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2012-12

ワイン・コラム 第117回 2012年印象に残ったワインの話

2012年も終わろうとしております。

 

どのような年でしたでしょうか?

 

私は今年もいろいろなワインに出会うことができました。とても安価な割にとても良くできていて驚かされたポルトガルの白ワインや、入手困難なカリフォルニアのカルト・ワイン、フランスで出して頂いた日本未入荷のワインなど...

 

深く思いだすときりがありませんので、ぱっと思い浮かぶ印象的なワインをいくつかご紹介させて頂きます。

 

まずは2月にClos Yの企画で行った「ドメーヌ・デ・コント・ラフォンDomaine des Comtes Lafonの会」で登場した、コント・ラフォンのムルソー・プルミエ・クリュ シャルムMeursault 1er Cru Charmes 1984。1984はそれほど良い年ではありませんでしたので、ワインの状態に少しの不安がありましたが、開けてみてその品質の良さに驚かされました。熟成感のある複雑な香りが広がり、味わいも果実味がしっかりと残っていて、素晴らしい状態でした。難しいヴィンテージの白ワインでも、偉大な造り手が素晴らしい畑のぶどうから造るワインは熟成能力があることを、改めて実感しました。

 

王道のワインの後は変わり種をひとつ。フランス、アルザスAlsace地方オードレイ・エ・クリスチャン・ビネールAudrey et Christian Binnerが造るカッツ・アン・ビュル ピノ・グリKat’z en Bulles Pinot Grisです。ヴァン・ド・ターブルVin de Tableの格付けになりますのでヴィンテージの表記がされておりませんが、2009年のぶどうから造られたものです。天然酵母によるアルコール発酵を行った微発泡性のワインなのですが、瓶詰めの際にフィルターをかけていないため澱が多く、濁っています。ぶどうに由来するのか、少し赤みを帯びた茶色っぽい色調を呈しています。皮や種も一緒にぶどうを搾った時のような香りを放ち、グラスを回すとしゅわっと泡立ち、二酸化炭素を含んだ香りが立ちます。少し残糖があるようで、甘味を伴う果実味がしっかりしています。酸味もなかなかしっかりとしていて、ボリュームがあります。泡は穏やかで口中でムース状。余韻はナチュラルな香りと果実味が少し太く、やや長く続いていきます。極めて個性的なワインで、極めてナチュラル。面白いです!出会うワインがほぼすべて初めてで、「これはどのようなワインだろう?」とどきどきしながらワインをテイスティングしていた初心を思い出させてくれた、心を打つワインでした。

 

続いてオーストラリアからロゼ・ワインをひとつ。同国を代表するピノ・ノワールの造り手のひとり、バス・フィリップBass Phillipのピノ・ノワールのロゼ2010です。西オーストラリア州のマーガレット・リヴァーなど、良いワインが生産される土地はオーストラリアの南部各地にありますが、ピノ・ノワールに関しては冷涼なヴィクトリア州南部やタスマニア州など一部に限られるように思います。バス・フィリップはヴィクトリア州のギップスランドGippslandということろに居を構えています。前述の通りピノ・ノワールで高い評価を得ておりますが、ロゼは私は経験したことがありませんでした。これが、素晴らしかったです!オレンジがかった色調は濃く、香りはまるでピノ・ノワールの赤ワインのようにしっかりとしていて複雑です。果実のコンフィに土っぽさ、スパイシーさが絡み合います。味わいでは果実味が十分にあり、タンニンもはっきりと感じられるレヴェルなのですが、アルコール度は高くなく、全体としてはややスマートにまとまっています。テイスティング用に黒いグラスがありますが、そのグラスで飲んだら赤だと思うような、しっかりとした構成のロゼ・ワインでした。

 

来年はどのようなワインとの出会いが待っているのでしょうか?これからも素晴らしいワインをご紹介させて頂きたいと思います!

 

Clos Yは、2013年も毎月のレストラン講座に加えて、普段なかなか飲むことができない「偉大なワイン」をテイスティングすることができる講座を企画していきます。これからも、ワインと共に元気に過ごしていきましょう!

 

 

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vinclosy@aol.com

ワイン・コラム 第116回 ボルドー地方の話 デュクリュ・ボーカイユ編

ワイン。伝統的なワイン産出国においては、生活の必需品としている人もいますが、このコラムを読んでくださっているような、多くの日本人にとっては嗜好品の部類に入るものでしょう。
 

嗜好品としてワインを見ると、いろいろな楽しみ方があります。ただ黙々とワインだけを楽しんでも良いですし、歴史ある生産者や畑が持つ物語に思いを馳せたり、料理と合わせたり、ワイン好きな人と意見を交換したり...

 

ワインは嗅覚や味覚を楽しませてくれるものですが、その美しい色合いによって視覚も楽しませてくれます。視覚の楽しみと言えば、美しいボトルやラベルもその一つと言えるでしょう。

 

実際、よほどのワイン愛好家でなければ(いや、よほどのワイン愛好家でさえも?!)、ほとんど同じ条件、もしくは素性のわからないワインが2種類目の前にあって、どちらかを選ぶ場合、美しいラベルが貼られている方のワインを選ぶのではないでしょうか。

 

私はあまりラベルの美しさだけでワインを選ぶことはありませんが、中身がとても良くてもデザインが「...」なものは少し残念に思いますし、世界的に見るとイタリアのラベルのデザインに秀逸なものが多いと思い、楽しく感じます。

 

前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するボルドーのシャトー・デュクリュ・ボーカイユChâteau Ducru Beaucaillouのラベルは、私が個人的に大好きなもののひとつです。

 

このシャトー、目を引く黄色と金色のラベルも素晴らしいですが、それ以上にワインの品質が充実しています。

 

シャトーはサン・ジュリアン・ベイシュヴェルSaint-Julien-Beychevelleに位置しています。ボルドーの町から北上してくる場合、マルゴーMargaux村を通り抜けて、サン・ジュリアンのシャトーとしてはまず美しいシャトー・ベイシュヴェルが姿を現します。シャトー・デュクリュ・ボーカイユはそのすぐ先にあります。ジロンド川のすぐそばで、「美しい小石」という名のままに、砂利質の土壌の素晴らしい畑を約75ha所有しています。

 

メドック地区では、川に近い畑は素晴らしい資質があるとされています。実際、その名を轟かす極上シャトーの多くは川沿いの畑を所有しています。

 

シャトー・デュクリュ・ボーカイユのぶどうは全て人の手で収穫され、区画ごとに醸造されます。ロットが多くなり管理が大変ですが、その分細部にこだわって最終的に上質なブレンドをすることができるようになります。

 

このシャトーが造るグラン・ヴァン、シャトー・デュクリュ・ボーカイユの品質が高いのはもちろん、セカンド・ワインのラ・クロワ・ド・ボーカイユLa Croix de Beaucaillouの品質の高さも特筆すべき点です。樹齢10年以下の若い樹のぶどうと、グラン・ヴァンに及ばない品質の(しかし、グラン・ヴァンに用いられるはずで、同じ手間暇をかけて造られた)ワインがブレンドされます。セカンド・ワインの品質にも満たないワインはネゴシアンに売られますので、セカンド・ワインの質も高く保たれているわけです。

 

シャトーを訪問すると、ワインのテイスティングが最後に行われるのですが、このシャトーの試飲ルームに通されて驚きました。壁が一面黄色いのです!私が訪問させていただいたワイナリーの中で、最も派手な試飲ルームだったかもしれません(笑)

 

その豪華な内容と美しいラベルから、正月に飲みたいワイン、という気がします。もうすぐ新年を迎えます。2013年最初のワインが決まっていない方は、デュクリュ・ボーカイユも良いのではないでしょうか。

 

Clos Yは1月14日のレストラン講座シャトー・デュクリュ・ボーカイユの1966(良い年です!)に登場して頂く予定です。現行のラベルと全く違っていて面白いです。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第115回 ボルドー地方の話 プピーユ編

前回は個性の強い生産者、シャソルネイChassorneyのお話でした。

 

今回ご紹介させて頂くプピーユPoupilleの当主、フィリップ・カリーユ氏も、個性的ということでは引けを取りません。西のフィリップ、東のフレデリック...(笑)

 

どちらも素晴らしいワインという芸術作品を生みだす天才。優れた芸術家は個性的な人が多いのでしょうか。

 

プピーユは、名高いサンテミリオンSaint-Emilionの東隣、コート・ド・ボルドー・カスティヨンCôtes de Bordeaux Castillonのアペラシオンのワインを造っています。

Castillon1 Castillonの風景 

メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなど、複数の品種をブレンドしてワインを造ることが一般的なボルドーにおいて、プピーユは例外的にメルロ100%のワインも造っています。

 

この造り手さんの名を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ボルドーで最も高価な赤ワインのひとつペトリュスPétrusにブラインド・コンテストで最後まで張り合ったという逸話です。張り合った、ということは最終的には負けたのか、出品されたペトリュスとプピーユは同じヴィンテージだったのか、詳細は本人に確認していませんが、そのコンテストは1992年に行われたようです。

 

ペトリュスもメルロ100%。同じ品種構成で、偉大なワインに肩を並べたというのは凄いことですよね。それからたちまち知名度を上げたプピーユはいわゆる「シンデレラ・ワイン」の仲間入りを果たしました。

 

さて、そんな凄いワインを造るフィリップ氏、冒頭に書きましたように個性的です。私の親しい友人に、フィリップ氏をとても良く知る人物がいるのですが、話を聞くとやんちゃというか独創的というか...少しタイプは違いますが、東のフレデリック氏と通じるものがあるように思えます(笑)

 

ワイン造りに関してはとても研究熱心で、最新の醸造技術を取り入れたり、ボルドーでは珍しく(世界的にも珍しいですが)醸造に必要不可欠な二酸化硫黄を使わないキュヴェを造ってみたりしています。

 

実際、プピーユのワインは優れたメルロらしい果実味に溢れ、ボリューム感があり、タンニンはたっぷりとしていながら丸く、万人受けするようなスタイルです。

 

プピーユのワインを試してみよう、という方にひとつ、個人的に注意と言いますか、少しややこしい点のご紹介をいたします。プピーユでは、グラン・ヴァンのプピーユの他に、セカンド・ワインのシャトー・プピーユというキュヴェもあります。ボルドーでは、一般的にはグラン・ヴァンのほうがシャトー○○(例えばシャトー・マルゴーやシャトー・ラトゥールなど)という名で、セカンド・ワインには各シャトー独特の名前(例えばパヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーやレ・フォール・ド・ラトゥールなど)が付けられています。プピーユに関しては、シャトー・プピーユというキュヴェのほうがセカンド・ワインです。

 

素晴らしいワインを楽しむとき、そのワインが出来た土地を思い浮かべるのと共に、造り手さんのことを考えてみると、また楽しみが増えるかもしれません...!

 

Clos Yは、12月19日のレストラン講座で、プピーユの1999をお楽しみ頂く予定です。秘蔵のこのワイン、既に市場から消えてしまっていると思います。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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