Home > Archives > 2014-02

2014-02

ワイン・コラム 第149回 ぶどう品種の話 プティット・シラー編

世界には実に多くのぶどう品種が存在しています。

実際には数えきれず、その数は5,000以上になるようです。

今回ご紹介するぶどう品種プティット・シラーPetite Sirahは、その名からシラーSyrahの仲間と思ってしまいますが、実際はシラーとは関連が無いようです。

よく見ると、シラーのスペルがSirahとSyrahで異なりますね。

ワイン用ぶどう品種のバイブルとも呼ぶべきジャンシス・ロビンソン氏による「ワイン用葡萄ガイド」によりますと、
「おそらく本物のシラーには関連が無く(中略)幾つかの異なる、あまり知られていない品種を総称して適用される名称」
衝撃です!ひとつの名前が、複数のぶどう品種に対して使われていると言うのですから。

つまり、A社のプティット・シラーとB社のプティット・シラーは異なる品種である、という可能性があるわけです。

このようなこともあるのですね。実際ぶどうは突然変異を起こしやすく、同じぶどう品種でも複数の色を持つ(例えばグルナッシュ・ノワールとグルナッシュ・ブランなど)ことは少なくありません。

プティット・シラーの場合、複数の品種の総称と言うことですが、流石に全くタイプが異なるぶどうが同じ名前で呼ばれることは無いと考えるのが普通ですよね。

私は今までそれほどたくさんのプティット・シラーに接してきていませんが、この品種の最高峰と評されるのがサッカリーThackreyのワインです。

ただこの造り手は、数百年前の醸造文献を解読し、「昔の」ワイン造りにこだわっています。そのためこの生産者のプティット・シラーを「この品種の特徴が良く出た基準」にするのはやめておいた方が良いかもしれません。

私が言えることは、プティット・シラーのワインは、主にカリフォルニアで生産されており、ワインの特徴としては色が濃く力強く、ボリュームがあります。繊細な北ローヌのシラーとは方向性が違います。

現時点では謎に包まれているプティット・シラーですが、謎の多いものは私たちの身近に多いですよね。

いろいろ想像を巡らせながらワインを楽しむのも一興でしょう。

Clos Yは、3月2日のレストラン講座のテーマを「アメリカ」とし、素晴らしくリッチなシャルドネや冷涼地の酸味の美しいワインなどを、それに合わせた特別料理とお楽しみ頂きます。鬼才サッカリーのプティット・シラーも登場します!

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

ワイン・コラム 第148回 ブルゴーニュ地方の話 シャブリ編

シャブリChablis

世界で最も有名なワインのひとつでしょう。

しかし、そのワインが、フランス、ブルゴーニュ地方の北部にあるシャブリという名の小さな町の周辺のシャルドネ100%で造られる白ワインであることまで知っている人はそう多くは無いと思います。

このワインの魅力は、凛とした酸味としっかりとしたミネラル感を持つ締まった構成にあると思います。樽熟成をしないものが多いので、同じブルゴーニュ地方のコート・ド・ボーヌ地区のムルソーなどと比べると、香りの豊かさなどで引けを取ることがあるかもしれませんが、透明感のある美しいワインです。

シャブリは若い状態で飲まれることが多いと思うのですが、極めて残念に思います。シャブリ、特にプルミエ・クリュやグラン・クリュは長期の熟成に耐えます。10年ほど熟成したシャブリを試されたことが無い方が、初めて熟成シャブリを経験すると、「シャブリ」というもののイメージとかなり異なるワインなのでとても驚かれることが多いです。熟成シャブリは黄金の色調を呈し、例え樽熟成を経ていなくても樽香のような香ばしい香りを放ちます。元来しっかりとした酸味を備えたワインですので骨格はぶれません。特にシャブリ・グラン・クリュは、コート・ド・ボーヌ地区の偉大な白ワインに比べて遜色の無いグラン・ヴァンに成長します

Chablis G.C. Les Clos

食事との組み合わせを考えてみますと、「牡蠣にはシャブリ」ということがよく言われますが、上記のような熟成シャブリには甲殻類やソースを添えた魚料理、もしくは白身の肉料理が合うと思います。生牡蠣と合わせる場合は、若いフレッシュなもの、特にさらっとしているプティ・シャブリPetit Chablisあたりが良いと思います。まあシャブリの土壌に含まれている牡蠣の化石を思いながら楽しめば、多少のマリアージュのずれも気にせずに済むのかもしれませんが...

シャブリの町を紹介しますと、人口2,600人ほどの小さな町です。ワイナリーがひしめき、中心部には手ごろなビストロなどもあり、シャブリとそれに合う料理(エクルヴィスのサラダ、グルヌイユなど)を楽しむことができます。

町にはスラン川Le Sereinが流れています。

Chablis 川

この川はシャブリの畑の中を蛇行しながら南北に流れ、東側(右岸)と西側(左岸)に畑を分けています。おおまかに、右岸は厳しいスタイルのワインを、左岸は柔らかなスタイルのワインを生むとされています。

生産者としまして、シャブリの1/4ほどを造っている、ラ・シャブリジェンヌLa Chablisienneをご紹介いたします。

量だけでなく、質の面でも非常に高い評価を受ける協同組合です。シャブリにある7つのグラン・クリュのうち6つのワインを造り、それぞれ畑の力を見事に引き出していますが、グラン・クリュのように高価なキュヴェだけではなく、シャブリA.C.のラ・ピエルレLa Pierreléeなども良くできています。

この造り手を訪問し、その多彩なワインを試してみるとシャブリ全体がよくわかると思います。

夏にはよく冷やした若いものを、冬には温かい鍋料理と、シャブリは日本の食卓で一年を通して活躍することができるワインだと思います。豪華な料理には熟成したシャブリ・グラン・クリュを冷やし過ぎずに合わせると良いでしょう。様々な魅力を持つシャブリを、「再発見」してみてはいかがでしょうか?

Clos Yは、2月から7月まで月に一度ブルゴーニュ ステップ・アップ講座を行います。初回の2月26日のテーマは「シャブリ グラン・クリュとプルミエ・クリュ」です。長期熟成の可能性を秘めた上質な白ワインであるシャブリについて詳しく解説していきます。プルミエ・クリュ1種とグラン・クリュ3種の試飲も経験して頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

Home > Archives > 2014-02

サイト内検索
Feeds
Meta

Return to page top