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2013-11

ワイン・コラム 第143回 イタリアの話 ドリゴ編

イタリア北東部に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州Friuli-Venezia Giulia。ヴェネツィアという単語が入っていますが、州都はトリエステ(ヴェネツィアはお隣のヴェネト州に位置します。)で、オーストリアとスロヴェニアに接しています。

この州は、イタリア屈指の上質白ワインの産地として知られています。

ソーヴィニヨン・ブランSauvignon BlancやシャルドネChardonnayなど、国際的に広く栽培されている品種から、ヴェルドゥッツォVerduzzoやピコリットPicolit、リボッラ・ジャッラRibolla Giallaなど、他の地ではほとんど栽培されていない地場品種まで、ヴァリエーションに富み、質も高いです。

私は2013年の10月に、この州のワイン生産者ドリゴDorigoを訪問させて頂きました。

場所は、比較的大きな町ウディーネUdineの北東で、緩やかな起伏がある土地にぶどう畑が拓かれています。北には山脈が連なっています。
DSC01589ドメーヌ前の畑
2013年はここ数年では収穫が遅く、訪問させて頂いた日も収穫の最中でしたが、当主のアレッシオAlessioさんに案内して頂きました。

一年で最も忙しい時期で、醸造所は多少危険な部分もあることから醸造設備などの見学はさっと済ませ、試飲へと移ります。

スパークリング・ワインから始まり甘口ワインまで、14種類のワインを試飲させて頂きました。そのほとんどが単一品種によるワインです。特に印象に残っているものをご紹介させて頂きますと、

シャルドネ 2011 ドリゴには複数のラインがありますが、これはプレステージ・ラインprestige lineのキュヴェ。厚みがあり、マチエール(ワインを構成する要素)が豊か。モンラシェを目指している、とのことでしたが、ブルゴーニュで言えば暖かい年のシャサーニュ・モンラシェが思い浮かびました。

レフォスコRefosco 2008 こちらもプレステージ・ラインのキュヴェ。地場品種レフォスコの赤ワインです。この晩熟の品種を3年間樽熟成。色が濃く、香りも豊か。凝縮感が強いワイン。

そしてスイート・ラインsweet lineから、ヴェルドゥッツオとピコリット。どちらも素晴らしいものでしたが、特に希少なピコリット2009は1ℓあたり約180gの糖があり、複雑な香り、豊かな味わい。余韻も長く、見事なワインでした。

この州は白で有名、と冒頭でご紹介しましたが、甘口の白も、ピニョーロなど地場品種の赤も素晴らしいものがあります。爽やかなものから重厚なものまで幅広くありますので、この晩秋に、重厚なタイプをゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。

Clos Yは、12月1日のレストラン講座のテーマを「地場品種の魅力」とし、フランス、スイス、イタリアの地場品種のワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。日本で入手困難なスイスのユマーニュ・ルージュや、ドリゴのピニョーロ2006も登場します!

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

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ワイン・コラム 第142回 ぶどう品種の話 ガメイ編

11月の第3木曜日はボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauの解禁日です。

普段ワインに関心が無い人も(メディアも)この時ばかりはワインに注目します。

ボージョレはブルゴーニュ地方のワイン産地の一部ですが、この土地と深いつながりがあるのがガメイGamayという品種です。正式名称はガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブランGamay noir à jus blanc(白い果汁を持つ黒いガメイ)と言います。世の中のほとんどの黒ぶどうは、果皮は黒いものの果肉は緑がかった透明で、果汁には黒い色素は含まれておりません。そのため、黒ぶどうから白いシャンパーニュが造られるわけです。

この品種から造られる一般的なワインの特徴としましては、色は明るいルビー色で、紫色を帯びています。香りは華やかで、赤い果実、バナナ、黒砂糖、カンゾウなど甘い香りが立ち昇ります。味わいは果実味を主体とし、酸味は強すぎることなく、タンニンは多くなく、全体として軽やか。フルーティで、若いうちに楽しむべき(数年を経るとピークを越え、衰えて行く)ワインです。

素直においしいワインだと思います。ワイン単体でも楽しめますし、地元風にシャルキュートリー(生ハム類の盛り合わせ)と合わせると最高でしょう。

ガメイはボージョレ地区を中心に、フランス国内では近隣のオーヴェルニュ、サヴォワ、ロワール川流域などで栽培されています。世界に目を向けると、イタリアや東欧、カナダやカリフォルニアなどでも栽培されているようですが、フランスとの国境に近いスイス西部ではガメイとピノ・ノワールのブレンドによるドールDôleという特産品があり、私は個人的にとても気に入っています。

それから珍しいところではオーストラリアのトップ生産者が、隠しワインのように極少量のガメイを醸しています。

珍品ということでは、黒っぽい果汁を持つ黒い果皮のガメイも存在しています。世界には赤黒い果肉そして黒っぽい果汁を持つぶどう品種があります。フランス語でタンテュリエteinturierと呼ばれます。代表的な品種としてアリカンテ・ブーシェAlicante Bouschetが挙げられますが、ガメイにもタンテュリエの種があります。

私の知る限りでは、ロワール地方でアンリ・マリオネHenri Marionnetという生産者が、Les Cépages Oubliés(忘れられたぶどう品種)と名付けたキュヴェを造っています。品種名はガメイ・ド・ブーズGamay de Bouze。果汁自体に色素が含まれていますので、やはりワインの色は濃く、黒っぽい色調を呈しています。香りも黒を連想させる、墨や潰したブルーベリーの皮など、味わいはややボリューム感があり、一般的なガメイとは異なるワインです。本当に世界には様々なワインがあるものです。

ガメイから造られるワインの代表であるボージョレ。ヌーヴォーは、素直においしいと思いますし、最新のヴィンテージがどのようであるのか予想することもできますから、是非とも試したいものです。2013というヴィンテージ、どうなのでしょうか ?!

Clos Yは2013年のボージョレ・ヌーヴォーの解禁日である11月21日に、ガメイをテーマにした単発講座「偉大なワインを飲む!」を行います。オーストラリアのピノ・ノワールのトップ生産者による「隠しワイン」的なガメイ、同じくオーストラリアのガメイのカルト・ワイン、まるで上質なピノ・ノワールの様なボージョレのガメイなど、ガメイの多様性をお楽しみ頂きます。ガメイの深い魅力を楽しみましょう!

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

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