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2011-03
ワインコラム 第72回 ロゼワインの話 ウイユ・ド・ペルドリ編
- 2011-03-27 (日)
- ワインコラム
スイス西部に位置するヌーシャテルNeuchâtel特産の、ピノ・ノワールによるロゼ・ワインです。ウイユとはフランス語で「目」、同じくペルドリは「ヤマウズラ」のことです。直訳するとヤマウズラの目、という意味になります。
ヤマウズラは、全長30cm弱の鳥類の1種です。ワインになぜこのような名前がついたかというと、理由はその色にあります。ヤマウズラの目は、オレンジ色がかったピンクのような色調をしています。このヌーシャテル特産のロゼワインの色がヤマウズラの目の色に似ていたため、その名が付けられたようです。
実際、「ロゼワイン」というカテゴリーの中に、様々な色のワインがありますね。無色透明にほんのりベージュのような色調の入った淡いものから、薄めの赤ワインより濃いような鮮やかな色調のものまで。ロゼワインの魅力の一つは、その美しい色合いにあると言えるでしょう。
ウイユ・ド・ペルドリは、どちらかというと淡い色調ですが、原料となるピノ・ノワールに由来するエレガントさがあり、個性的な、奥ゆかしいワインです。フランスのブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方を始め、アメリカなどの新世界でも、ピノ・ノワールのロゼが造られ、人気を集めています。ですが、ウイユ・ド・ペルドリは、スイスのヌーシャテルのテロワールを反映し、特有の特徴を備えています。ロゼ・ワインが好きな方、ピノ・ノワールが好きな方には一度試していただきたいワインのひとつです。
そもそも、「スイスのワイン」自体珍しいですよね。標高が高く、ぶどう栽培が可能な土地が限られており、もともと生産量が少ないです。その少量のワインは、主に生産地で地元の人や観光客などによって消費されてしまいますので、輸出に割り当てられるのは極僅かです。そのため、スイスのワインを口にする機会に恵まれることは日本では稀でしょう。スイスワインに関する情報もあまり入ってきません。ですが、高品質なワインが密かに造られていることは知っておくとよいかもしれません。
スイスのワイン、ウイユ・ド・ペルドリに限らず、見つけましたら是非試してみてください。軽やかで、エレガントで、これからの季節を華やかに彩ってくれるはずです!
Clos Yでは、4月3日のレストラン講座のテーマを「ピノ・ノワール」とし、世界の様々なピノ・ノワールを料理とともにお楽しみいただきます。ウイユ・ド・ペルドリも登場いたします!ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第71回 ローヌ地方の話 シャトー・グリエ編
- 2011-03-18 (金)
- ワインコラム
このように、ある生産者がある畑を単独所有している状態をモノポールと呼びます。モノポールの畑は少なからずあるのですが、ロマネ・コンティのように畑の名前と生産者の名前が同じ例は極僅かです。
今回ご紹介するシャトー・グリエChâteau Grilletは、その数少ない例のひとつです。
まず、場所を確認しましょう。フランス南東部、ローヌRhône川沿いに広がるワイン産地であるローヌ地方北部にシャトー・グリエは位置しています。大きな都市で言いますと、リヨンLyonがシャトー・グリエの北にあります。
シャトー・グリエというワインは、シャトー・グリエという生産者がシャトー・グリエA.O.C.範囲内の畑で栽培しているヴィオニエViognierという白ぶどうから造る白ワインです。
ローヌ地方でヴィオニエと言えばコンドリウCondrieuが有名ですが、シャトー・グリエは回りをコンドリウA.O.C.で囲まれています。コンドリウの中の一区画がシャトー・グリエとして独立しているような形です。
最近人気の出てきたぶどう品種、ヴィオニエは、今日では南フランスやアメリカ、オーストラリアなどでも栽培されています。それらのワインの中には比較的安価なものもありますが、以前はヴィオニエといえばコンドリウであり、コンドリウは今も昔も高値で取引される高級ワインです。
シャトー・グリエはそのコンドリウの別格もの、と言うことができるでしょうか。フランス4大白ワインのひとつ(あと3つはモンラシェMontrachet、シャトー・シャロンChâteau Chalon、クロ・ド・ラ・クーレ・ド・セランClos de la Coulée de Serrant)に数えられ、僅か3.2haの畑から、年間12,000本ほどのワインを生みだしています。
生産量が少ないので見かけることすら少なく、例えあったとしても高価なのでソムリエでも口にしたことがある人は少ないかもしれません。
以前のオーナー(ネイレ・ガシェ)があまり情報を提供していなかったので、謎に包まれた部分がある、ミステリアスなワイン、というイメージを私は持っています。つい最近、ボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーであるフランソワ・ピノー氏がシャトー・グリエを買収したと聞きました。今後、シャトー・グリエは変わっていく可能性があります。
畑は北ローヌの他の畑同様、急斜面にテラス状に拓かれています。
シャトーに行く場合、丘の斜面の細い道を登って行くのですが、その細さは車同士がすれ違うことができないほどです。私が車で登っていると、ちょうど上のほうから車が降りてくるところでした。苦労しながら斜面をバックで下って行った記憶があります...
機械による作業は不可能です。ひとつひとつの畑仕事を人の手で行わなくてはなりません。規模も小さいので、まさに手作りのワインと言えるでしょう。
ヴィオニエによるワインは、コンドリウひとつ取っても生産者により様々なスタイルがあります。共通して言えるのは、しっかりした果実味があること、アルコール度が高く、ボリューム感があること、でしょう。魚や甲殻類はもちろん、肉料理と合わせるのも良いと思います。
シャトー・グリエは、樽熟成を経ておりますのでより複雑みのあるワインに仕上がっています。希少性だけでなく、充実したワインの内容により今後ますます名声を高めていくことが予想されます。
ピノー氏がシャトー・グリエの価格をこれ以上上げないことを願っています...
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ワインコラム 第70回 ブルゴーニュ地方 畑の話 ロマネ・コンティ編
- 2011-03-13 (日)
- ワインコラム
隣り合った畑でも、格付けが異なるなどの理由で、ワインの値段が数倍違ってしまうというのも良く知られたお話ですね。
そんなブルゴーニュの畑についてご紹介いたします。
今回は、恐らく世界一高価な赤ワインが生まれるロマネ・コンティRomanée-Contiのお話です。
まずは場所を確認しましょう。ブルゴーニュ地方の中心都市、ディジョンDijonから車で南下していくと、市街地を抜け、ぶどう畑の中を走るような格好になります。ジュヴレイ・シャンベルタンGevrey-Chambertin村を超えて、ヴージョVougeot村を超えるとヴォーヌ・ロマネVosne-Romanée村に至ります。ロマネ・コンティは、この村にあります。
ロマネ・コンティとは畑の名前であり、その畑のぶどうから造られたワインの名前でもありますが、もうひとつ、ロマネ・コンティという名のつくものがあります。それは、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティDomaine de la Romanée-Conti (以下D.R.C.)というワインの造り手の名前です。ロマネ・コンティという畑はD.R.C.が単独所有しております。そのために、D.R.C.という造り手は、「ロマネ・コンティのドメーヌ」という名前を名乗っているわけです。
さて、そのロマネ・コンティですが、その歴史をローマ時代にまで遡ることができます。「ローマ」にちなんで「ロマネ」という名が付けられたようです。
ブルゴーニュの銘醸畑は、修道院と密接な関係にありますが、ロマネ・コンティも然り。10世紀の初頭から、サン・ヴィヴィアン修道院の管理が続きました。その後、ルイ15世の統治時代、名声あるロマネ・コンティの所有をめぐってポンパドール夫人とコンティ公爵の間で争奪戦が起こりました。最終的に1760年代にコンティ公爵が勝利し、以降、「ロマネ」と呼ばれていた畑は「ロマネ・コンティ」と呼ばれるようになります。コンティ公爵はその後もワインの評判を落とさず、むしろ、収穫量を減らし、品質を高めることによってますますロマネ・コンティの価値を高めていきました。その意志は今日でもD.R.C.に引き継がれています。
「飲み物であるワイン」としては、ロマネ・コンティには非現実的な価格がつけられています。それを巡り、ワインのプロフェッショナルの間でもその価格と質のバランスに関して論議されることがあります。
ここから先は私の私論ですが、ロマネ・コンティの価格は、純粋にワインの品質を表した価格ではないと思います。ロマネ・コンティは確かに素晴らしいワインです。それは間違いありません。しかし、3万円のワインに比べてその20倍も優れた味わいかと言うと、そんなことは無いと思います。
あの価格は、需要と供給のバランスから来ているものです。平均年産量が6,000本と少ないにもかかわらず、世界中から需要があります。そのためにあの価格が付けられているのです。実際、あの価格で売れてしまうのです。歴史のある、上質なロマネ・コンティを口にするための代価として。もしくは、勢力の誇示として...
その歴史と名声は、今後も続いていくことでしょう。
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