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2013-09

ワイン・コラム 第139回 イタリアの話 マストロベラルディーノ編

有形であれ、無形であれ、世界のあらゆる伝統的なもので、失われてしまったもの、失われつつあるもの、しっかりと(もしくは細々と)守り続けられているものがあると思います。

 

ワインの世界では、世界の一部の地域でしか見られない、その地域特有の伝統的なぶどう栽培方法や醸造方法などがありますが、地場品種というものはワイン愛好家から見て、確実に後世に守り伝えてもらいたいもののひとつだと思います。

 

というのもワインの魅力の一つとして、多様性があるからです。世界中のいろいろなワインの中から、その日の気分に合うワインを選ぶ楽しさ、未知のタイプのワインと出会う喜びなどがあります。

 

そして、地場品種など、伝統的なものこそがその土地を表現していると思います。世界中どこに行っても同じものばかりでは、旅をする喜びなど無くなってしまいますよね。

 

世界中の情報が容易に得られるようになった今日では、世界的にワインの質が上がってきています。その反面、栽培に手間がかかって収量(=収益)の少ない伝統的に栽培され続けているある地域特有の地場品種が引き抜かれ、国際的に人気のある(往々にして栽培し易く収量が上げやすい)ぶどう品種に植え替えられるという悲しむべき事態が発生しました。

 

しかしワイン愛好家から見ると、どこででも造られているありふれたぶどう品種のワインよりも、ある地域にしか見られない地場品種のワインにこそ、興味を引かれるのです。

 

イタリア屈指のワイン銘醸地であるカンパニア州Campania。この州は「地場品種の宝庫」と言えますが、一時絶滅しかかった上質な地場品種を救ったのが、今回ご紹介するマストロベラルディーノ社Mastroberardinoなのです。

Mastroberardino 

お陰様で飲んでいて楽しい、興味深い上質なワインを今日でも味わうことができます。個人的にもとても感謝しています。

 

この造り手はその素晴らしい功績もさることながら、この州のワイナリーとしては規模が大きく、世界にカンパニアのワインを発信する、この州を代表する造り手です。

 

代表的なワインとして、アリアニコAglianico種から造られるタウラジTaurasiが挙げられますが、他にはポンペイの遺跡で栽培したぶどうから造るヴィッラ・デイ・ミステリVilla dei Misteriなどがあります。

 

そしてやはり、マストロベラルディーノを語る上で外せないのが、同社が救った地場品種であるフィアーノFianoグレコGrecoでしょう。

 

特に、私が完成度が高いと思うのがフィアーノ・ディ・アヴェッリーノFiano di Avellinoのモレ・マイオルムMore Maiorumというキュヴェです。ボルドー地方で伝統的に使われている(そして今日では世界中で使われている)バリックBarriqueという225l容量の小樽で熟成されたもので、地場品種という伝統とモダンな醸造技術の融合と言えると思います。

Mastro4 樽熟成庫 

カンパニア州はナポリを擁する、美食の土地でもあります。水牛のモッツァレラ・チーズやピッツァと一緒に、マストロベラルディーノのワインを試してみてはいかがでしょうか?

Campania5 

Clos Yは10月20日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリア全土から選りすぐった極上のワインを食事と共にお楽しみ頂きます。マストロベラルディーノのモレ・マイオルムも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第138回 アルザス地方の話 マルク・クライデンヴァイス編

日本でも人気の高いアルザスAlsace地方のワイン。

 

その華やかな香りと凝縮した味わい、余韻の長さなどが人気の理由だと思うのですが、それはフランスでもトップ・レヴェルに乾燥した気候多彩な土壌構成がもたらすワインの凝縮感複雑性にあるのでしょう。

 

今回ご紹介する造り手さんは、アルザスでも最高級の評価を得ているマルク・クライデンヴァイスMarc Kreydenweissです。

 

アルザス地方にも、ボルドー地方やブルゴーニュ地方同様にグラン・クリュGrand Cruがあります。アルザス地方では、上質なぶどうが実るとされる51の畑が特級に格付けされています。

 

51も特級畑があると、やはり別格扱いされるクリュがあります。そのうちのひとつが、アルザスで唯一シスト(粘板岩)土壌であるカステルベルクKastelbergです。

Kastelberg 滑り落ちそうな急斜面畑。 

アルザス地方を代表するぶどう品種であるリースリングRieslingの原産国のドイツの2大銘醸地のひとつ、モーゼルMoselと同じ土壌を持つこのグラン・クリュは、やはり偉大なリースリングを生み出しています。

 

中でも最高級の評価を受けているのがこのマルク・クライデンヴァイスのワインなのです。

 

改めて造り手をご紹介しますと、アルザス地方北部、アンドローAndlauの村に居を構えています。家族経営のこのドメーヌは、並みはずれたワインの品質によって世界にその名を知らしめています。

 

看板はカステルベルクのリースリングですが、他にも複数のグラン・クリュを所有しており、目が覚めるようなワインを造り続けています。

 

肝心のカルテルベルク・リースリングは、本当に一生に一度でも体験すべきワインだと思います。自然のままにワインを造る造り手なので、収穫年のぶどうの糖度により甘味のレヴェルがまちまちなのですが、甘い、甘く無いを凌駕した圧倒的な完成度で迫ってきます。世の中には知名度の高い高級ワインが複数ありますが、それらを差し置いてでも経験すべきワインがあるという、良い例です。

 

一度、試してみてはいかがでしょうか?

 

 

Clos Yは、10月16日のレストラン講座のテーマを「アルザス」として、アルザス地方の上質ワインとそれに合わせた料理をお楽しみ頂きます。マルク・クライデンヴァイスのグラン・クリュ、Mœnchebergも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

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ワイン・コラム 第137回 ブルゴーニュ地方の話 ドメーヌA. et P. de Villaine編

世界一高いワインは何でしょう?

 

とても古くて数本しか存在しない、値段の付けられないようなワインは除外して、比較的新しいヴィンテージのもので、現在購入が可能なものの中で考えてみますと、エゴン・ミュラーEgon MullerのシャルツホーフベルガーScharzhofberger のトロッケンベーレンアウスレーゼTrockenbeerenausleseかもしれませんが、やはりロマネ・コンティRomanée-Contiでしょう。

 

ロマネ・コンティというワインは、ドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティDomaine de la Romanée-Contiという造り手さんが、ロマネ・コンティという名前の畑のぶどうから造る赤ワインです。100万円を超える価格は、歴史的な名声と、その生産量の少なさ、もちろんその品質の高さなどによるものだと思われます。

Romanee-Conti 

そのドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティの経営者のひとりであるオーベール・ド・ヴィレーヌ氏が経営するドメーヌが、ブルゴーニュ地方の小さな小さな村、ブズロンBouzeronにあります。その名もドメーヌ・アー・エ・ペー・ド・ヴィレーヌDomaine A. et P. de Villaineです。

 

AはオーベールのA、Pはオーベールさんの奥さまのパメラのPです。

 

ドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティが、グラン・クリュを中心とした高額なワインばかりを造っているのに対して、ド・ヴィレーヌは、プルミエ・クリュでもない、村名や広域アペラシオンの、比較的廉価なワインのみを造っています。

 

白ワインは清廉な感じのする、軽く爽やかなタイプで好感が持てますが、特に赤ワインが人気のようです。やはり、ドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティは「赤ワイン」のイメージが強いため、同じ経営者が造る、手ごろな価格のワインは世界中から需要があるのでしょう。ラ・ディゴワーヌLa Digoineというキュヴェなどは、すぐに売り切れてしまうためなかなか入手できません。

 

ブズロンという、村人全員が顔見知りであろう、本当に小さな静かな村で、このようなワインが造られているのは何だか不思議です。

Bouzeron Bouzeronの畑。 

ド・ヴィレーヌの人気の赤ワインは、ドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティの赤ワインとはスタイルが異なります。価格が大きく異なりますので、当然と言えば当然ですが、意図的に違うタイプのワインを造っているのかもしれません。

 

例えば、熟成には樽を用いますが、決して新樽は使用しません。そのため、樽から来るロースト香やタンニンが少なく、穏やかで優しい雰囲気のワインに仕上がっています。

 

ひとつ言えることは、ド・ヴィレーヌのワインも、ドメーヌ・ドゥ・ラ・ロマネ・コンティののワインも、ワインの原料となるぶどうが生まれ育った畑の個性を表現することに重きを置いているということです。

 

テロワールのワイン、です。

 

Clos Yは、毎月第2水曜日に「ブルゴーニュ基礎講座」を行っております(10月のみ第4水曜日)。9月11日のテーマは「コート・シャロネーズ」です。上質なブズロンや、アー・エ・ペー・ド・ヴィレーヌの赤ワイン等の試飲も含まれております。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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