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2009-04

ワインコラム 第2回 ボルドー ソーテルヌ編

前回のコラムでは、私がワインを勉強するために会社を辞め、ボルドーへ飛び込んだところまで書きました。

 

7月いっぱいで、語学学校の寮を出てボルドー市内中心部の住まいに移りました。この時期はとても暑かったことを覚えています。昼間、家の近くの道を歩いていると太陽につぶされそうな感じがしました。

 

シャトーでの仕事が始まるのは9月から。私が8月をどのように過ごしたかというと、とにかく車に乗って、シャトーを訪問しました。

 

中古で手に入れた車はイタリアのフィアット社のやや大型のものでした。幸い?私は日本での運転の経験があまりありませんでしたので、フランスの交通ルールで車を運転することにそれほど戸惑いはありませんでしたが、教習所以来のマニュアル車の運転には最初苦労しました...

 

しかしすぐに慣れ、いよいよシャトー巡り開始です。

 

まず最初に訪れたのは、ボルドーが世界に誇る「貴腐ワイン」の産地、ソーテルヌ地区です。

 

貴腐ワインとは、ボトリティス・シネレアという菌(かび)が付いた、一見腐ったように見えるぶどうから造られる甘口ワインです。実際はボトリティス菌はぶどうを腐らせておらず、ぶどうから水分を奪います。そのようなぶどうを搾ると凝縮された甘い甘い果汁が得られ、それを発酵させると得も言われぬ味わいを持つ甘口ワインができます。こうしてできる、自然の奇跡による極上の甘口ワインを、人は畏敬の念を込めて貴腐ワインと呼ぶわけです。

 

現代ではごく普通のぶどう果汁を原料に、人工的にたやすく甘口ワインを造ることができますが、貴腐ワインのように自然の恵みによる甘口ワインを造るのは非常に手間暇がかかります。自然と真摯な生産者により生まれたこの「黄金の飲む宝石」ですが、生産者は販売に苦労しているようです。

 

砂糖が普及する以前、甘口ワインは王侯貴族だけが楽しめる正真正銘の高級ワインでしたが、砂糖の普及、料理のヘルシー志向により、甘口ワインの人気が無くなってきています。みなさまは、甘口ワインを積極的に日常に取り入れていますか?確かに、現代の私たちに、ゆっくりと時間をかけて甘口ワインを楽しむ時間は取れないかもしれません。しかし、忙しい現代にこそ甘口ワインを楽しむような時間を取ってみてはいかがでしょうか?甘口ワインは通常の赤ワインなどに比べ保存性が高いですから、抜栓後冷蔵庫に入れておけば1週間くらいは平気でもちます。この1杯は、きっと心に効きますよ!

 

少し脱線してしまいました。ソーテルヌ地区についてですが、ソーテルヌという名の小さな村を中心に、バルサック、プレニャック、ボムなどのいくつかの村がソーテルヌという名の貴腐ワインを生産しています。ボルドー市から来ると、まずバルサック村に着くのですが、ここは比較的なだらかな土地です。そこから数km離れたソーテルヌ村近くになると、起伏に富んだ地形になります。土壌も、目に見える表土は前者は砂・粘土質で濡れるとべたっと重そうであるのに対し、後者は小石が混じり、比較的水はけがよさそうでした。このような違いが、ワインの味わいにも影響するのでしょうね。

 

貴腐ワインですが、世界中どこでも造ることができるわけではありません。特殊な環境が必要です。その環境を作るのに一役買っているのが、この土地の場合「シロン川」という小さな川です。収穫期が近づいてくると、この川から発生する朝の霧がぶどう畑を包みます。その湿気によりぶどうにボトリティス菌が繁殖しますが、午後になると霧は消え失せ、太陽がさんさんと照り付けます。こうすることにより、ぶどうは腐りきらず、健全な「貴腐」状態になるわけです。

 

今回私が訪問したのは、「シャトー・ダルシュ」です。ソーテルヌ村のすぐ近くにあり、1855年、ナポレオン3世が作成させた優良シャトーの格付けで、見事第2級に列せられた由緒あるシャトーです。「シャトー・ダルシュ」という名の貴腐ワインのほか、特別に優れたぶどうから造られる「シャトー・ダルシュ・ラフォリー」という特別キュヴェも造っています。生産者と直接話すことができ、いかに貴腐ワイン造りが難しいか、困難かを教えていただきました。貴腐ワインの出来は、まさに自然にかかっています。うまく貴腐が発達すればよいものの、世界的に名の知られたソーテルヌでさえ、理想的に貴腐が着くのは稀なことです。あまり貴腐が発達しない年は、生産者は貴腐状態のぶどうのみ、まさに一粒ずつ収穫しなければなりません!あの広い畑で、ぶどうを調べながら一粒ずつの収穫...考えるだけで、その困難さにぞっとします。ただでさえ収穫は重労働なのに!

 

...貴腐ワインは、ありがたく、感謝の気持ちをもっていただきましょう(笑)

 

貴重な勉強をさせていただいた一日でした。

 

さて、シャトー・ダルシュは優れたワインの造り手ですが、同時にホテルも運営しています。こぢんまりとしていますが、白を基調にした美しい、高級感のある佇まいです。甘口ワイン好きのかたは、この甘口ワインのメッカで美しい、甘い夜を過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

帰りは運転を始めて、初めて高速道路に乗りました(私はワインの造り手を訪問するとき、ワインのテイスティングをしますがワインを飲みこまず、吐き出しています。プロの方は皆そうだと思いますが...。飲酒運転は絶対にしません!)。

 

翌日から、語学学校で友達になったスペイン人たちとの友情が熱いまま、スペインを目指します。もちろん、ワイン産地にも行きました。

 

次回は南西フランスのお話です。

 

 

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ワインコラム 第1回 ボルドー 到着編

こんにちは。Clos Yの中西です。

 

コラムとして、私が今まで訪問してきたワイン産地の話を書いていこうと思います。

 

まずは、実際にワイン造りを経験することができたフランスのボルドー地方のお話です。

 

私はボルドー市内のほぼ中心部で、2004年の7月から2005年の6月まで、丸一年暮らしていました。目的はただ一つ、「ワインを勉強すること」でした。

 

まず、私がボルドーに住むに至るまでの経緯を説明させてください。

 

大学を卒業し、入社した会社で私はワインの輸入に関する仕事をしておりました。輸入したワインは当然売るわけで、ワインを売るための手助けになる販売促進物を作ったり、試飲会でワインをサービスしたりしていました。

 

しかしある日、ふと重要なことに気づいたのです。

 

それは、「私はワインを説明して売る立場にありながら、世界的に有名なぶどう品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンすら見たことがない!」という事実でした。そうなると、いてもたってもいられません。幸い、取引先のボルドーのワイン会社に相談したところ、研修生として働かせてもらえるシャトー(=ワインの生産者)を紹介してもらえました。その生産者と個人的に連絡を取るのと並行してビザを申請し(ビザでは苦労しました...!)、勤めていた会社を辞め(お世話になった先輩方には今でも感謝しています!)、ボルドーへ飛び込んだわけです。

 

不安はありました。大学でフランス語を勉強し、フランスに1年間留学しており、ボルドーにも1ヵ月間住んでいた経験があったのですが、フランス人とともに働くのは初めてでしたし、ワイン造りの仕事は具体的にどのようなことをするのかわかりませんでした。住むところも決まっていませんでした。

 

しかし、気持ちとしては希望が大きな割合を占めていたと思います。これから始まる新しい生活への期待。そして、何よりワイン造りの現場で働けるのです...!!

 

出国前は忙しかったと思うのですが、気がつくとボルドーにいたように思います。

 

ボルドーはフランスでも上位5位に入る大きな町です。世界的に有名なワイン産地なので、さぞワイン、ワインした町かと思うでしょうが、実際のボルドーの町はそれほどワインを思わせるものがありません。ぶどう畑はボルドー市内には無く、数kmから数10km離れた所にあります。

 

7月初旬にボルドーに着いた私は、まず予め申し込んでおいた語学学校に行きました。1ヵ月の短期集中コースです。目的は語学の勉強ではなく、付属の寮があったのでそこに住みながら、今後暮らす部屋と車を探すことでした。

 

それなりに苦労しましたが、首尾よく住まいと車を手に入れました。授業もそれなりに?!出席して、とても大切なもの、友達を得ました。クラスメイトにはスペイン人が多かったのですが、彼らはかなりのりがよく、夜な夜な飲み明かしたものです。飲んだなあ... 後日、彼らを訪ねにスペインに行くことになります。そのお話もいずれご紹介する予定でいます。

 

さて、この時点で8月。契約したシャトーで働く9月まで、あと少しです...

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次回に続く。

 

 

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ホームページ開設です!

こんにちは。Clos Yの中西です。

 

本日、ホームページが開設されました!

 

ここでは、ワイン講座に関する最新情報のほか、ワインに関する小話などをご紹介していこうと思っております。

 

Clos Yが目指していることは、「ひとりでも多くの方にワインの魅力を伝えること」です。

ワインに少しでも興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

 

よろしくお願いいたします。

 

Clos Y

中西 祐介

 

 

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日本ソムリエ協会資格試験対策講座

Clos Yの出張講座です。日本ソムリエ協会認定の資格(ソムリエ、ワインアドヴァイザー、ワインエキスパート)試験に最短距離で合格できるようにサポートいたします。オーダーメイド講座感覚で、個人個人のレベル、ご要望に応じて丁寧に指導いたします。日時、場所はご都合のよいところをご指定いただけますので、なかなか勉強のためのお時間を取れない方に特にお勧めの講座です。また、二次試験に向けてテイスティング、抜栓実技もトレーニングしたい方にはオプションでテイスティング、抜栓実技指導もご受講いただけます。

 

カリキュラム      

1          学力確認試験、試験に向けての目標、学習ペース相談

2          ワイン概論、世界の生産量、順位など

3          フランス概論 AOC解説

4          ボルドー

5          ブルゴーニュ

6          シャンパーニュ

7          ロワール

8          ローヌ

9          フランスその他の地方、V.D .N.&V.D .L、新酒

10        ドイツ

11        イタリア

12        スペイン、その他のヨーロッパ諸国

13        アメリカ、オーストラリアその他新世界

14        スピリッツ、リキュール、その他酒類、飲料

15        ワインと料理

16        ワインの購入・管理・販売

17        公衆衛生・食品保健、J S A教本の新内容・変更内容

18        模擬試験

          

 

講座名  出張 日本ソムリエ協会資格試験対策講座

           ※ワインテイスティングは含まれておりません。

開講日  ご都合のよい日時をお選びいただけます。

時間     1コマ60

会場     ご都合のよい場所をご指定いただけます。

           ※講師の交通費の実費が別途かかります。

受講料  18回 94,500円(税込)

 

 

オプション        

講座名  JSA資格二次試験対策テイスティング (約30分)

受講料  3種類のワインを比較テイスティングする場合(以下1回当たりの受講料)

           おひとりで受講される場合 6,825円(税込)

           二人で受講される場合 ひとり5,250円(税込)

           三人で受講される場合 ひとり4,200円(税込)

           四人で受講される場合 ひとり3,675円(税込)

           同時に受講される方が多いほうが一人あたりの受講料がお安くなります。

           ※ワインの種類を増やすことも可能です。お気軽にご相談ください。

          

講座名  抜栓実技 (約30分)

受講料  3,150円(税込。抜栓に使用するワイン代込。ワインオープナー、リトー(布)は予めご用意ください。)

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Clos Yとは?

Clos Y(くろ・いぐれっく)は、ワインを心から愛するソムリエが行う、ワインに関する出張サービスです。出張ワイン・スクール、レストランで料理とワインを楽しむ「レストラン講座」、ソムリエがあなたのワイン会(誕生日や記念日など)に出向く「出張ソムリエ」など楽しい企画をご用意しております。また、お客様のご要望に応じてワイン関係のイヴェント(新酒ヌーヴォー、研修、新年会や忘年会)のお手伝いに伺ったり、ワイン講座を組み立てたり、ワインの販売も行っております。ひとりひとりに最適なサービスをご提供できるよう、向上を続けます!

Clos Y ワイン講座一覧

出張ワインスクール

ご希望の場所、時間に、講師が出向いて行うワイン講座です。
ワイン入門講座
学生向けワイン講座

レストラン講座

レストラン講座とは、レストランを舞台に料理とワインを楽しんでいただく講座です。ただワインについて学ぶだけではなく、上質な料理とのペアリングもお楽しみいただけます。

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