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2011-01

ワインコラム 第68回 極上甘口ワインの話 アヴィニョネージ編

ワインには白、赤、ロゼ、スパークリング、甘口、辛口...いろいろなタイプがありますね。

 

きっかけとして、甘口ワインからワインを好きになったからもいらっしゃると思います。しかし、甘口ワインと言っても、世界には様々な甘口ワインがありますね。

 

今回は、イタリア、トスカーナToscana地方の甘口ワインをご紹介いたします。

 

フィレンツェを擁する美しいトスカーナ地方は、世界的に見ても重要なワイン産地です。

Toscana2

主にサンジョヴェーゼSangioveseから造られる赤ワイン(キアンティChiantiが有名ですね。)で知られていますが、白ワイン、甘口ワインも生産されています。

 

その甘口ワインですが、ヴィン・サントVin Santoというワインです。これが、実にユニークなワインなのです。

 

まず、原料となるぶどうですが、白ぶどうもしくは黒ぶどうが用いられます。収穫されたぶどうは、数ヵ月の間通気性の良い特別な部屋でじっくりと陰干しされます。

Avignonesi6

この間に水分が飛んで、干しぶどう状態になっていきます。そうして凝縮されたぶどうを絞り、濃厚な果汁を得ます。

 

伝統的な造り方としては、得られた果汁はマードレMadreと一緒に50リットルの小さな樽でじっくり発酵、そして熟成されます。マードレというのは、ヴィン・サントが完成した時に樽の底に残った澱のことです。これを加えてあげることにより、澱に含まれる酵母が働き、より安定してヴィン・サントを造ることができるようです。

 

2008年に私が訪問したアヴィニョネージAvignonesi社は最も高く評価されるヴィン・サントの造り手です。同社は10年もの間ヴィン・サントを樽で熟成させるのですが、なんと一度樽に詰めてからは瓶詰めの時まで一度も樽を開けない、つまり自然に任せるのみとのことでした。樽に入れて10年後、そこに極上のヴィン・サントがあるのか、うまくいかず酢のようになってしまった液体があるのか...開けるまでわからないというのです。

Avignonesi11

恐らく長い歴史の中で、失敗してしまった樽もあったことでしょう。しかしアヴィニョネージのヴィン・サントは極上です。2種類のヴィン・サントを同社は造っていますが、黒ぶどうのサンジョヴェーゼで造られるオッキオ・ディ・ペルニーチェOcchio di Perniceというキュヴェは世界中の甘口ワインのひとつの頂点に立つワインでしょう。私は1995ヴィンテージを飲みましたが、ハーフボトルで1,447本しか造られなかった希少品です。

 

ドライフルーツやスパイス、穏やかな酸化熟成から来る複雑な香りがあります。味わいも複雑で、しっかりした甘味があり、それを支える酸味とのバランスが良く、尋常でない長い余韻を楽しむことができます。

 

料理と合わせず、単体でじっくり向き合いたいようなワインです。

 

このようなワインを造り出すアヴィニョネージ社はすごいですし、陰干しによりぶどうを凝縮させる方法もすごいと思います...! 

 

Clos Yでは、素晴らしい陰干しワインの魅力をたっぷり楽しんでいただくレストラン講座(3月6日)を企画しております。ぶどうの力、そのぶどうが生まれ育った土地の風味がぎゅっと濃縮されたワインとそれに合う料理をお楽しみいただきます。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

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ワインコラム 第67回 ローヌ地方の話 ドメーヌ・デュ・ペゴー編

明けましておめでとうございます。

 

2011年、第1回目のワインコラムでございます。

 

ワイン愛好家の方は、お気に入りのワインがあると思います。例えばある造り手さんが好き、ですとか、ある産地のワインが好き、など。

 

私の場合、世界中のワインに興味があり、造り手さんも多く訪れているので、お気に入りのワインを挙げるのは大変難しいのですが、どうしても1つ挙げるとするならば、フランス、ローヌRhône地方のシャトーヌフ・デュ・パプChâteauneuf-du-Papeでしょうか。

 

このワインは、シャトーヌフ・デュ・パプ村の周辺に位置するぶどう畑から収穫されたぶどうを原料に造られる赤ワイン、もしくは白ワインです。

 

「シャトー」は「城」、「ヌフ」は「新しい」、「パプ」は「法王」という意味ですので、直訳すると「法王の新しい城」という意味になります。アヴィニヨンAvignonに法王庁があった時代、当時の法王がアヴィニヨンから10kmほど離れた場所に新しい城を建てました。その場所こそ、このシャトーヌフ・デュ・パプだったわけです。

 

今日、城は廃墟と化してしまっていますが、立ち続ける壁は往時を偲ばせてくれます。

Chateauneuf城跡2 

さて、このワインは南フランスを代表する銘柄として有名ですが、実は私が初めて飲んだフランスの赤ワインです。力強い赤ワインはしっかりとした肉料理と良く合います。個人的にはブルー・チーズと合わせるのも好きです。

 

この有名なワイン産地には、優れた造り手も多く、さらにその知名度を高めています。私は数軒の造り手さんを訪問し、それぞれ面白かったのですが、深く印象に残っている訪問はドメーヌ・デュ・ペゴーDomaine du Pégauです。家族経営の小さな造り手さんですが、ワインは高い評価を得ています。

 

訪問した際、醸造を担当しているローランスさんに案内して頂きました。このアペラシオンでは13ものぶどう品種が使用を認められていますが、ペゴーでは13種全てを使用しています。

 

品種などどのようにブレンドするのか尋ねたところ、「ワイン造りに決まりはありません。毎年毎年、ぶどうの状態を観察して決めます。」と答えて頂いたのが印象に残っています。

 

さて、訪問を終え帰ろうとしたところ、車のエンジンがかかりません。困っているとおじさんが現れて、車を見てくれました。いろいろやっていただいたのですがそれでもエンジンはかかりません。おじさんは、ほんとうに、手を真っ黒にしてしばらくの間奮闘してくださったのですが、やはりエンジンはかかりません。おじさんに感謝しつつ、車が壊れたことに動揺していた私におじさんは「この先に修理をしてくれるところがあるから、いってみなさい」と教えてくれました。

 

幸いドメーヌは坂の上のほうにありましたので、エンジンをかけずに修理場まで行くことができました。手をべとべとにして、初対面の私のためにがんばってくださったことは、今思い出しても感動します。今でも感謝しています。そのおじさんこそ、当主のポール氏でした。

 

さて、修理場に着いたはいいものの、営業時間が終わる寸前で、「修理は明日ね。」と断言されました。そこはフランスですから、すぐに直してほしいと思いつつ、車を置いて町へホテルを探しに出かけました。

 

シャトーヌフ・デュ・パプ村は、小さな村です。夏には観光客も来るようですが、このときは12月で、数軒あるホテルは営業していなかったり、営業していても既に満室となっていました。修理場にもどり、泊まる場所がないことを告げると、「そうか。では車で寝れば?」とのこと。考えましたが、それ以外に選択肢もありませんし、そうすることに...

 

夜は城跡近くにあるレストランで食事をしたのですが、戻ると既に修理場は閉まっています。入口の門も閉まっています。

 

...

 

仕方ないので、3メートルくらいの鉄の柵を登り、超えて、自分の車にたどり着きました。なんだかとても悪いことをしているような気分でした...

 

その夜、良く眠れませんでした。長い夜でした。いろいろ考えました。

 

そのときにふと思ったのが、「世の中にはペゴーさんのような素晴らしい造り手さんがいて、人を感動させるワインがたくさんある。私は、このような素晴らしいワインをひとりでも多くの人に伝えていきたいな。」というものでした。

 

今、Clos Yクロ・イグレックを立ち上げて、実際にワインの魅力を広める仕事をしていますが、まだまだ活動範囲が狭い状態です。なんとか、より多くの人々にワインの魅力を伝えていきたいです。こうすることで、ペゴーの方々を始め、素晴らしい造り手さんたちへの恩返しになるかもしれません。何より、素晴らしいワインは人に感動を与えますから...

 

ドメーヌ・デュ・ペゴーに関しては、私などがどうこうしなくても、既に世界的に有名ですね。良い年にしか造らない、キュヴェ・ダ・カーポCuvée Da Capoは、ワイン評論家から満点の評価を得ていますし、日本のあるワイン漫画でも取り上げられ、偉大なワインとして紹介されています。

 

最近、キュヴェ・ダ・カーポの最新ヴィンテージ、2007年を取り寄せました。

DSC00594

いつか、このワインを含めたワイン講座を企画しようと思っております。...熱が入りそうです...

 

では今年も素晴らしいワインとともに、素晴らしい年にしましょう!

 

 

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