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2012-10

ワインコラム 第111回 ボルドー地方の話 シャトー・パヴィ編

ボルドー地方には、ワインの格付けがあります。

 

ブルゴーニュ地方にもワインの格付けがありますが、ブルゴーニュ地方では畑が格付けの対象になっているのに対して、ボルドー地方では造り手が格付けの対象になっています。

 

有名なものは、1855年にナポレオン3世がボルドーの商工会議所に作らせたメドック地区Médocとソーテルヌ地区Sauternesのものがあります。

 

他に、また別の格付けとして、グラーヴ地区Graves、そしてサンテミリオン地区Saint-Emilionの格付けがあります。

 

今回はサンテミリオンの格付けを取り上げてみたいと思います。

 

格付けされたシャトーは「特級」としてグラン・クリュGrand Cruの文字をラベルに表記することができますが、サンテミリオンではシャトーの格付けとは別に、アペラシオンとして単なるサンテミリオンとサンテミリオン・グラン・クリュという2つのアペラシオンが存在しています。

 

アペラシオンとしてのサンテミリオン・グラン・クリュは、それほど重要なものではないかな、と個人的に考えております。実際、サンテミリオン・グラン・クリュでも特に上質ではないワインが少なからずあるように感じます。

 

サンテミリオンのグラン・クリュとして重要なものは、格付けされたシャトーです。それをラベルから読み取るのは簡単です。Grand Cruという文字の後にClasséという文字があれば良いのです。この「Classé」という文字が、格付けに選ばれたシャトーの証です。

 

サンテミリオンの格付けは他の地区の格付けと異なり、大体10年毎に見直しがされています。そのため、150年以上前に行われたメドックやソーテルヌの格付けより、「今」を反映している格付けと言えると思います。

 

最新の格付けの見直しは、今年、2012年に行われました。そしてこの最新の格付けは「事件」でした...!

 

長い間、サンテミリオンと言えば2つのトップ・シャトーが君臨している構図でした。シャトー・オーゾンヌChâteau Ausone Châteauシャトー・シュヴァル・ブランCheval Blancです。これらのシャトーは、グラン・クリュ・クラッセの中でもトップ集団のプルミエ・グラン・クリュ・クラッセPremier Grand Cru Classéという更なる高みに格付けされており、その中でもプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに指定されています。サンテミリオンの全てのシャトーの中で、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに指定されているのは長い間オーゾンヌとシュヴァル・ブランだけでした。名実ともにトップ2シャトーだったわけです。

 

それが、今回の格付けで、シャトー・アンジェリュスChâteau Angélusシャトー・パヴィChâteau Pavieがプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに昇格したのです!

 

確かに、アンジェリュスとパヴィは素晴らしいワインを造っています。

 

私は2008年にシャトー・パヴィを訪問しました。このシャトーは1997年にジェラール・ペルス氏がオーナーになり、1998ヴィンテージからはそれ以前のワインとは別物のように品質が向上しています。

Ch. Pavie 

偉大なオーゾンヌから、直線にして1kmも離れていない場所にあるパヴィは、偉大なワインを生みだす可能性を秘めた畑を以前から所有していました。設備投資と徹底した品質管理により、オーゾンヌに迫るところまでワインの品質を高めたのはペルス氏の功績と言えるでしょう。

 

低く収量を抑え、凝縮したぶどうを収穫し、98年からは木製の発酵槽で天然酵母によるアルコール発酵。樽内でマロ・ラクティック発酵を行い、熟成は樽(新樽70~100%)で24ヵ月行います。技術的には、アルコール発酵中にはボルドーで一般的に行われているルモンタージュではなくピジャージュにより抽出を行います。

Ch. Pavie4 

この情報を見るだけで、手間暇をかけて偉大なワインを造っている様子が伺えます。実際、メルロを主体としたワインは強い凝縮感を備え、ボリュームがあり、噛めるようです。

 

1997以前も高価だったパヴィ。1998からは倍近くに値上がりし、現在でも高い価格を維持しています。格付けの上昇により、更なる値上がりは必至のように思われます。

 

試してみたい方は早めのほうが良いかもしれません...!

 

Clos Yは、11月10日に単発講座「偉大なワインを飲む!サンテミリオン プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ」を企画しております。最新の格付けでプルミエ・グラン・クリュ・クラッセに昇格した4シャトー(ヴァランドロー、ラ・モンドット等)全ての試飲を含んでおります(パヴィは出ません)。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第110回 新酒の話

北半球では、早いところでは8月からぶどうの収穫が始まります。

 

一般的には9月から10月が収穫のピークですが、近年では地球温暖化の影響で収穫時期が少し早まっています。

 

米や麦など、穀物を原料とするお酒と違って、漿果であるぶどうを原料とするワインは、陰干しワインなど一部例外を除き、収穫したぶどうを直ちにワインへと仕込みを始めなければなりません。

 

10月の初めと言えば、既に収穫が終わったぶどうの仕込みと、現在進行中の収穫が重なる、ワイナリーが一年で一番忙しい時期です。

 

収穫したぶどうを搾り、果汁を得て、それを発酵させる場合、早ければ1週間弱でアルコール発酵が終わりワインができます。

 

秋は新酒の季節でもあるのです!

 

一般的には出来たばかりのワインはすぐに瓶詰めされず、ワイナリーで熟成されます。短いもので数ヵ月、長ければ6年以上も樽などで熟成期間が取られ、それから瓶詰め、さらに瓶内で熟成させて出荷という流れです。

 

しかし新酒は、ほとんど熟成期間を取らずに出荷されます。もう少しで、北半球産の2012年新酒が出てきます。いろいろな場所で新酒が造られていますが、日本でおなじみの代表的な銘柄を挙げますと、ボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauがあります。

 

(ちょっと寄り道。Beaujolaisはフランス、ブルゴーニュ地方のワイン生産地区のひとつです。日本語では「ボジョレー」もしくは「ボージョレ」と表記されますが、フランス語でeauで「オー」と発音し、laiで「レ」と発音しますので、「ボージョレ」と表記する方がフランス語に近い発音と言えるようです。)

 

日本ではボージョレと言えばヌーヴォー!というイメージが強いですね。普段ワインをあまり召し上がらない方でも、ボージョレ・ヌーヴォーは購入することがあるでしょう。

 

新酒(=ヌーヴォー)は、ワインの中でも特別な存在です。出来るだけ早くワインを仕上げて消費者に飲んでもらうように、醸造において特別なテクニックを用いることもあります。つまり、早く飲んでもらうように、特別にフレッシュ&フルーティに造られた、ボージョレの中でも特殊なワインと言えます。日本はボージョレ・ヌーヴォー世界最大の市場ですので、通常のボージョレよりボージョレ・ヌーヴォーのほうが知名度が高いという特殊な状況にあります。

 

「ボージョレはどうもいまひとつ...」ですとか「ボージョレなんて!」と言うワイン愛好家の方もいらっしゃいますが、ワイン産地としてボージョレを見た場合、ヌーヴォーだけではなく、長期熟成に耐える偉大なワインも生産されていることを忘れてはなりません。

 

ヌーヴォーはヌーヴォーで、私は素晴らしいワインだと思っています。高級レストランでしっかりした肉料理に合わせるようなワインではありませんが、美しい紫の色調を持ち、バナナやキャンディーのアロマを放ち、果実味に溢れる喜びのワインだと思います。

 

新酒を味わう楽しみは、その年の出来が感じられることにもあります。例えば、同じ造り手のボージョレ・ヌーヴォーを毎年の解禁日に試してみると、そのヴィンテージが偉大な年なのか、軽い年なのか、などなんとなく予想が出来て楽しいものです。

 

ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日、2012年は1115です。レストランなど、14日の夜からカウント・ダウン・パーティを行うお店がありますね。また、南仏のヌーヴォーやイタリアのノヴェッロ(=新酒)はボージョレ・ヌーヴォーよりも一足早く市場に出てきます。新酒のフレッシュさを楽しみながら、今年の出来に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、10月17日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、良質なブルゴーニュのワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ルイ・ジャドのまるで素晴らしいピノ・ノワール!のような極上ボージョレ地方の赤ワインも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第109回 ブルゴーニュ地方の話 ドゥニ・モルテ編

ワインが好きな方には、「お気に入りのワイン」というものがあると思います。

 

人によってはざっくりと「ボルドーの赤が好き」ですとか「カリフォルニアのシャルドネが好き」ですとか、あるいはもっと限定的にある造り手が好き、ですとか...

 

世界中のワインを広く楽しんでいらっしゃる方の中で、「好きなワインは何ですか?」と聞かれて困ってしまった経験をお持ちの方は少なくないと思います。

 

ワインが大好きな私の場合も、好きなワインを聞かれると返答に困ってしまいます。

 

フランス、イタリア、オーストラリア、ドイツ、オーストリア、アメリカ...ひとつの国の中でもボルドー、ブルゴーニュ、フランス南西部、シャンパーニュ、ローヌ...

 

きりがありません。

 

例えばブルゴーニュにしても、シャブリChablisのドーヴィサDauvissatやマコネMâconnaisのヴァレットValette、コート・シャロネーズCôte ChalonnaiseのランプLumppなど...

 

きりがありません。

 

ブルゴーニュには素晴らしいワインを産出する尊敬すべき造り手がたくさんいらっしゃいますが、中でも私がその名を聞くと目の色を変えてしまうお気に入りの造り手が、数軒あります。

 

今回ご紹介するのは、その中の1軒、ドゥニ・モルテDenis Mortetです。

Denis Mortet 

ドゥニ・モルテのワインとの出会いは2005年のことでした。私は2005年の9月から11月まで、3ヵ月ほどブルゴーニュ地方のボーヌBeauneに滞在していました。

 

ボーヌはワイン好きにはたまらない町です。ワインやワイン・グッズを扱うお店が多く、それが歩いていける範囲に小さくまとまっています。

 

その中の1軒のワイン屋で、気になっていたドゥニ・モルテのブルゴーニュ・キュヴェ・ドゥ・ノーブル・スーシュBourgogne Cuvée de Noble Souche 2003のハーフ・ボトルを購入しました。当時6ユーロくらいだったと思います。

 

そのワインを飲んだ私は、今でも忘れられない衝撃を受けることになります。その時のテイスティング・コメントは以下の通りです。

 

「全体的に赤紫がかった、やや明るいガーネット。濃縮感のある深い香り。ミルティーユ、カフェ、パングリエ。回すと少しバニラ。香ばしい。アタックは中程度。しっかりとした果実味、中程度の酸。ややボリューム感があり、タンニンはほぼ溶け込んでいる。ボワゼの余韻が長い。濃縮感があり、がっしりしている。少しガスが残っていて若さを感じる。ローヌにでもありそうな、力強いワイン。」

 

2005年の秋に2003を飲んだので、収穫後2年というとても若い状態のワインです。樽から来る香ばしい香りが強く、果実味が濃厚で全体的にとても凝縮感が強かったです。本当に、北ローヌ、それもかなり上質なコート・ローティCôte-Rôtieを連想させられました。

 

2006年にドゥニ・モルテ氏は亡くなってしまい、現在はご子息のアルノー氏がドメーヌを引き継ぎ、現在も高品質なワインを造り続けています。

 

高品質なワインの秘訣は、先代の時も、今も変わらず、「ぶどうの質」にあります。難しいとされるヴィンテージでも、徹底したぶどう栽培を行うことにより、美しい、凝縮したぶどうを収穫しています。

D. Mortet Gevrey 収穫間近のピノ・ノワール 

ワインのあの凝縮感は、他でもない、ぶどうそのものの凝縮感なのです。

 

良いワインは良いぶどうから。当たり前のことですが、「極める」域にまで持っていくことができる造り手はそう多くありません。

 

どの国のものでも、素晴らしいワインは、ぶどうが生まれ育った土地や造り手の苦労も思いながら、大切に飲みたいものですね。偉大なワインは飲み手に何かを与えてくれるはずです。

 

Clos Yは10月8日のレストラン講座のテーマを「きのこと赤身肉祭り」とし、旬のきのこや旨味たっぷりの赤身肉の料理と、それに合わせた素晴らしいワインをお楽しみ頂きます。ドゥニ・モルテ氏の遺作、2003年のピノ・ノワールも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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