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2011-12

ワインコラム 第89回 ボルドー地方の話 シャトー・カントメルル編

まる1日、ワイナリーを回るための時間があるとします。

 

どのように時間を使うか計画を立てるのは、実はとても難しいものです。

 

ブルゴーニュBourgogneやナパ・ヴァレーNapa Valleyのように、ワイナリーが密集していて移動に時間をあまり取られないならば、午前中に2軒、午後に3軒という過密なスケジュールを立てることもできるかもしれません。

 

しかし、ブルゴーニュではひとつの造り手さんが10種類以上のワインを造っていることが多く、さらに複数のヴィンテージを試飲させて頂ける場合は試飲だけで1時間以上かかることがあります。通常ワイナリーの訪問は醸造設備や熟成セラーの見学から入ります。熱意のある造り手さんは畑まで連れて行ってくれもしますので、訪問時間が3時間を超える場合もあります。

 

事前に「訪問は設備の見学、ワインの試飲で90分です。」などと伝えてくれる造り手さんもいますが、このようなケースは少数派で、時間の予想は簡単ではありません。

 

私は300以上の生産者を訪問させて頂いておりますので、訪問時間に関してはある程度の予想が立てられます。

 

例えば、

 

ボルドーは1シャトー90分ほど。(シャトーの歴史のお話を聞く。醸造所、熟成室の見学。2、3種類の試飲。)

 

ブルゴーニュは1ドメーヌ120分ほど。(醸造所、熟成室の見学。12種類ほどの試飲。)

 

しかし、これは経験上の平均的な流れであって、例外はもちろん存在します。そのような場合、時間が足りなくなったり、余ったりしてしまいます。

 

私はワイナリーを訪問させていただく場合、通常は必ず事前に予約を取ってから行くのですが、ワイナリーの訪問と訪問の間に思わぬ時間が出来てしまった場合、訪問を断られるのを覚悟で近くのワイナリーに飛び込みで入ってみることがあります。

 

今回は、このような形で飛び込んだ、シャトー・カントメルルChâteau Cantemerleのお話です。

 

シャトー・カントメルルはボルドー地方、メドック地区のマコーMacau村に位置する、1855年の格付け5級のグラン・クリュです。マルゴーMargaux、ポイヤックPauillacといった村名アペラシオンではなく、オー・メドックHaut-Médocというアペラシオンに属するためか、メドック地区のグラン・クリュとしてはあまり注目されていないようです。

 

しかし、このシャトーは確実にその品質を上げてきています。特に2000年代後半の伸びは注目に値します。

 

さて、私の飛び込み訪問ですが、結果としては、やはりきちんと見学はさせてもらえませんでした。しかし、急な訪問者に対して、とても親切に対応してくださったことが記憶に残っています。

 

また、もうひとつ強く覚えていることは、このシャトーの美しさです。このシャトーは90haもの畑を所有していますが、シャトーへの門をくぐると、ちょっとした森があります。背の高い木の間の道を進むことは気分をリラックスさせてくれますし、その森を抜けて現れるシャトーは均整が取れて美しく、印象に残っています。

 

この美しいシャトーから生まれるワインは、前述のように素晴らしいものです。さらに、大きな特徴はワインの価格が低めに設定されていることです。比較的手ごろに上質なワインが楽しめます。このようなワインは、ありがたいですね。しかし、評価が上がってくると、価格も上がるのが世の常です。このシャトーのワインも徐々に高くなっていくかもしれません...

 

いまのうちに、試されることをお勧めさせていただきます!

 

Clos Yは、1月18日のレストラン講座のテーマを「ボルドー」とし、シャトー・カントメルル2006を含む、グラン・クリュを中心としたワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第88回 ボルドー地方の話 シャトー・ポンテ・カネ編

寒くなってくると、濃厚な赤ワインが飲みたくなりますね。

 

今回は、フランス、ボルドーBordeaux地方、ポイヤックPauillac村に位置するシャトー・ポンテ・カネChâteau Pontet-Canetのお話です。

 

私は2010年の9月にこのシャトーを訪問させて頂きました。このシャトーは1990年代まではそれほど注目されておりませんでしたが、2000年代に入ってからはめきめきとワインの品質を上げ、近年では要注目のシャトーになっています。有名ワイン評論家の評価も、グラン・クリュ5級でありながら1級シャトーの評価にひけをとりません。

 

その品質の鍵はどこにあるのでしょうか?

 

まずは栽培面を見てみましょう。このシャトー最大の特徴のひとつは、有機農法を取り入れている点です。2004年からビオディナミに着手し、2010年にはAgriculture Biologiqueから正式に認証を得ました

 

ぶどう栽培において、近年有機栽培の畑は年々増加していますが、広い土地で実践している例は多くありません。ポンテ・カネは120haの土地を所有しており、そのうち81haにぶどうが植えられています。ひとつひとつのシャトーの畑の規模が大きいボルドー地方では、有機栽培を実践しているシャトーは数えるほどしかありません。特に、グラン・クリュのシャトーの中で、現時点で正式に有機栽培の認証を得ているのは恐らくこのシャトーのみでしょう。

 

耕作にはも用いるとのことです。

 

この規模でこのような畑仕事をするのは大変な労力が必要とされます。

 

醸造面では、2005年に新しい醸造場を構築。アルコール発酵は木製、またはコンクリート製の発酵槽で天然酵母により行われます。

DSC00397 美しい醸造場。タンクも美しい。

果汁の移動にはポンプを使わず、重力により優しく行います。過度な醸造テクニックは用いません。最高のぶどうを、なるべくナチュラルに扱うことにより、その力を存分に引き出すわけです。

 

私は、栽培しているぶどう品種の割合もひとつのキー・ポイントだと思っております。ポイヤックのシャトーは一般的にカベルネの比率が高いのですが、ポンテ・カネ他のシャトーに比べメルロの比率がやや高いようです。これが、豊かで力強い中に、ソフトさをもたらしていると考えられます。

 

実際に試飲してみると、やはり素晴らしいワインです!黒系果実のコンフィ、スパイスの香りに樽からのロースト香が調和しています。果実味は豊かで、同時に酸味もしっかりしています。ボリューム感があり、タンニンは量が多くしっかりしていますが収斂性は無く、溶け込んでいます。長く続く余韻がこのワインがグラン・ヴァンであることを証明しています。

 

ここ数年のプリムール(先物取引)で、ポンテ・カネも徐々に高値が付けられてきています。この品質のワインを比較的手ごろに楽しめるのは、もしかしたら今のうちだけかもしれません。

 

今後の動向に目が離せません!

 

Clos Yは、1月8日のレストラン講座でシャトー・ポンテ・カネの2003をご用意しております。2003はポンテ・カネの2000年代の中でも特に素晴らしいヴィンテージのひとつです!この講座にご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第87回 シャンパーニュ地方の話 ガストン・シケ編

今回は、2011年9月に訪問して参りました、シャンパーニュChampagne地方のお話です。

 

2011年は、シャンパーニュ地方では1822年以来の早い収穫開始日(8月19日)が提示されました。これは猛暑で収穫が異例に早かった2003年よりも1日早く、近年の温暖化の影響を感じずにはいられません。

 

通常であれば収穫真っただ中くらいのタイミングで訪問したのですが、実際畑を見てみても、私が回った範囲では全て収穫が終わっていました。

 

複数の造り手さんを訪問させていただきましたが、ガストン・シケGaston Chiquetさんを訪問したお話をご紹介いたします。

DSC00677 

この造り手さんは、23haの自社畑を擁するR.M.(自社畑のぶどうのみからワインを造る形態。ブルゴーニュでいうところのドメーヌに相当。)です。なかなかの規模です。

 

メゾンはDizy村に位置しています。この村はエペルネイEpernayのすぐ北隣り、名高いグラン・クリュのアイAÿ村のすぐ西にあります。

DSC00676 メゾンのすぐ裏手の畑。正面の丘の上部はアイの畑。 

今回の訪問の最大の目的は、ピノ・ノワールで名高いアイ村の土地に植えたシャルドネから造るブラン・ド・ブラン・ダイBlanc de Blancs d’Aÿについて造り手さんから直接話を聞くことでした。

 

まずは醸造所を見せてもらいました。ご自慢の最新式プレス機と、昔ながらの旧式のプレス機を併用しています。黒ぶどうから白いスパークリング・ワインを造るこの地方では、ぶどうの搾り方がとても重要です。旧式と最新式では、どちらも得られる果汁の質に差はないそうですが、最新式のマシンは自動で、より効率的に果汁を搾ることができます。

DSC00675 伝統的な垂直式圧搾機。 

最初のアルコール発酵はステンレス・タンクでこのメゾンは行っています。すでに発酵は終わっていて、将来シャンパーニュとなるワインの原酒をステンレス・タンクから直接取って、試飲させてくださいました。シャンパーニュの原酒を飲む機会はあまりありませんが、やはり、酸っぱいです!この原酒を熟成させ、絶妙にブレンドし、最後にドザージュすることによって、あの優雅なシャンパーニュになるのですから、興味深いところです。

 

地下の熟成カーヴなど、ひと通り見学させて頂いた後、美しいサロンで数種類のシャンパーニュを試飲です。

 

いずれも良いシャンパーニュでした!特にご紹介したいのは、今回の目的でもあるブラン・ド・ブラン・ダイです。アイ村で栽培されているシャルドネ100%で造られる、世界で唯一のブラン・ド・ブランです。前述の通りアイ村はピノ・ノワールで有名ですが、一部シャルドネも植えられています。1935年に他に先駆けてシャルドネをこの土地に植えたのは、このメゾンということです。

 

特徴を一言でまとめると、「スマートでエレガント」。ブラン・ド・ブランでも、ブリオッシュやモカの香りを放ち、口に含むと芳醇さを感じるタイプもあれば、細身で酸が主体となる軽やかなタイプもあります。このキュヴェは後者のタイプに属します。ただ、このワインのすごいところはただ単に軽いだけではなく、アニマルの香りを持ち、余韻にぐっと酸が伸びて行きます。ノン・ヴィンテージですが、5年以上熟成させたら面白いだろうなと感じました。

 

それと、特に良かったキュヴェがクラブClub2002です。良年のみ造られる同メゾンのトップ・キュヴェで、シャルドネとピノ・ノワールのブレンドです。ブリオッシュやトーストの香ばしい香りを放ち、口に含むとバターの風味が広がります。余韻が長く、本当に素晴らしかったです!

 

12月はスパークリング・ワインを飲む機会も増えると思います。シャンパーニュは特に通常のワインより多くの手間、時間をかけて造られています。造り手さんの情熱を思いながら召し上がると、一層おいしいと思いますよ!

 

Clos Yは、「シャンパーニュの熟成について考える」単発講座を12月14日に企画しております。どなたでも気軽に参加頂けますので、ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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