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2009-12
ワインコラム 第38回 年末、年始の過ごし方の話
- 2009-12-29 (火)
- ワインコラム
日本における年末、年始の過ごし方といえば、大晦日は家でテレビを見て、年始は初詣をして、お節を食べて...といったところでしょうか。
国が異なれば文化、慣習が異なります。フランスでの年末、年始の過ごし方をご紹介しましょう。
まず、年末ですが、レヴェイヨンRéveillonという深夜の食事をとります。普段カジュアルな街中のカフェ、ビストロ、レストランなどが、ここぞとばかりに高価なメニューを打ち出しますが、ほぼ満席になります。人々は豪華なディナーを取りながら、年越しをする、というのが一つの定番のようです。
日付が変わり、年が変わるときにはあちらこちらで花火があがります。大きな町だと、少し危険かも、と思うくらいの状況です。
年始はというと、深夜に遊び疲れたのか、静かな時間が流れます。
初日の出、初詣と年始から忙しい日本人と比べると、力を入れるポイントが逆のようで面白いですね。
さて、私たちが食べるお節料理ですが、みなさまお酒は何を飲みますか?
ビール、日本酒と様々だと思いますが、ワインを合わせる場合にお勧めの銘柄を参考までにご紹介いたします。
まずは、シャンパーニュChampagneです。昇り続ける泡が新年の気分を盛り上げてくれますが、お節とのマリアージュを考えても、絶好のワインです。お節は根菜類を多く用いますが、シャンパーニュの熟成感と根菜類の土っぽさが素敵に寄り添います。また、お節料理の甘い味付けとも素直に楽しむことができます。
もうひとつ、意外かもしれませんが、ソーテルヌSauternesとお節の相性も良いと思います。前述したようにやや甘めの味付けが多いお節料理と甘いソーテルヌは良い相性を見せます。ただ、甘口ならば何でも良いかといえばそうではなく、世界にはたくさんの甘口ワインがありますが、ソーテルヌは甘味だけではなくアルコールのボリューム感とわずかな苦み、味わいの幅がありますので、様々な食材を用いるお節料理と合うのではないかと思っています。ひとつ、魚卵とは厳しいかな、と思いますが...(苦笑)
そのほか、ある程度熟成したブルゴーニュBourgogneのシャルドネChardonnay、ある程度の濃縮感のあるボルドーBordeauxの赤ワインとも楽しめると思います。
上記したワインとお節のマリアージュは、あくまでも私個人の意見なので、みなさま思い思いにお節とワインを合わせてみてください。意外な組み合わせが見つかるかもしれませんよ!
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vinclosy@aol.com
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ワインコラム 第37回 ワイン産地訪問の話 ポルト編
- 2009-12-16 (水)
- ワインコラム
そんな季節にぴったりの、体も心もほっとするワインのお話です。
今回ご紹介するのは、ポルトガルが世界に誇るポート・ワイン(英語でPort Wine、ポルトガル語でヴィーニョ・ド・ポルト Vinho do Porto)です。
ポート・ワイン。飲まれたことがある方も多いかと思うのですが、実際にポート・ワインとはどのようなワインか正確に説明するのは難しいですね。食前に少しだけ飲むアペリティフ向きの軽めのタイプが多いですが、ヴィンテージ・ポートVintage Portoは世界中のワインの中でもトップクラスの極上ワインです。
さて、このポート・ワインですが、いろいろな意味で特殊なワインです。
まずはその製法からお話しましょう。収穫されたぶどうは直ちに発酵されるのですが、通常のワインと異なり、ポート・ワインの場合はアルコール発酵中のぶどう果汁にアルコール度数77度のブランデーを添加し、アルコール発酵を止めてしまいます。すると、ぶどう果汁に含まれる糖分がアルコール発酵の作用によって失われることなくワインの中に残り、甘口ワインとなります。
ポート・ワインは甘いものが多いですが、あの甘味はぶどう果汁由来の天然の甘味ということですね。
アルコール発酵に関して、もうひとつお話があります。収穫されたぶどうから果汁を取り出すために、世界規模で一般的には機械を使って処理をします。昔ながらに人間が足でぶどうをつぶす、なんてことはとうに昔話になってしまっているのですが、ポート・ワイン、それも極上のものに限り、今日でも人間が足でぶどうを踏むということがあります。大変な重労働で、人件費もかかるのですが、優しくぶどうをつぶすことによって質の良い果汁が得られるようです。ポート・ワインの中でも、ほんとうに、ごくごく一部の例外的なお話ですけれども。
さて、もうひとつのポート・ワインの特徴は、ぶどう栽培地域とワインを熟成させる土地が異なることです。一般的にはぶどうが栽培されている場所に醸造所があり、そこで醸造されたワインをその場で熟成させていきます。ところが、ポート・ワインの場合、ぶどう畑が広がるのはドウロ(Douro)川周辺の険しい土地です。この土地の風景は圧巻で、殺伐とした乾いた風景の中、急斜面に開かれたテラス状のぶどう畑が広がっています。何でも、硬い岩盤はダイナマイトで爆発させて開墾していくようです...!
しかし、ワインの熟成は海沿いの大きな町、ポルトPorto市対岸のガイア地区(Vila Nova de Gaia)で行われなければなりません。このようなことが定められているのは世界的にも珍しいことです。
ポルトの街並み。
さて、肝心のポート・ワインですが、さまざまなタイプがあります。生産量の多いルビーRuby、熟成期間の長いトウニーTawny、白いホワイト・ポートWhite Port、そしてなんといってもヴィンテージ・ポートVintage Portです。
ルビー・ポートはその名の通り鮮やかなルビー色で、熟成期間が短く、フルーティな甘味を気軽に楽しめるポートです。恐らくポート・ワインを口にされたことがある方の、大部分がこのルビー・ポートを召し上がられたのではないでしょうか。
しかし、ポート・ワインの神髄はこの先にあります。まずはトウニー。良質なぶどうを原料としたポートを、10年、20年、ときにはそれ以上の歳月を樽で熟成させたものです。結果ワインは褐色を帯び、キャラメルやシガー、ヴァニラやスパイスなどの複雑な香りを帯び、余韻の長いワインになります。
熟成用の、使い込まれた大樽。
そして、ポートの王様はヴィンテージ・ポートです。優れた年にのみ造られる、その名の通りヴィンテージの入ったポート・ワイン(逆に、ルビーやトウニーはヴィンテージが入っていません。)で、樽熟成はあまり長い時間取られずに瓶詰めされます。若い状態で飲むと黒いような濃厚な色調で、香りも濃厚、凝縮された甘味があり、同時にしっかりとしたタンニンが感じられるスーパー甘口赤ワインです。最低10年、できれば20年は寝かせてから飲みたいワインです。すると、瓶熟成により風味がまろやかかつ複雑になり、世界で最も偉大なワインのひとつの座を占めてきます。
ひとつ気をつけたいのは、ヴィンテージ・ポートは熟成とともに大量の澱を生じることです。この澱が瓶内に舞い、グラスに入ってしまうとせっかくの高貴なワインが台無しになってしまいます。このようなワインこそ、ソムリエが必要かもしれませんね。
疲れた時、いいことがあった時、記念日、いつ飲んでも素敵なポート・ワインですが、やはり冬が一番楽しめるのではないでしょうか。クリスマスに、フォワ・グラのポワレと合わせるもよし、ガトー・ショコラとの相性も抜群です!
もちろん、優れたヴィンテージ・ポートは単体でじっくり向き合うのも素敵ですね。
年末・年始をポートとともにじっくり過ごしてみてはいかがでしょうか?
Clos Yでは、2010年1月3日のレストラン講座極上ワインと料理のマリアージュでヴィンテージ・ポートをご用意しております。まだお席に空きがございますので、ご興味のある方は是非いらしてください。
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ワインコラム 第36回 美食の話 ジビエ編
- 2009-12-06 (日)
- ワインコラム
ガストロノミーの世界では、この季節、ジビエGibierから目が離せません。
ジビエとは、鹿、猪、鴨など、野生動物のお肉のことを指します。
野生の動物を狩るわけですが、狩猟の時期は限定されています。その時期が、ちょうど秋から冬に当たるわけですね。なのでこの季節にレストランに行くと、選べるお肉の種類が多くなります。
それは、日本でも、フランスでも同じです。
今回は、フランス東部、ジュラJura地方、アルボワArboisの町のレストランをご紹介いたします。
アルボワは、小さいながらもワイン産地ジュラ地方の中心となる町で、ミシュラン2つ星のジャン・ポール・ジュネJean-Paul Jeunetなどの優れたレストランがあります。おいしいワインと良質な郷土料理を味わえる町です。
アルボワの教会
今回ご紹介するのは、ガイドに載っていないものの、地元の人たちで賑わうカフェ・レストラン ラ・キュイザンスLa Cuisanceです。普段から、この地方特産のヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)を使った鶏のクリーム・ソースなどのおいしい料理を提供していますが、ジビエの季節になるとその名も猟師のメニューMenu Chasseurが出てきます。
このコースは5皿で構成されていました。
まずは前菜。鹿のテリーヌTerrine de Chevreuilです。フランスの一般的なテリーヌは主に豚肉で作られますが、それに比べやはり野性味が感じられます。前菜からテンションが上がります!
続いて、Croût Folestière。ガーリック・トーストに、クリームを使ったきのこのソースをかけた温かい一皿です。地元で採れた新鮮なきのこは香りも歯触りも良く、ジュラ地方の森の豊かさを感じさせてくれます。
メインは、猪のシヴェCivet de Sanglier。シヴェとは、食材の血も使った煮込み料理で、猪や野兎などに用いられる調理法です。食材を最大限に生かしたこの料理は、濃厚な風味を満喫できますが、場合によっては風味が強すぎてしまうことがあります。それを緩和するためにも、赤い果実をソースに使うことが多いですが、この料理もグロゼイユ(赤スグリ。酸味の強い小さな赤い果実。)が入っていました。臭みなど全くなく、限られたこの冬の味覚を満喫させていただきました。
コースはこの後、地元のチーズ(コンテComté、モルビエMorbierなど好きな種類を、好きなだけ!)とデザート、コーヒーで締めくくられます。
合わせたワインは、もちろん地元のワインです。アルボワ・トルソーArbois Trousseau 2002でした。やや熟成感のあるこの赤ワインは、強いジビエの風味に負けることなく、お互いを引き立て合う絶妙なマリアージュを見せてくれました。
いやあ、ジビエって、本当にいいものですね!
ジビエは今、日本でもいろいろな種類を楽しむことができます。だいたい2月くらいまでありますので、興味のある方は是非試してみてください。合わせるワインはお好みですが、しっかりしたタイプの赤ワイン(ローヌ、ボルドー、ブルゴーニュのグラン・クリュなど)、それも若いものより熟成感のあるもののほうが良いでしょう。
それと、ジビエは野生動物を狩ってきたものなので、場合によっては散弾(散弾銃に使われる鉛玉。米粒より小さい。)が残っている場合があります。仕込みの時点で料理人ができる限り取り除くのですが、小さい玉が肉の中に入ってしまっているとどうしても取り除ききれないことがあります。それを承知の上、注意してお召し上がりくださいね。
私も過去に、口にしたジビエの肉から散弾が出てきたことがあります。これは「当たり」とされ、その弾を財布に入れておくとお金が貯まると言われていますが...私はまだその効果が出ていません。来年に期待しています(笑)。
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