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2012-08
ワインコラム 第107回 イタリアの話 マシャレッリ編
アブルッツォ州はイタリア中部、少し南寄りに位置し、東はアドリア海に面しています。この州を代表するワインと言えば、モンテプルチアーノMontepulcianoという名の黒ぶどうから造られる赤ワイン、モンテプルチアーノ・ダブルッツォMontepulciano d’Abruzzoでしょう。イアリア全体で見ても安くておいしいワインの代表格と言えるワインですが、中には高値を付けられる極上ワインも存在しています。
そんな別格的な造り手のひとりとして、マシャレッリMasciarelliをご紹介いたします。
ワイナリーが位置するのは海から内陸に入った山間部で、ローマの真東くらいの緯度の所です。
2008年に亡くなられたジャンニ・マシャレッリ氏は個性的な天才醸造家として知られ、数々の素晴らしいワインを世に送り出してきました。地場品種のモンテプルチアーノやトレッビアーノ・ダブルッツォTrebbiano d’Abruzzoを始め、シャルドネなどの国際品種でも見事なワインを造っています。
私がこの造り手を訪問させていただいたのは9月末という、ワイナリーはとても忙しい時期でしたが、印象に強く残るほど親切丁寧な案内をして頂きました。まずは醸造設備をひと通り見させて頂いて、それから車で畑へ連れて行ってもらいました。私にとって初めての訪問だったアブルッツォで、収穫前のモンテプルチアーノを見せて頂いて、とても良い経験になりました。
やや粒の大きなぶどう
マシャレッリは、醸造所から少し離れたところに、城を改築したホテル・レストランを所有しています。重厚な城の雰囲気に、現代的な家具が調和しています。試飲はこの城の1室で行われました。
試飲を行った部屋
ワインはいずれも素晴らしい品質です。高級レンジはもちろん、お手頃な価格のワインもとても良く出来ています。イタリアのワイナリーではよくあることですが、マシャレッリも自家製のオリーヴ・オイルも販売していました。こちらも品質の良いものでした。
ジャンニ氏亡き後、奥様がこの偉大なワイナリーを更なる高みへ到達できるよう努力を続けているようです。いろいろ大変であろうことは容易に想像できますので、個人的にも応援したいワイナリーのひとつです。
イタリアに行く予定がある人の中でも、アブルッツォ州に行く人はとても少ないのかなと思います。アブルッツォには海の食材、山の食材があり、イメージに無いかもしれませんが冬はスキーも楽しめるところです。休日の過ごし方の選択肢の一つとして、アブルッツォのシャトー・ホテルに泊まり、美味しいワインと美味しい料理を楽しむ...というのも悪くない、ですよね!
Clos Yは、9月19日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリアの地場品種による上質なワインを、それに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ジャンニ・マシャレッリ氏が2004年に手掛けたモンテプルチアーノも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第106回 ぶどう品種の話 サグランティーノ編
専ら白ワイン、という方もいらっしゃいますし、魚でも生牡蠣でも赤ワイン、という方もいらっしゃいます。シャンパーニュは特に女性に人気があるように感じています。
ワインの中でも特に赤ワインが好き、という方でも、ブルゴーニュ一筋の方もいれば濃いボルドーが好きな方もいらっしゃいます。
濃い赤ワインと言えば、温暖な産地を真っ先に思い浮かべます。南仏やカリフォルニア、スペインやイタリアなど...
濃い赤ワインを生むぶどう品種としては、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、場合によりグルナッシュ、ムルヴェードル、タナ、ジンファンデル、シラーズ、マルベックなどが挙げられます。
しかし、広い世界の中で、ごく一部の地域でしか栽培されていない希少なぶどう品種も少なくありません。そのような品種の中で、世界でも最も濃厚な赤ワインを生みだす力を秘めているぶどう品種があります。それこそ、今回ご紹介するサグランティーノSagrantinoです。
サグランティーノはイタリアのウンブリアUmbria州で栽培されています。数年前の調査では、この品種の最大の産地と言われるモンテファルコMontefalcoでさえ僅か100haほどの栽培面積しかない希少なぶどう品種です。
Montefalco
Montefalcoからの風景
この黒ぶどうから造られる赤ワインは、色が濃く、果実味が豊かで、豊富なタンニンを含んでいます。極上のものは、時に「大地を揺るがすような」と形容されるほどです!
サグランティーノはサンジョヴェーゼとブレンドされることがありますが、D.O.C.G.に指定されているサグランティーノ・ディ・モンテファルコSagrantino di Montefalcoではサグランティーノを100%使用することが義務付けられています。
サグランティーノ・ディ・モンテファルコは、甘口と辛口、2種類の赤ワインがあります。甘口はぶどうを陰干ししてぶどうの水分を飛ばし、糖度を上げることにより造られる「パッシート」ワインです。濃厚でヴィンテージ・ポートのような印象があります。この甘口も良いですが、この品種の個性は是非辛口(甘くない)赤ワインで体感して頂きたいものです。特に極上の造り手によるサグランティーノ・ディ・モンテファルコは、数多くのワインを飲んできたワイン愛好家にも忘れがたい経験を与えてくれるはずです。
Clos Yは、9月2日のレストラン講座のテーマを「多彩なイタリアワイン」とし、極上のイタリアワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。サグランティーノの最高峰のひとつ、パオロ・ベアのサグランティーノ・ディ・モンテファルコ2003も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第105回 ボルドー地方の話 シャトー・ラフィット・ロートシルト編
シャンパーニュのドン・ペリニョンDom Pérignon、ブルゴーニュのアンリ・ジャイエHenri Jayer、オーストラリアのグランジGrange、スペインのウニコUnico、アメリカのハーラン・エステイトHarlan Estateなど...
中でも多くの人が憧れるのはロマネ・コンティRomanée-Conti、そしてボルドーの5大シャトーでしょう。
いずれも10年前は少し頑張れば購入できるくらいの金額でしたが、近年では飲み物としては非常識な高値が付けられています。もはや投機の対象にもなっていて、原産国のフランスに行っても値段は高いので、純粋なワイン愛好家には悲しい状態です。
今回はそんな5大シャトーの中でも、1855年の格付け時に筆頭に選ばれたシャトー・ラフィット・ロートシルトChâteau Lafit Rothschildをご紹介いたします。
ボルドーの中でもその品質で名を轟かせるポイヤックPauillac村の北部に位置するこのシャトーは、現在約103haの畑を持ち、年間15,000から20,000ケースを生産しています。
まずこのシャトーのすごいところは、生産量に対する品質の高さです。世界中を見渡すと、驚くべき品質の極上ワインがいろいろな産地で見られますが、生産量は数千本から、多くても1万数千本というところがほとんどだと思います。中には1年の生産量が僅か300本というものもあります。ワインに限った話ではないと思いますが、極上の品物を作るときに、あらゆる労力を集中させて極僅かな、極めて完成度の高いものを作るということはそれほど難しいことではないかもしれません。しかし、その完成度を保ちつつ、かつある程度の量も作ろうと思うと大変です。ラフィットはそれを可能にしているのです。
では、どのようにラフィットは高品質なワインを安定して生産できるかと言うと、まず一番重要な点として挙げられるのが、畑(テロワールの優位)でしょう。
実際に畑に立って驚きました。世界的に有名なメドック地区ですが、大半の畑は平坦です。迫力を持って迫り、見上げてしまう急斜面のローヌ北部やドイツの銘醸畑のような神々しさは感じられません。そんな中にあり、ラフィットの畑には起伏があります。傾斜のある畑は効率良く陽を浴びて、雨の時は排水を促します。結果として良く熟したぶどうが収穫できるということです。
メートル・デュ・シェ(醸造長)のシャルル・シュヴァリエ氏を筆頭とした醸造チームの努力は言うまでもありません。細部にこだわり、新旧の道具を巧みに使い、熟成用の樽の一部は自社で作るというこだわりようです。
品質には直接関係ないかもしれませんが、マーケティングに注目してみても面白いです。マーケティングと言えばシャトー・ムートン・ロートシルトChâteau Mouton Rothschildの毎年変わるアート・ラベルが有名ですが、ラフィットも2008年ヴィンテージのボトルに「八」と漢数字を入れています。近年重要な顧客になっている中国市場を意識したものでしょう。実際ラフィットは高級ワインの大切なマーケットになりつつある中国で最も人気のある銘柄であるようです。
そのような一部の高い需要により、ラフィット(と残りの5大シャトーなど)の価格の上昇にはため息が出ます。2005年や2009年、2010年など出来の良かった年の価格の上昇には苦い顔をしながらも納得をするしかありませんが、そうではない年に劇的に値段が下がるかと言えばそうではありませんので困ったものです。
ワイン愛好家のみならず、多くの人が気軽に上質なワインを楽しめるようになってもらいたいものです。Clos Yは恐らく(日本の)どのお店よりも優しい値段で上質なワインを販売しています!
Clos Yは、8月26日(日曜日)12時から、シャトー・ラフィット・ロートシルト1960の試飲を含む単発講座を企画しております。受講料は低めにしてありますので、ラフィットを試してみたい方、古いワインに興味のある方はこの機会をお見逃しなく!
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ワインコラム 第104回 イギリスの話 ナイティンバー編
まさに、イギリスはワインの先進国と言えます。
しかし、ワイン生産国としてイギリスを見てみると、ほとんど無名の国になります。イギリスでワインが造られていること自体あまり知られていないでしょうし、イギリスのワインを飲んだことがある方は、とても少ないのが現状だと言えるでしょう。
ですが、知名度は低くても、生産量は少なくても、とても上質なワインが造られております!
イギリスでは、上質なワイン用のぶどうはイングランドの最南端のあたりで栽培されています。ドーヴァー海峡を渡ればフランスまですぐ、というところです。
この辺りの土壌はシャンパーニュ地方と同じと言われています。気候も似ています。となると、上質なスパークリング・ワインが造れるのではないかと思いますよね。実際、イギリス・ワインで有名なものは、現時点ではスパークリング・ワインです。
上質なイギリスのスパークリング・ワインは(安くはありませんが)高品質なシャンパーニュに比肩し得る品質を備えています。イギリスが秘めている高品質スパークリング・ワイン造りの可能性は、シャンパーニュ地方の造り手がイギリスにワイン生産用に土地を購入している事実を見ても確認できるでしょう。
特に有名なイギリスのワイン生産者として挙げられるのはナイティンバー・ヴィンヤードNyetimber Vineyardです。その歴史が始まるのは1986年からで、現時点で26年ほど経っております。世界的に見るとまだ新しい造り手ですが、イギリスでも20年以上前から上質なワインが造られていたということですね。
この造り手は、シャンパーニュと同じ手間暇のかかる製法でスパークリング・ワインを造り、6年もの長い熟成を経てから初めてワインを売りに出します。そのため、私たち消費者は熟成感を伴った複雑な風味のスパークリング・ワインを楽しむことができます。
今日では世界中で素晴らしいスパークリング・ワインが造られています。世界的にこのナイティンバーのスパークリング・ワインを見てみると、やはりシャンパーニュに近い個性を備えていると思います。
ワインが好きな方は、一度試すべきイギリスのワインでしょう。オリンピックを見ながら、というのも今だけの粋な飲み方かもしれないですね!
Clos Yは、8月15日のレストラン講座のテーマを「イギリス」とし、高品質なイギリスのワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ナイティンバーもブラン・ド・ブラン2001とクラシック・キュヴェ2001と、2種類登場いたします!ご興味のある方は是非いらしてください。
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