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2010-12

ワインコラム 第66回 2010年 感動したワインの話

早いもので、2010年ももうすぐ終わりますね。

 

今年1年、どのような年でしたでしょうか?

 

ワイン好きな方は、年末になると今年どのようなワインを飲んできたか振り返ることもあるでしょう。

 

今回のコラムでは、私が今年飲んできたワインの中で、強く印象に残っているワインについて書きたいと思います。

 

まずは、最近ソムリエの友人に飲ませて頂いた、蒼龍葡萄酒さんの甲斐ブラン2004です。甲斐ブランとはぶどう品種の名前で、甲州Koshuとピノ・ブランPinot Blancの交配種です。ブラインドで飲ませていただいたのですが、印象は樽熟成を施した甲州、もしくはロワールのやや熟成したシュナン・ブランChenin Blanc、といったものでした。非常にミネラル感が強く、熟成から来る複雑味があり、素晴らしいワインでした!

 

続きまして、未体験の品種に興味を持って購入し試飲した、ドメーヌ・ジャッキー・プレイ・エ・フィスDomaine Jacky Preys et Filsのキュヴェ・ドゥ・フィエ・グリ・ヴィエイユ・ヴィーニュCuvée de Fié Gris Vieille Vigne2006です。アペラシオンはトゥーレーヌTouraineです。フィエ・グリという、栽培面積が非常に少ない、稀なぶどう品種のワインです。熟したあんず、黄桃、マンゴーなどの甘い果実の香りとフレッシュなハーブの香りが同居しています。グラスを回すと石灰のようなミネラル感も出てきます。十分な果実味があり、ややしっかりした酸味、ボリュームがある、個性的なワインでした!

Fié Gris 

続いて、1月に訪問した、オーストリーのヴィーニンガーWieningerのピノ・ノワール・グランド・セレクトPinot Noir Grand Selectです。ヴィーニンガーはウィーンでワイン造りを行っている造り手さんです。ウィーンは世界的に有名な素敵な町ですから、ワインとは関係なく訪れる価値があると思うのですが、地球上の首都で唯一、商業ベースでワイン造りを行っています。ヴィーニンガーはウィーンでトップの造り手であると断言できると思います。今回はピノ・ノワールを推しますが、白、甘口も世界的に見て非常に上質なものでした。さて、そのピノ・ノワールは、極上のブルゴーニュに勝るとも劣らない出来。ウィーンのワイン産地としての可能性と、ヴィーニンガー氏の人柄、そして努力と才能に大変感銘を受けました。

Wieninger5 ヴィーニンガーのオフィスの土壌サンプル。 

次に、ポルトガルから、信じがたいコストパフォーマンスを持つワインをご紹介いたします。世界で広く親しまれているマテウスMateusのロゼ。息の長い、良く売れているワインですから、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。ですが、私がご紹介したいのは、マテウスのワインですが、ロゼではなく、なのです。マテウスのロゼは微かに発泡性があり、甘味もあり、誰にでも好かれるスタイルで、世界中で売れているのがわかるなあ、というスタイルのワインなのですが、白は異なります。やはり僅かに発泡性を帯びていますが、香りは柑橘類のゼスト、ゴム、石油など、リースリングRieslingを連想させます。味わいでは、果実味はそれほど強くないのですがやや甘味が感じられます。酸味はややしっかりしていて、全体的にさっぱりしていて、非常にバランスの良いワインです。万人受けするロゼと違い、白はミネラリーでシリアスなワインだと思いました。この品質のワインが1000円以下という事実が信じがたいです!

 

他にもたくさん素晴らしいワインと出会った2010年でしたが、最後にチンクエ・テッレCinque Terreをご紹介させていただきます。チンクエ・テッレはイタリア、リグーリアLiguriaにあり、世界遺産に登録されている土地で造られるワインです。海に面した絶壁に、張り付くようにぶどう畑が拓かれている光景には驚かされます。

DSC00490 Riomaggioreの風景

ボスコBoscoなど複数の地場品種をブレンドして造られます。土地が限られていますので、数えるほどの生産者しかいません。今回ご紹介したいのは、リオマッジョーレRiomaggiore協同組合のワインです。今年飲んだ2007ものは、熟成したシャンパーニュから感じられるようなロースト香がややしっかりと立ち上ってきます。レモンのゼスト、完熟していない梨、ミネラルの香り。回すとリースリングのような香りが出てきます。十分な果実味、ややしっかりした酸味があります。ボリュームは中程度で、微かにタンニンが感じられます。余韻は、しっかりしたミネラルがロースト香を伴ってやや長く続いていきます。特徴として、樽熟成をしていないにもかかわらず、樽熟成に由来するような最初のロースト香に驚かされます。全体の印象としては樽熟成をした温暖な年のシャブリや、やはり樽熟成をしたロワールのシュナン・ブランという印象です。

 

今年も素晴らしいワインに出会えることができました。来年も、みなさまが素晴らしいワインに出会えますように。

 

 

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ワインコラム 第65回 アペラシオンの話 ブルゴーニュ・グラン・オーディネール

フランスにおけるワイン法の格付けで、最上に位置するものがA.O.C.です。略してアペラシオンAppellationと言われますが、中にはあまり知られていないアペラシオンや、実態を知られていないものも存在しています。

 

今回ご紹介する、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールBourgogne Grand Ordinaireというアペラシオンは、あまりその実態を知られていないもののひとつでしょう。

 

名前から想像できるように、ブルゴーニュ地方のアペラシオンです。

 

ブルゴーニュ地方には、ブルゴーニュ地方全体をカバーするブルゴーニュBourgogneというA.O.C.があります。ブルゴーニュ・グラン・オーディネールはブルゴーニュA.O.C.と同じく、ブルゴーニュ地方全体をカバーしています。

 

では、ブルゴーニュA.O.C.とブルゴーニュ・グラン・オーディネールの違いはどこにあるのでしょうか?

 

詳細を見てみましょう。

 

ブルゴーニュA.O.C.については、赤ワインとロゼワインについて、ピノPinot、ガメイGamay、セザールCésar、トレソToressotが使用品種として認められています。白ワインに関してはシャルドネChardonnayが認められています。

 

ブルゴーニュ・グラン・オーディネールには、それに加えて白ぶどうのアリゴテAligoté、ムロン・ド・ブルゴーニュMelon de Bourgogne、サシイSacyの使用が認められています。これがまず1つ目の違いです。

 

もうひとつの違いは、アルコール度数の定義です。

 

ブルゴーニュA.O.C.については、最低アルコール度数が赤とロゼは10度、白は10.5度、最高アルコール度数は赤とロゼは13度、白は13.5度と規定されていますが、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールはそれぞれ1度ずつ低く設定されています。

 

つまり、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールは、ブルゴーニュA.O.C.より規定が緩いわけですね。実際、ブルゴーニュA.O.C.を格下げしてブルゴーニュ・グラン・オーディネールを名乗ることができます。

 

日本で見かけることはあまりないと思いますが、ブルゴーニュ地方ではスーパーマーケットなどでブルゴーニュ地方のワインとしては一番低い値付けがされていることがあります。

 

このアペラシオンの面白いところとしては、他のアペラシオンで認められていないぶどう品種(ムロン・ド・ブルゴーニュなど)が使用できることがあります。さらに、優れた造り手さんがこのアペラシオンを用いる場合、価格の割に優れた内容のワインであることが多い、ということも特徴として挙げられるでしょう。

Bourgogne G. Ordinaire - コピー 

DSC00595 

ブルゴーニュ・グラン・オーディネール。見かけたら一度試してみる価値はあると思います!

 

 

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