橋(?)がやってきます。

面白い体験でした!

 

クナワラは、赤い土テラ・ロッサで有名な産地です。写真で見ると確かに赤い!のですが、オーストラリアには赤い土は珍しくないと思います。クナワラに限らず見られます。

katnooke795912 クナワラの畑。土が赤いでしょうか...?

 

ですが事実として、クナワラのワインは高品質です。カベルネ・ソーヴィニヨンが特に評価されていますが、実際に素晴らしいワインが多く造られています。

 

続いて、旅はお隣のヴィクトリア州へ続いていきますが...

次回はオーストラリア番外編、動物のお話です!

 

 

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ワインコラム 第19回 フランスのミシュラン星付きレストラン その2 3つ星編

前回に引き続き、今回はミシュラン・ガイド星付きレストランのお話です。

 

最新のミシュラン2009では、最高評価の3つ星レストラン29軒あります。大都市であるパリに集中するのは当然として、パリ以外の3つ星レストランは意外な田舎にあることが多いようです。それも、電車やバスを乗り継いで...といったレベルでさえなく、タクシーや車でないと行けないようなところです。さすがに3つ星だけあって立派な美しいレストランなのですが、そのような施設がひっそりとした田舎にあると妙に違和感を感じるものです。

 

私が初めて訪れた三つ星レストランロジュ・ドゥ・ローベルガードLoges de l’Aubergade(舌を噛みそうな名前ですね!私が訪れた2005年はこの名前でしたが、現在ではミシェル・トラマMichel Tramaというシェフの名前に変更されています。)も、そのような場所にありました。

 

ピュイミロールPuymirolという小さな小さな村にあるのですが、よそ者が足を踏み入れるのをためらってしまうようなひっそりとした村です。近くに大きな町があるわけでもありません。本当に、「よくこんな所(ちょっと、失礼ですね)に!」と思ってしまうような場所に天下の三つ星レストランがあります。たどり着くまでに少し苦労しました。この辺りは起伏が多く、細い田舎道をくねくねと走り続けました。

duras3フランス南西部の風景です。

 

当時ボルドーBordeauxに住んでいた私はプロヴァンスProvence地方へ出かけた帰り道だったので寄ったのですが、そうでもなければなかなか来られない所だと思います。

 

村は数分で端から端へ歩けるほど小さく、村についてからレストランを探すのに苦労はしませんでした。特にこれといった商店も見当たらないこの村に、シンプルな外観のこのレストランはひっそりと佇んでいました。

 

緊張しながら、初の三つ星レストランに入ります。5月。気持ちの良い時期だったので、テラスに案内されました。もはや、小村ピュイミロールの面影は微塵もありません。どこか南国の高級リゾートにでも来たような雰囲気です。静かで格調高い空気がゆったりと流れています。

 

席に着くと、ソムリエが食前酒を伺いに来ます。日本では大体シャンパーニュになりますが、フランスには各地に地元で消費される食前酒があります。このお店で勧められたのは、シェフのトラマ氏が造っているワイン、ソーヴィニヨン・ブランsauvignon blancでした。このあたりで造られているワインに興味があり、頼んでみるとほのかに樽香のある上質なワインでした。食前酒がおいしいといいですよね!これから始まる食事への期待が高まります。

 

私がオーダーしたのは、市場のメニュー Le Menu du Marché (76ユーロ) でした。三つ星というとかなりの出費の覚悟が必要と思いますが(実際パリではそうですが)、田舎にある三つ星レストランでは意外と安いところもあるのですね。

 

まず、アミューズ・ブーシュamuse-boucheとしてキャラメリゼしたプチ・トマト、刻んだきゅうり入りの白いムース、アボガドのクリーム、小さなえびせん(?)などが出てきました。見た目にも楽しく、今後の食事への期待が高まります。

 

続いて、前菜の前にもう一品。竹串に刺したフォワ・グラのテリーヌに、アーモンドなどのナッツがまぶしてあるものです。竹串を使うところは意外性がありますが、料理自体はクラシックなおいしいものです。

 

力の入った前菜entréeは、輝くような美しい野菜です。トマトや、緑、黄色のズッキーニなど。酸味のあるキャラメル風味のジュレがソースとして使われています。白インゲン豆のように見えるものが入っていますが、実はこれ、フォワ・グラでした!このような遊び心は楽しいですね!この野菜のおいしさは特筆ものでした。

 

どきどきの主菜platは、リー・ダニョーris d’agneau(仔羊の胸腺)をからりと揚げたものです。これも竹串に刺された状態で出てきました。なんだか日本の焼き鳥みたいな様子です。これといって複雑なソースがかけられているわけでもなく、素材の味わいを素直に楽しめるシンプルなものでした。私としてはちょっと残念でした。味つけ、そして特に見た目が...

 

フランス人なら、竹串に刺さって出てくる料理に新鮮さを感じるのかもしれませんね。私の場合は出てきた時点で「焼き鳥か!」とひとりで突っ込んでしまう(今考えてみると、串揚げか!でもよかったです。)ような気分でした。料理は見た目も大事ですよね。

 

続いてデザートに移っていきます。まず柑橘類風味の爽やかな一口サイズの飲み物が出ます。このあたりに三つ星の洗練を感じます。そしていよいよメインのデザートです。アーモンド・ムースのカプチーノ仕立て、カカオとアーモンドのアイスクリームが添えられています。カカオのアイスクリームが濃厚でおいしかったです!

 

最後はコーヒーとプティ・フール(小さな焼き菓子などの盛り合わせ。この店の場合、ほおずきがついていました。)で終わりです。 

 

食事を通して供されたパンは、グリッシーニ(イタリアにある、細長いかりかりのスナック)のほかに3種類ほど用意してありました。特に優れていた印象はありませんでした。

 

ワインは、この地のものをと思っていたのですが、残念なことに「これぞ地元の宝だ!」というものを見つけられず、好奇心からルーマニアピノ・グリPinot Gris 1990をオーダーしました。熟成感が出ていて、ほのかに甘みのあるタイプで、フォワ・グラと特によく合いました。なんとここのソムリエ、私が当時働いていたボルドーのビストロ・デュ・ソムリエBistro du Sommelierで過去に働いていたらしく、急に親近感がわきました。食後に蒸留酒をサービスしてくれたり、意外な出会いでした。

 

全体を通してみると、正直、うーん、こんなものか...と言った感じです。料理は全体的に軽く、特に主菜が残念でした。竹串も2度使っているし、フォワ・グラも連続で出ています。インパクトの強いものを使うのは1度で良かったのでは?と思ってしまいました。

 

サービスについては、私が「三つ星はどんなサービスをしてくれるのだろう?」と期待しすぎていたところがありましたが、それを差し引いてもやはり最高!とは言えませんでした。しばしばサービス・スタッフがホールから消え、一度自分でワインを注いでしまいました。

 

なんだか良くないように書いてしまいましたが、素直にレストランとして見るとやはりレベルは高いと言えると思います。ビストロなどと比べるとその洗練は圧倒的です。あとは価格とのバランスですね。あと、たまたま日本人の私がこのコースを食べたわけですが、フランス人などから見ると竹串も高評価に転じるのかもしれません。

 

結果として、経験できてよかったです。このあと、いくつかの他の三つ星レストランに行ったのですが、それらは忘れ難いような素晴らしいものでした。いつか、またご紹介できればと思っています。

 

次回はブルゴーニュBourgogneのお話です。

 

 

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ワインコラム 第3回 フランス南西部

手に入れたばかりの車でソーテルヌを訪れた翌日、旅支度を整え、私はスペインに向かい出発しました。

 

89日。6時過ぎに出発したのですが、まだ日が昇らず、暗い状態です。フランスの夏の太陽は、朝は遅いですが、日中はさんさんと地表を照らし、夜22時くらいでもまだ明るさが残っているほど、光を与えてくれます。日本のように19時ころ夕食を取ると、明るい中で食事を始め、食後も明るいまま、なんてことになります。

 

さて、ボルドーからスペインを目指す場合、大西洋の海沿いに、海を見ながら国境を超えるのが一般的だと思いますが、私は途中フランス南西地方のワイン産地に寄り道しました。

 

フランス南西部は、知名度こそないものの素晴らしく上質なワインが「隠れて」いる、非常に面白い産地です。私はこの土地のワインが大好きです。

 

まず最初に向かったのは、マディランという産地です。

 

しかし、ここに着くまで大変でした...なにせフランスでの運転経験が乏しい上に、未知の道を行くわけです。車にも慣れていません。ウインカーをだそうとしてワイパーを動かしたことが何度あったことか(笑)!その程度なら良いのですが、一度死にそうな思いをしたことがあります。

 

フランスの国道は、思いもよらぬものが走っています。

 

ボートを積んだ車や、動物(馬など)を積んだトラックのほか、何に使うのか巨大な石柱や、場合によっては家(!)を載せた大型トラックなどが見られます。これらのトラックはしばしば小さな先導車とペアになっているのですが、かなりスピードを抑えて走行しています。追い越し車線が無い時にこのような車に出会ってしまうと大変です。対向車線からこのような巨大トラックがくると、端によけないとぶつかりそうです。同じ車線にこのようなトラックがいると、遅々として進みません。ブロックされた気の短いフランス人ドライバーは追い越そう、追い越そうといらいらしているのが後ろから見ていてよくわかります。私はまだ買ったばかりの車にも、フランスでの運転にも慣れていなかったのでゆっくり運転していたのですが、このような状況が2度、3度と続くと、さすがに追い越したくなりました。

 

目の前にトラックがいます。対向車線を確認すると、長い一本道に対向車は見られません。緊張しつつ、いくぞ!と対向車線に入りスピードを上げます。中古のフィアットは徐々にスピードを上げていきます。

 

...追い越せません。

 

トラックが長いんです!!本当に、日本の常識が通用しない長さです!

 

ようやく追い越せそうになったとき、さらに同じ型のトラックが続いているではありませんか!スピードも乗ってきているし、一気に長いトラックを2台追い越すことにしました。

 

...追い越せません。

 

どれだけの距離を走ったのでしょうか?500m800mかもしれません。もっとでしょうか。すると、対向車が現れました!アクセルを踏めども踏めどもトラックをなかなか抜くことができません。対向車との距離は縮まるばかり。頭の中に、ブレーキを踏んで、またもとのトラックの後ろに戻ろうか、という選択肢も浮かんだのですが、やはりトラックを追い抜くことにしました。結果、対向車とぶつかる寸前?!でクラクションの中、トラックの追い抜きをすることができました。5年前の話ですが、今こうして書いていても手に汗握る経験でした。

 

それ以来、安全運転を心がけています!

 

さて、脱線話が長くなってしまいました。無事に生きて(笑)たどり着いたマディランは、地元のtannat (タナ)という黒ぶどう品種から力強い赤ワインを造っている産地です。ワインのほかに、世界3大珍味の一つ、フォワ・グラの産地でもあり、地元のレストランではフォワ・グラを摘出した鴨の肉が供され、マディランと素晴らしい相性を見せています。

 

私が訪問したのは、かのトム・クルーズ氏が自家用ジェットでワインを買いに来ると言われる(本当かどうかわかりませんが)アラン・ブリュモン氏のドメーヌです。ここのワインは渋みの元となるタンニンがたっぷりとあり、若いうちはやや粗い印象を受けるほどなのですが、熟成するに従い洗練さを増していきます。飲みごろになると、他のどんな高級ワインにも見つけることができない独特の高貴さを備えてきます。

 

実際に畑を案内していただき、ぶどうの樹を観察しました。ボルドーから少し南に来ただけなのに、ぶどうの樹の仕立て方が違います。

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ぶどう品種が違うということももちろんあるのでしょうが、やはりテロワール(=ぶどう畑と、それを取り巻く環境)が違うのでしょうね。その土地、気候に合ったぶどう品種を植え、最適な栽培をする。シンプルですが、これが物事の本質ですね。

 

続いて醸造所を見せていただき、テイスティングもさせていただきました。畑も、醸造設備もシンプルながら、一つ一つの作業を丁寧に行うことが偉大なワインへとつながるのだと実感しました。

 

いろいろ貴重な経験をさせていただいた一日でした(笑)!

 

次回は、南西地方第2話です。

 

 

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