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2013-05

ワイン・コラム 第127回 ロワール地方の話 ドメーヌ・デ・ボワ・ルカ編

フランス最長の川、ロワールLoire沿いに広がる、フランス北西部に位置するワイン産地ロワール地方。
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この地方の西部、大西洋近くにはナントNantesという大きな町があります。そこからロワール川をさかのぼる形で東に進むと、トゥールToursという大きな町があります。

 

ナント周辺では主にミュスカデMuscadetというぶどうが栽培されていて、酸味がしっかりとした、爽やかな白ワインが造られています。

 

トゥール周辺では、主にシュナン・ブランChenin Blancというぶどうが栽培されていて、ミネラル感の強い辛口から豊かな味わいの甘口、さらにはスパークリング・ワインまで、多彩な白ワインが造られています。

 

そのトゥールから南東に50kmほどいったところに、ドメーヌ・デ・ボワ・ルカDomaine des Bois Lucasがあります。

 

2002年が初ヴィンテージのこの造り手は、日本人女性が当主で、自ら栽培、醸造を担当しています。

 

私がこの造り手を訪問させていただいたのは2005年の3月のことです。その際に試飲させていただいたソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blancに私は衝撃を受けました。

 

当時私はボルドーBordeauxに住んでいて、グラーヴ地区のシャトーで収穫から醸造まで経験しました。ボルドーのソーヴィニヨン・ブランの特徴はある程度把握しておりましたし、ロワール地方のソーヴィニヨン・ブラン、例えばサンセールSancerreやプイィ・フュメPouilly-Fuméの特徴も(ディディエ・ダギュノーDidier Dagueneauのような例外的なワインも含めて)把握していたと思います。

 

しかしこの造り手のソーヴィニヨン・ブランは、今までに経験してきたどのようなソーヴィニヨン・ブランとも異なる、まさに驚くべきものでした。

 

熟したエキゾチックなフルーツ、ボワゼ、ミネラルが一体となった複雑な香り。ボルドーともロワールとも、新世界、例えばニュージー・ランドのソーヴィニヨン・ブランとも違う、個性的な香りです。味わいは果実味に厚みがあり、酸味もしっかり。余韻が長く続いていきます。

 

偉大なワイン、というべき完成度ですが、硬さが無くしなやかで、優しい感じです。このワインは、補糖もせず、限りなくナチュラルに造られているのですから、原料となるぶどうはどれほど素晴らしいものかと思いました。

 

栽培はビオディナミを採用しているようです。そして収穫量が少ない!良いワインを造るために、ぶどうの収穫量はあまり品質と関係が無い、と言う造り手もいますが、私はぶどうの収穫量はワインの品質に直接関係してくる重要な要素であると思っております(特に赤ワインの場合)。

 

しかしこれほどのワインを、まだ新しい(言わば経験の浅い)造り手が、しかも偉大なテロワールと認識されてこなかった土地(アペラシオンはトゥーレーヌTouraine)で造ってしまうのは本当にすごいことだと思います。

 

世界的に名の知られている銘醸地ではないところで、真新しい造り手がいきなり偉大なワインを造る。このようなことはそうあることではないと思います。しかし、あるにはある。そのようなワインを見逃さずに、今後もご紹介していけるようにしたいと思います。

 

Clos Yは、6月2日のレストラン講座のテーマを「ロワール」とし、ロワール地方から厳選した素晴らしいワインをそれに合わせた料理とお楽しみ頂きます。ボワ・ルカのソーヴィニヨン・ブラン2006のキュヴェ違い水平を経験頂けます!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想等ございましたら下記メール・アドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

ワイン・コラム 第126回 サヴォワ地方の話 ビュジェイ セルドン編

フランス東部、サヴォワSavoie地方。大きな町としてはシャンベリーChambéryがある、自然に恵まれた美しい土地です。

 

アルプス山脈の麓、スキーを愛する人々には重要なところですが、ワイン愛好家の関心を引くことは少ないようです。

 

しかしもちろん、この地でも素晴らしいワインが造られています!

 

今回ご紹介するのは、世界屈指の偉大なワイン、とは言えないかもしれませんが、多くの人に愛されるような、やや甘いロゼのスパークリング・ワイン産地セルドンCerdonです。

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アペラシオンはビュジェイBugey、地区はセルドンCerdon。ビュジェイは長らくV.D.Q.S.というカテゴリーに属していましたが、2009年に晴れてA.O.C.に昇格しました。

 

セルドンは、上記のとおりやや甘い、ロゼのスパークリング・ワインです(土地の名前がワインの名前になっています。)。このワインを造るために認められている土地は僅か約130ha。ガメイGamayとプルサールPoulsard、2種類の黒ぶどうから造られます(プルサールは栽培面積が少ないので、中にはプルサールを使わずにガメイ100%のキュヴェもあります。)。

 

小さな産地なので、ワインの生産量もそれに応じて少ないです。フランスでもあまり見かけることはありませんが、現在日本に複数銘柄が輸入されております。

 

私は2013年の2月に、アラン・エ・エリー・ルナルダ・ファーシュAlain et Elie Renardat-Fâcheという造り手さんを訪問しました。

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ドメーヌが位置するのはメリニャMérinatという小村で、山間にあるので坂道が多いですが、村の端から端まで5分もあれば歩いてしまうことができるほどの、村人全員が顔見知りなのだろうな、というところです。

DSC01182 Mérignat。 

雪がちらつく寒い日、ストーブの前で試飲です。この造り手は、以前はシャルドネによる白ワインも造っていましたが、現在はスパークリング・ワインだけを生産しています。

 

2種類のセルドンを比較しました。ひとつはガメイ70%、プルサール30%のキュヴェ。もうひとつはガメイ100%のキュヴェ。どちらもロゼのやや甘いスパークリング・ワインです。どちらも素直においしいワインでしたが、個人的にはより酸味のしっかりとしたプルサールを用いたほうが好みでした。

 

セルドン用のプルサールは僅か6haほどしかないようですので、プルサールを用いたセルドンはとても希少と言うことができると思います。

 

せっかくなので、やや専門的になりますが、醸造のお話を。セルドンは「アンセストラル方式」という方法で造られます。簡単に説明しますと、まずは黒ぶどうをロゼ・ワインを造るようにアルコール発酵させます。アルコール度数が6%になったところでフィルターをかけて一度瓶詰めします。続いて瓶内で、アルコール度数が7%程度になるまで再びアルコール発酵を行います。この時に、二酸化炭素がワインに溶け込んでスパークリング・ワインとなります。瓶内でアルコール度数が7%程度になったら瓶を冷却して酵母の活動を止め、アルコール発酵を止めます。特殊な装置を使ってガスが逃げないように中身を空けてフィルターをかけ、酵母等を取り除いて再び瓶詰めます。こうしてできるセルドンは美しい、やや濃いめのロゼ色、アルコールは低く、その分ぶどう由来の天然の甘味が(残糖約60g/l)残る、やや甘口のスパークリング・ワインになるわけです。

 

アペリティフに、デザートに。単体でも楽しめる美味しいワインです。セルドン、試してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、5月15日に行うレストラン講座で、プルサールを用いたセルドンが登場します。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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