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2010-05

ワインコラム 第52回 プロヴァンス地方の話 ベレBellet編

夏を予感させる日差し、寒くも暑くもなく、気持ちのいい季節ですね。

今回は、そんな爽やかな季節に相応しい、美しいワイン産地のお話です。

フランス南東部、プロヴァンスProvence地方。美しい地中海と、自然の残る山を擁し、フランス人さえ憧れる土地です。

新鮮な海の幸、山の幸に恵まれ、ワイン生産も盛んに行われています。しかしその大部分は日常消費用のロゼRoséが占めており、銘醸ワイン産地としては認識されておりません。

しかしながら、もちろん例外はあり、高品質なワインも一部生産されています。今回は、そんな「興味深い」プロヴァンスのワインのひとつ、ベレBelletのお話です。

地中海沿いに広がる、「紺碧海岸」と呼ばれるコート・ダジュールCôte d’Azur。イタリアにほど近いニースNiceや、国際映画祭(2010年は5月12日に始まりました。)が行われるカンヌCannesなど、その名を聞いただけでも気分が高揚するような美しい町が連なっています。

ベレは、ニースのすぐそばにあるワイン産地です。

ニースに行かれたことがある方の中で、どれだけの方がベレの名を知っているでしょうか?ワインのプロフェッショナルでさえ、ベレについて説明できる人は少ないのではないかと思います。私が思うに、ベレは数あるフランスワインの中でも最も入手困難なワインのひとつだと思います。

特に高価なワインではありません(プロヴァンスのワインとしては少し高価ですが)。価格の点ではなく、生産量が問題です。規定では、650haがベレとしてのワインの原料となるぶどう生産地区として認められていますが、実際は50 haほどしかぶどう畑が存在しておりません。50 haというと、ひとつのワイン生産地区としては驚くほど小さいものです。そのため、ワインの量も少なく、ニースでさえ、探してもベレのワインがなかなか見つからない状況です。

しかしベレはワイン産地としての歴史は古く、19世紀の初頭に大いに栄えていたようです。A.O.C.を獲得したのも1941年と古く、ワイン産地として注目されていたことが伺えます。

実際この地を訪れてみると、実に興味深いところです。海沿いのニースにとても近いのに、ぐっと標高が上がり、風景も海というより山の雰囲気です。非常に起伏に富む土地で、大きな畑を開くのは不可能で、ぶどう畑は所々に点在していました。

Bellet ベレのぶどう畑。

ワインの造り手も少ないようで、ドメーヌを見つけるのに苦労した記憶があります。

実際のワインはというと、そこはやはりプロヴァンスのワインです。白、ロゼ、赤の3種類が造られていますが、どれも軽やかで、トマトやオリーヴ・オイルを用いたプロヴァンス風の料理を引き立ててくれるようなワインです。

Monaco ニース風サラダ。 

このようなワインは、これからの季節日本でも活躍してくれそうですが、残念ながら日本ではベレは流通していないようです。フランスに行ったときにでも入手して、いずれご紹介できればと思っております。一度試す価値のあるワインと言えるでしょう。

Bellet - コピー

この週末にでも、ベレは無理かもしれませんがプロヴァンスのワインを試してみてください。一般的なロゼでも、これからの季節はおいしいと思いますよ!

 

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ワインコラム 第51回 ロワール地方の話 ミュスカデ編

有名なのに、実はその実態がよく知られていないものがあると思います。

 

動物や魚、機械や工業製品...

 

ワインの世界において、ミュスカデMuscadetはそのような存在かもしれません。

 

フランスを代表する辛口白ワインのひとつで、生牡蠣などの魚介類と良く合う良質なワインですが、価格が手ごろで重宝します。

 

しかし、逆にその価格のためか、高級レストランのワインリストに載ることは稀ですし、ワイン好きの話題に上ることも多くありません。

 

そんなミュスカデの「現場」を見るべく、2004年の春に産地を訪問してきました。

 

ミュスカデはフランス北西部、ロワールLoire地方、中でも一番西側の、大西洋近くの冷涼な土地で造られています。近くには大きな町、ナントNantesがあります。このあたりではしっかりとした酸味を持つぶどうが収穫され、それがそのままワインの味わいに反映されます。

 

ミュスカデ、と名のつくワインは現在4つ(ミュスカデMuscadetミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌMuscadet Sèvre et Maineミュスカデ・コート・ド・グランリウMuscadet Côtes de Grandlieuミュスカデ・コトー・ド・ラ・ロワールMuscadet Coteaux de la Loire)ありますが、ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌがその大部分を占めています。

 

ワインの原料となるぶどう品種は、その名もミュスカデMuscadet。ブルゴーニュ地方が原産とされており、別名をムロン・ド・ブルゴーニュMelon de Bourgogneといいます。

 

私が訪れたのはミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ(以下ミュスカデ)のシャトー・デュ・コワン・ド・サン・フィアクルChâteau du Coing de Saint Fiacre(以下シャトー・デュ・コワン)です。

Ch. du Coing 畑 シャトー・デュ・コワンの畑 

シャトー・デュ・コワンはこの地区を代表する上質ワインの造り手のひとりですが、伝統的なタイプのミュスカデの他に、特別タイプのミュスカデを造っています。非常に珍しいそのキュヴェ目当てでこの造り手さんを訪問したのですが、そのキュヴェとは...

 

新樽熟成のミュスカデ!

Ch. du Coing 樽 

繰り返しになりますが、本来ミュスカデはフレッシュな白ワインで、新鮮な魚介類と相性の良い辛口白ワインです。ステンレス・タンクで、発酵の時に生じた炭酸ガスを逃さないように熟成され、なるべく早いうちにそのフレッシュさを楽しむべきワインなのですが、樽(それも新樽!)で熟成させ、複雑なニュアンスを帯びたミュスカデを造る造り手はこの造り手以外に思い当たりません。

 

畑や醸造設備を見学させてもらった後、このシャトーの全てのキュヴェを試飲させていただいたのですが、新樽熟成のミュスカデは私の今までのミュスカデの概念を覆すものでした!ミュスカデ固有のしっかりした酸味、ミネラル感を保ちつつ、新樽熟成による複雑なニュアンスを兼ね備えています。このクラスのワインには、ソースを添えた魚料理や甲殻類と合わせると楽しめそうです。

 

これからの季節、さっぱりとした白ワインが活躍しますね。新樽熟成キュヴェは別として、さわやかなミュスカデを試してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yでは、5月20日のレストラン講座のテーマを「ロワール」とし、厳選されたロワール地方のワインとそれに合う料理をお楽しみ頂けます。今回ご紹介したシャトー・デュ・コワンの新樽熟成ミュスカデも登場いたします。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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