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2010-01

ワインコラム 第41回 ドイツ訪問の話 ラインガウ編

2010年1月8日から、ドイツ、チェコ、オーストリアを巡る旅に行ってきました。

 

帰ってきたばかり(何やら眠いのは時差のせいでしょうか。一年中眠い気もしますが...)、熱々の情報をお届けいたします!

 

ドイツはミュンヘンMünchenに到着しました。この町はワイン、ではなくビールで有名ですね。私の兄がこの町に住んでいるので会って来ました。

 

ミュンヘンから、ドイツが誇る極上ワイン産地のラインガウRheingauまで電車で約5時間。早朝に出発した私はお昼頃ラインガウのハッテンハイムHattenheimに到着しました。

Hattenheim 

ここから西へ、雪が降る中、地図を片手に畑を歩いて見ていきます。

 

辺りは雪、雪、雪...

Hattenheim4 

千葉県出身の私は雪道を歩くのに慣れていません。できればこの季節に来たくなかったです...

 

さて、ドイツワインの畑の名前は、通常その畑が位置する村の名前の後にラベル上で表示されます。

例えば、キードリッヒ村にあるグレーフェンベルク畑は、キードリッヒャー・グレーフェンベルクKierdicher Gräfenberg、となります。

 

数多あるドイツの畑ですが、特に評価の高いわずか5つの畑は、村の名前を伴わずに畑の名前をラベルに表示することができます。その5つの畑をまとめてオルツタイルラーゲOrtsteillageと言います。

 

ドイツ全体で5つしかないオルツタイルラーゲの、なんと4つがこのラインガウ地区にあります(もうひとつはモーゼルMosel地区にあります。)

 

この事実だけでも、ラインガウがいかに優れたワイン産地かがわかりますね!

 

以下、4つのオルツタイルラーゲです。

 

シュタインベルクSteinberg (石の山、という意味)

Hattenheim2 - コピー 

シュロス・ライヒャルツハウゼンSchloss Reichartshausen (ライヒャルツハウゼン城、という意味)

Oestriche Schloss Reicharshausen3 

シュロス・フォルラーツSchloss Vollads (フォルラーツ城、という意味)

Schloss Vollrads 2 - コピー 

シュロス・ヨハニスベルクSchloss Johannisberg (ヨハニスベルク城、という意味)

Schloss Johanisberg5 

全て表土は雪で覆われていますが、これらの畑が高く評価されてきたのは一目瞭然でわかります。どれも(シュロス・ライヒャルツハウゼンは除く)急な斜面を持っていて、日当たりに恵まれています。

 

参考までに、残る一つのオルツタイルラーゲは、モーゼル地区のシャルツホーフベルクScharzhofberg (シャルツホーフの山、という意味)です。

 

さて、ハッテンハイムから10km、リューデスハイムRüdesheim村にやってきました。今夜はこの村のホテルに宿泊します。

 

ラインガウには銘醸畑が多くありますが、その極上のぶどうを素晴らしいワインに変える偉大な造り手さんも各村に居を構えています。このリューデスハイム村で、私はゲオルグ・ブロイヤーGeorg Breuerを訪問しました。

Georg Breuer 

評価の高い、素晴らしい造り手さんです。

 

ここでは13種類のワインをテイスティングさせていただきました。特に印象に残ったものを挙げてみると...

 

ジューJeux 2008

シュペートブルグンダーSpätburgunder (Pinot Nor)の白ワイン!酸味がしっかりしていて、ミネラル感が強めに感じられる。品種としての個性があまり感じられず、ピノ・ブランPinot Blancのようにも感じられる。

 

グラウアー・ブルグンダーGrauer Burgunder 2007

ピノ・グリPinot Grisをドイツではこう言います。一部樽熟成を施したこのワインは厚みがあり、果実味がしっかりしている。

 

ベルク・ローゼンエッグ・アウスレーゼ・ゴールドカプセルBerg Roseneck Auslese GoldKapsel 2007

濃密な甘口。凝縮された甘味と同時にやはり凝縮された素晴らしい酸味が感じられる。

 

改めて、ドイツワイン唯一無二の個性に感動しました。地球が温暖化に向かう現在、冷涼な気候のもとで育ったぶどうによる、澄んだきりりとした酸味はかけがえのないものです。

 

テイスティングの後、セラーを見せてもらいました。ゲオルグ・ブロイヤーは一部のワインをフレンチ・オークのバリック(225リットル容量の小樽)で熟成させています。

Georg Breuer2 

丁寧に説明してくださった、ゲオルグ・ブロイヤーに感謝です。

 

暑い夏に良く冷やしたドイツワインは最高ですが、凛としたドイツの辛口白ワインは和食に良く合うと思います。少し甘味のあるタイプのドイツワインは、肉じゃがなど砂糖を使った家庭料理に合うと思います。良かったら試してみてくださいね!

 

 

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ワインコラム 第40回 ボルドー地方の話 ポイヤック編 その1

世界中の有名なワイン産地には、その地を代表する牽引車的な村(もしくは地域)があります。ブルゴーニュでいえばヴォーヌ・ロマネ村Vosne-Romanée、シャンパーニュでいえばコート・デ・ブランのメニル・シュール・オジェ村Le Mesnil sur Oger、カリフォルニアでいえばナパ・ヴァレーNapa Valley...
 
ボルドー地方でそれに当たるのがポイヤックPauillacです。ジロンド河のすぐそばに位置するこの町は、世界中で人気のある黒ぶどう品種カベルネ・ソーヴィニヨンの聖地と言うべきで、上質な赤ワインを産出するシャトーが集中しています。1855年のメドックの格付けで、メドック地区に4つしかない第1級シャトーのうち3つ(うち1つは1973年に1級に昇格)がこの町にあることからも、この町のワイン造りのポテンシャルがうかがえるというものです。
 
さて、まずは町を見てみましょう。ポイヤックは、大きな町がないメドック地区で最も重要な、比較的大きな町です。河沿いにはホテルやレストラン、土産物屋などが立ち並び、街中にはスーパーマーケットや銀行など、日常生活に不可欠な様々な施設があります。ミシュランガイドで2つ星の評価を得ている、ボルドー地方を代表するレストランであるシャトー・コルディアン・バージュChâteau Cordeillan Bagesもこの町にあります。
 
肝心のワインですが、ポイヤックの名で流通させることができるワインは赤ワインのみです。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フランなどのブレンドですが、メドックの他の村と比べてカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高いのが特徴です。そのためワインはがっしりとした骨格を持ち、重厚で、長期熟成に耐えます。
Lynch Bages 砂利交じりの、水はけの良い土壌。
  
この町の、ワイン以外の特産品に、ポイヤックの仔羊Agneau de Pauillacがあります。ミルクの香りのする、ジューシーで柔らかなこの肉との相性は抜群です!
  
この町のワインがこれほど有名な理由として、前述の1855年の格付けが大きな要因として挙げられると思います。この格付けはパリ万博に際して、ナポレオン3世がボルドー商工会議所に命じて作らせたもので、メドック地区の60シャトー(とグラーヴ地区の1シャトー)が1級から5級に格付けされました。今日約10,000あると言われているボルドー地方のシャトーの中で、例え5級でもこの格付けに入るというのは大変栄誉なことです。その60のうち、ポイヤックは1級に3つ、2級に2つ、4級に1つ、5級に12つ、合計18のシャトーを有しています。5級の中には比較的軽いものもありますが、それでも世界水準からすれば重厚で、熟成させる価値のあるものです。
 
近年ではワイン造りの技術が向上し、長期熟成タイプのワインでも若い状態でおいしく飲めるようになっています。私は個人的にはボルドーの赤ワインは比較的若い状態で飲むのが好きなのですが、もちろん熟成によって現れる風味も素晴らしいものがあります。
  
「ワインの飲みごろ」は、造り手やソムリエではなく、消費者が自分の好みを把握したうえで決める時代になったのかもしれませんね。
 
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ワインコラム 第39回 イタリア カンパニア州の話

フランスと並ぶワイン大国イタリア。
バローロBaroloキアンティChiantiに代表されるように、イタリアワインの銘醸地といえばピエモンテ州Piemonteトスカーナ州Toscanaがまず挙げられますね。

ですが、それら2州より古い歴史を持ち、他ではあまり見られない地場品種から個性的なワインを生み出すカンパニア州Campaniaを忘れてはいけません! 

まずはカンパニア州の位置を確認しましょう。イタリアの首都ローマを擁するラツィオ州の南隣りにあり、州都はナポリNapoliです。海からは新鮮な魚介類が、陸からは水牛のモッツァレラチーズMozzarella di Bufala Campaniaがもたらされ、美食の地としても注目を集めています。ピッツァ発祥の地でもありますね。 

そんな美食の地に、美味しいワインが無いわけがありません。そのワイン造りの歴史が紀元前まで遡ることができると言われる、伝統のあるワイン産地です。 

Campania5 ヴェスヴィオ火山

ぶどう畑は主に内陸の山間部に点在しています。イタリアの他州が国際的に人気のあるぶどう品種に夢中になった近年でも伝統的な地場品種を守り続け、そのために今日では個性的なワイン産地として世界の注目を集めています。 

代表的なぶどう品種として、アリアニコAglianicoグレコGrecoフィアーノFianoなどがあります。特に黒ぶどうのアリアニコはイタリア3大品種(残り2つはネッビオーロNebbioloサンジョヴェーゼSangiovese)のひとつとされるほど、優れた赤ワインを生み出す可能性を秘めた偉大なぶどうです。アリアニコによる代表的な銘柄は、南イタリアを代表する名酒タウラジTaurasiです。

Taurasi タウラジのぶどう畑

同名の小村付近に広がるぶどう畑から、果実味、タンニンに富む長期熟成タイプの赤ワインが造られています。ワインによっては若いうちに飲むと口の中がぎすぎすするほど強い酒質を持ちますが、熟成させると偉大なワインにしか表現されない気品、複雑味、長い余韻を見せてくれます。優れたタウラジはまさにイタリアを代表するワインのひとつです。 

グレコとフィアーノは2つとも白ぶどうです。両者とも、若い状態ではフローラルで果実味豊かな白ワインです。グレコのほうが男性的、フィアーノのほうが気品があって女性的と表現されることがあります。 

ひとつ、私が残念に思うのが、グレコもフィアーノもあまりに若い状態で飲まれることが多いことです。どちらも、優れた個性的なワインだと思うのですが、そのほとんどが収穫後2年程度で飲まれているようです。できればさらに数年寝かせて、熟成により出てくるブーケやテロワールの妙味を楽しみたいワインだと思います。 

さて、この州を語るのに外すことのできない生産者がいます。マストロベラルディーノMastroberardinoです。

Mastroberardino

同社こそ、ともすれば国際品種に飲まれ消えてしまう地場品種を大切に守り、育ててきた尊敬すべき造り手で、カンパニア州の名声をイタリア内外に知らしめた立役者です。 

私は2008年の秋に訪問させていただきましたがイタリアにしては珍しく(?!)夜遅くまで仕事をしている様子がうかがえました。実際、そのワインの品質は高く評価されています。 

カベルネやシャルドネも良いですが、ときには限定された土地でしか栽培されていない優れたぶどう品種に目を向けてみるのもいいですね。 

 

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vinclosy@aol.com

 

1月19日のレストラン講座はカンパニア州をテーマに、マストロベラルディーノのワインもお楽しみ頂けます。締切間近ですのでご興味のある方はお早めにご連絡ください。

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