Home > Archives > 2009-07

2009-07

ワインコラム 第21回 ブルゴーニュでの生活 ジュヴレイ・シャンベルタン村Gevrey-Chambertin訪問編

偉大なるワイン生産地ブルゴーニュの中でも、ひときわ精彩を放つ村がいくつかあります。世界一高価な赤ワインであるロマネ・コンティRomanée-Contiを産するヴォーヌ・ロマネVosne-Romanée村、世界一高価な白ワインであるモンラシェMontrachetを産するピュリニー・モンラシェPuligny-Montrachet村とシャサーニュ・モンラシェChassagne-Montrachet村。この村々に並び称されるのが、ブルゴーニュ一勇壮な赤ワインとされるシャンベルタンChambertinを産するジュヴレイ・シャンベルタンGevrey-Chambertin村です。

 

今回は、そのジュヴレイ・シャンベルタン村を訪問した時のお話です。

 

この村はブルゴーニュの中でも偉大なワイン生産地区であるコート・ドールCôte d’Or北部に位置しています。村自体はとても小さく、住民全員が顔見知りであるようなところです。数件のレストランとワインショップ、小さなたばこ屋さんなどがありますが、スーパーマーケットなどはありません。本当に静かで小さな村です。

 

ワイン産地として有名ですので、村は畑に囲まれています。今回は歩いて見て回った畑の様子をご紹介しようと思います。マニアックになりますので、ご注意ください。

 

まずは北から順に見ていきましょう。正確に言うと、ジュヴレイ・シャンベルタンというワインは、北隣りのブロション村の畑で取れたぶどうからでも造ることができます。今回は1級畑=プルミエ・クリュPremier Cru特級畑=グラン・クリュGrand Cruのご紹介に限らせていただきますので、純粋にジュヴレイ・シャンベルタン村のみをご案内いたします。

 

最北に位置する格付け畑はシャンポーChampeauxという名の畑です。ブロション村との境目にあります。標高約350m、丘の斜面やや上部に位置しています。白っぽい茶色の痩せた土壌には小石が多く含まれています。さすがプルミエ・クリュ、いいぶどうが取れそうです!

 

シャンポーの上部には、グーロGoulotという畑があります。隣ですのでお互い似た感じです。

 

グーロの南隣には、コンブ・オ・モワヌCombe au Moineという畑があります。

gevrey-combe-aux-moines

この畑も一部がシャンポーと接しているのですが、この畑は見るからに急斜面の、偉大な畑です。丘の上部にある畑で、森と接しています。畑の表面は石ころだらけで、いかにも水はけがよさそうです。水はけが良いと粒の小さな凝縮されたぶどうが収穫できます。

 

コンブ・オ・モワヌの東隣にはプティ・カズティエPetits Cazetiers、その南隣にはカズティエCazetiersという、これも評価の高い畑があります。

 

そしてその南隣りがクロ・サン・ジャックClos Saint-Jacquesです。

clos-st-jacques3

この畑はジュヴレイ・シャンベルタンのプルミエ・クリュの中でも最高評価を受けています。南東向きの斜面畑で、良いテロワールであることが一目瞭然です。その斜面下部にはクロ・デュ・シャピトルClos du Chapitreがあります。この丘にはその西側にラヴォー・サン・ジャックLavaut Saint-Jacques、エストゥルネル・サン・ジャック、Estournelles Saint-Jacques、ポワスノPoissenot、レ・ヴァロワーユLes Varroilles、ラ・ロマネLa Romanée、ラ・ボッシエールLa Bossièreのプルミエ・クリュがあります。

 

ジュヴレイ・シャンベルタン村にはこの丘の向かいにもう一つ別の丘があります。その斜面に、この村を代表するグラン・クリュがあり、その周辺にさらにプルミエ・クリュがあります。

 

クロ・サン・ジャックから斜面を下ってくると、反対の丘の麓にクレピヨCraipillot、シャンポネChamponnet、フォントニーFonteny、コルボーCorbeaux、イザールIssartなどのプルミエ・クリュがあります。イザールの南隣りから、いよいよグラン・クリュ畑の登場です。

 

斜面上部、標高300mほどのところにリュショット・シャンベルタンRuchottes-Chambertinがあります。この村のグラン・クリュの中で最も標高が高い所にあり、比較的エレガントなワインができます。その斜面下部にあるのがマジ・シャンベルタンMazis-Chambertinです。色が濃く、タンニン豊富な凝縮されたワインができます。

 

さて、マジ・シャンベルタンの南隣りが、この村で一番長い歴史を誇るシャンベルタン・クロ・ド・ベーズChambertin-Clos de Bèzeです。

clos-de-beze1

ベーズ修道院が所有していた畑で、その歴史を630年まで遡ることができます。球体のように調和のとれたワインができると言われています。

 

そしてその南隣りが、この村(ジュヴレイ・シャンベルタン)の名にもある、シャンベルタンChambertinです。

chambertin

この畑があまりに有名になったため、ジュヴレイ村の人たちはこの畑の名前を村の名前にくっつけたわけですね。シャンベルタン・クロ・ド・ベーズに次ぐ歴史を誇る、銘醸畑です。かつてベルタンという農民がその畑(畑はフランス語でシャンchampsといいます。)を所有していたためその名がついたようです。力強い、長期熟成に耐え得るワインを生み出します。現在この村には9つのグラン・クリュがありますが、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズとシャンベルタンがトップ中のトップとして評価されています(シャンベルタン・クロ・ド・ベーズのぶどうから造られたワインは、シャンベルタンとして販売することができます。その逆は不可)。

 

さて、続いて南隣りには、ラトリシエール・シャンベルタンLatricières-Chambertinがあります。「野性的」とか「軽い」とか評論家により意見が分かれていますが、私はどちらかというと軽めのワインを産する畑かな、と思っています。とはいえ、グラン・クリュの中での比較なので、一般的な水準からみれば上質なワインを産する畑です。

 

さて、このグラン・クリュが並ぶ地区には、グラン・クリュ街道と呼ばれる小道が通っています。車がやっとすれ違うことができるくらいの道です。シャンベルタン・クロ・ド・ベーズからこのグラン・クリュ街道を挟んだところ(斜面下部、一段低くなっている)にシャペル・シャンベルタンChapelle-Chambertinがあります。この村のグラン・クリュの中で最も繊細で優雅なワインを生むと言われています。その南隣りがグリオット・シャンベルタンGriotte-Chambertinです。わずか2.7haほどの小さな畑で、そのためワインの生産量も少ないのですが、ワインはその名の通りグリオット(さくらんぼ)の香りがすると言われています。正直、グリオット・シャンベルタンでなくてもグリオットの香りがするワインはたくさんあるのですが、この畑のワインは特にグリオットの香りが際立っている、とか...

 

その南隣りにシャルム・シャンベルタンCharmes-Chambertinがあり、さらにその南隣りにはマゾワイエール・シャンベルタンMazoyères-Chambertinがあります。シャルム・シャンベルタンは西側に、グラン・クリュ街道を挟んでシャンベルタンと接しています。マゾワイエール・シャンベルタンでとれたぶどうからできたワインはシャルム・シャンベルタンとして販売できます(マゾワイエールの名で売られるのはごくわずか)。シャンベルタンとは正反対のような、しなやかで優美なワインが生まれますが、両者合わせて30ha以上もの広さがあり、造られるワインも様々です。中にはがっかりさせられるものもあります。

 

以上、リュショットからマゾワイエールまで、9つのグラン・クリュをご紹介いたしました。

 

これらのグラン・クリュの周りにもプルミエ・クリュ畑があります。リュショットの南隣りかつクロ・ド・ベーズの西隣りにベレールBel-Airがあります。斜面上部で傾斜がきつく、日当たり、水はけともに良さそうな、見るからにいい畑です。マジ・シャンベルタンの東隣には、オ・クロゾーAu Closeau、ラ・ペリエールLa Perrière、クロ・プリウール・オーClos Prieur-Haut、シェルボードCherbaudes、プティット・シャペルPetite Chapelle、アン・エルゴEn Ergotとプルミエ・クリュが続きます。そしてラトリシエール・シャンベルタンの南隣りにはオ・コンボットAux Combottesというプルミエ・クリュがあります。

 

以上、ジュヴレイ・シャンベルタン村の全てのグラン・クリュとプルミエ・クリュ畑をご紹介いたしました。

 

この村最南端のオ・コンボットから南は隣村のモレ・サン・ドゥニの領域になり、クロ・ド・ラ・ロシュClos de la Rocheクロ・サン・ドゥニClos Saint-Denisなどのグラン・クリュが続いていきます(82日のレストラン講座で、極上の造り手によるクロ・サン・ドゥニをご紹介いたします。詳しくはこちらをご覧ください。)

 

長々と畑をご紹介いたしました。興味のない方には、長いしつまらないし最悪でしたね。

 

訪問したドメーヌの話も書きたかったのですが、また別の機会にさせていただきます。

 

 

このコラムを読まれた方、是非感想を下記メールアドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

ワインコラム 第20回 ブルゴーニュBourgogneでの生活 その1

私は20059月から12月にかけて、ブルゴーニュ地方のワイン産業の中心地、ボーヌBeauneに滞在していました。目的はもちろん「ワインの勉強」です!

 

この町には何度か来たことがあり、まさに「ワインまみれ」の様子にすっかり惚れこんでいて、いつか住んでみたいものだなあと憧れていました。

 

家探しは苦労しましたが、泊っていたホテルの親切なマダムの紹介で、一人暮らしのおばあちゃんの家を紹介してもらいました。食事付きです!貴重な家庭料理を食べさせてもらいましたが、この話は次回以降にさせていただきます。

 

ブルゴーニュ地方は、フランスでボルドーと並ぶ銘醸地です。その名声はフランスのみならず世界中に広がっています。この産地の特徴は、白ワインはシャルドネChardonnay、赤ワインはピノ・ノワールPinot Noirという単一品種で造られるのですが、同じぶどうを原料としているのにもかかわらず、隣り合う村で微妙に味わいが異なります。さらに言うと、隣り合う畑でもワインの風味が異なるのです。これこそブルゴーニュの醍醐味でしょう!

 

私がしたかったのは、地図を見ながらブルゴーニュの村々を歩いて回ることでした。ブルゴーニュ地方では畑が細分化されていて、それぞれに名前があり、格付けがなされています。有名な畑を実際に見て、立地条件などを確認したかったのです。時間は90日あるので、1つの村を1日かけて見ることができます!

 

具体的な訪問のお話は次回以降に譲るとして、今回はブルゴーニュの魅力についてご紹介したいと思います。

 

ブルゴーニュと言えば、まずはワインが思い浮かびますね。前述のとおり白ワインはシャルドネ、赤ワインはピノ・ノワールから主に造られます(それ以外の品種もあります。)。

chevalier-montrachet2008-3 シャルドネ

clos-de-beze2 ピノ・ノワール

この2つの品種、ブルゴーニュが原産のようですが、今日では世界中で栽培されています。外国にも上質なものが多くありますが、本場ブルゴーニュのワインには、他の産地がどんなに頑張っても出せない独自の魅力があります。これが「テロワールterroir」なのですね。

 

土地に根差したワインと切っても切れないのが郷土料理です。ブルゴーニュはおいしい料理の宝庫です。ちょっと挙げるだけでも、ハムのパセリゼリー寄せjambon persillé、雄鶏のワイン煮coq au vin、ブルゴーニュ風ポーチド・エッグoeuf en mouretteなどなど...どれもおいしい料理です!また、ワインとの相性がいいんですよね!

 

おいしい料理はおいしい素材から。ブルゴーニュの料理がおいしいのは、ブルゴーニュにおいしい食材がたくさんあるから、と言えるでしょう。料理にたっぷり使われるワインは言うまでもありません。他にもマスタード、カシス、チーズ、シャロレ牛...

 

ほんとうに土地に根付いた「郷土料理」ですね。書いていてつらいです。食べたくなってきました。話題を変えて、ボーヌの町をご紹介しましょう。

 

ブルゴーニュ地方の中心都市はボーヌの北にあるディジョンDijonですが、ワイン産業でいうとボーヌが中心になります。古い城壁で囲まれた町は、端から端まで歩けるほどの広さです。ワイン好きにとってたまらないのは、その中にワインショップ、レストラン、ワイン関連グッズ店、ワインの造り手などが密集しているところです。

 

観光客は少なくないですが、いわゆる観光名所というところに比べればその比ではなく、のんびりと過ごせます。

 

今こうして書いていて、ふと思い当ったボーヌの魅力は、たくさんあるお店の個々のレベルが高いところにあるようです。ワインショップには日本では手に入りづらい希少品がありますし、ワイン関連用品も便利なもの、面白いものが安く手に入ります。レストランも高級店からビストロまで総じてレベルが高いようです。

 

なかなかこのような町はないと思います。ほんとうに素敵な町です。

 

さて、この町には面白い特徴があります。さて、何でしょう?4択で考えてみてください。

 

1、小学生が朝、学校に着いたら、とりあえずワインで乾杯する。

2、町の中央にメリー・ゴー・ラウンドがあるのですが、その回転がやたら速い。

3、ワインと美食のおかげか、この町の住民の平均寿命は130歳である。

4、地下にワインの熟成スペースがあるため、町の地下は空洞だらけになっている。

 

さあ、今回も難しいですね!

 

正解は...4番です!

 

ブルゴーニュの魅力、みなさまにも伝わりましたでしょうか?

 

次回は、実際にブルゴーニュの村を訪問した時のお話です。

 

 

このコラムを読まれて、何かご意見、ご感想がございましたらご連絡ください。

vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

ワインコラム 第19回 フランスのミシュラン星付きレストラン その2 3つ星編

前回に引き続き、今回はミシュラン・ガイド星付きレストランのお話です。

 

最新のミシュラン2009では、最高評価の3つ星レストラン29軒あります。大都市であるパリに集中するのは当然として、パリ以外の3つ星レストランは意外な田舎にあることが多いようです。それも、電車やバスを乗り継いで...といったレベルでさえなく、タクシーや車でないと行けないようなところです。さすがに3つ星だけあって立派な美しいレストランなのですが、そのような施設がひっそりとした田舎にあると妙に違和感を感じるものです。

 

私が初めて訪れた三つ星レストランロジュ・ドゥ・ローベルガードLoges de l’Aubergade(舌を噛みそうな名前ですね!私が訪れた2005年はこの名前でしたが、現在ではミシェル・トラマMichel Tramaというシェフの名前に変更されています。)も、そのような場所にありました。

 

ピュイミロールPuymirolという小さな小さな村にあるのですが、よそ者が足を踏み入れるのをためらってしまうようなひっそりとした村です。近くに大きな町があるわけでもありません。本当に、「よくこんな所(ちょっと、失礼ですね)に!」と思ってしまうような場所に天下の三つ星レストランがあります。たどり着くまでに少し苦労しました。この辺りは起伏が多く、細い田舎道をくねくねと走り続けました。

duras3フランス南西部の風景です。

 

当時ボルドーBordeauxに住んでいた私はプロヴァンスProvence地方へ出かけた帰り道だったので寄ったのですが、そうでもなければなかなか来られない所だと思います。

 

村は数分で端から端へ歩けるほど小さく、村についてからレストランを探すのに苦労はしませんでした。特にこれといった商店も見当たらないこの村に、シンプルな外観のこのレストランはひっそりと佇んでいました。

 

緊張しながら、初の三つ星レストランに入ります。5月。気持ちの良い時期だったので、テラスに案内されました。もはや、小村ピュイミロールの面影は微塵もありません。どこか南国の高級リゾートにでも来たような雰囲気です。静かで格調高い空気がゆったりと流れています。

 

席に着くと、ソムリエが食前酒を伺いに来ます。日本では大体シャンパーニュになりますが、フランスには各地に地元で消費される食前酒があります。このお店で勧められたのは、シェフのトラマ氏が造っているワイン、ソーヴィニヨン・ブランsauvignon blancでした。このあたりで造られているワインに興味があり、頼んでみるとほのかに樽香のある上質なワインでした。食前酒がおいしいといいですよね!これから始まる食事への期待が高まります。

 

私がオーダーしたのは、市場のメニュー Le Menu du Marché (76ユーロ) でした。三つ星というとかなりの出費の覚悟が必要と思いますが(実際パリではそうですが)、田舎にある三つ星レストランでは意外と安いところもあるのですね。

 

まず、アミューズ・ブーシュamuse-boucheとしてキャラメリゼしたプチ・トマト、刻んだきゅうり入りの白いムース、アボガドのクリーム、小さなえびせん(?)などが出てきました。見た目にも楽しく、今後の食事への期待が高まります。

 

続いて、前菜の前にもう一品。竹串に刺したフォワ・グラのテリーヌに、アーモンドなどのナッツがまぶしてあるものです。竹串を使うところは意外性がありますが、料理自体はクラシックなおいしいものです。

 

力の入った前菜entréeは、輝くような美しい野菜です。トマトや、緑、黄色のズッキーニなど。酸味のあるキャラメル風味のジュレがソースとして使われています。白インゲン豆のように見えるものが入っていますが、実はこれ、フォワ・グラでした!このような遊び心は楽しいですね!この野菜のおいしさは特筆ものでした。

 

どきどきの主菜platは、リー・ダニョーris d’agneau(仔羊の胸腺)をからりと揚げたものです。これも竹串に刺された状態で出てきました。なんだか日本の焼き鳥みたいな様子です。これといって複雑なソースがかけられているわけでもなく、素材の味わいを素直に楽しめるシンプルなものでした。私としてはちょっと残念でした。味つけ、そして特に見た目が...

 

フランス人なら、竹串に刺さって出てくる料理に新鮮さを感じるのかもしれませんね。私の場合は出てきた時点で「焼き鳥か!」とひとりで突っ込んでしまう(今考えてみると、串揚げか!でもよかったです。)ような気分でした。料理は見た目も大事ですよね。

 

続いてデザートに移っていきます。まず柑橘類風味の爽やかな一口サイズの飲み物が出ます。このあたりに三つ星の洗練を感じます。そしていよいよメインのデザートです。アーモンド・ムースのカプチーノ仕立て、カカオとアーモンドのアイスクリームが添えられています。カカオのアイスクリームが濃厚でおいしかったです!

 

最後はコーヒーとプティ・フール(小さな焼き菓子などの盛り合わせ。この店の場合、ほおずきがついていました。)で終わりです。 

 

食事を通して供されたパンは、グリッシーニ(イタリアにある、細長いかりかりのスナック)のほかに3種類ほど用意してありました。特に優れていた印象はありませんでした。

 

ワインは、この地のものをと思っていたのですが、残念なことに「これぞ地元の宝だ!」というものを見つけられず、好奇心からルーマニアピノ・グリPinot Gris 1990をオーダーしました。熟成感が出ていて、ほのかに甘みのあるタイプで、フォワ・グラと特によく合いました。なんとここのソムリエ、私が当時働いていたボルドーのビストロ・デュ・ソムリエBistro du Sommelierで過去に働いていたらしく、急に親近感がわきました。食後に蒸留酒をサービスしてくれたり、意外な出会いでした。

 

全体を通してみると、正直、うーん、こんなものか...と言った感じです。料理は全体的に軽く、特に主菜が残念でした。竹串も2度使っているし、フォワ・グラも連続で出ています。インパクトの強いものを使うのは1度で良かったのでは?と思ってしまいました。

 

サービスについては、私が「三つ星はどんなサービスをしてくれるのだろう?」と期待しすぎていたところがありましたが、それを差し引いてもやはり最高!とは言えませんでした。しばしばサービス・スタッフがホールから消え、一度自分でワインを注いでしまいました。

 

なんだか良くないように書いてしまいましたが、素直にレストランとして見るとやはりレベルは高いと言えると思います。ビストロなどと比べるとその洗練は圧倒的です。あとは価格とのバランスですね。あと、たまたま日本人の私がこのコースを食べたわけですが、フランス人などから見ると竹串も高評価に転じるのかもしれません。

 

結果として、経験できてよかったです。このあと、いくつかの他の三つ星レストランに行ったのですが、それらは忘れ難いような素晴らしいものでした。いつか、またご紹介できればと思っています。

 

次回はブルゴーニュBourgogneのお話です。

 

 

このコラムを読まれて、何かご意見、ご感想がございましたらご連絡ください。

vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

ワインコラム 第18回 フランスのミシュラン星付きレストラン その1

前回のコラムでは、フランスの食文化やレストランの業態についてご紹介いたしました。

 

今回は、ミシュラン・ガイドお勧めのレストランに実際に行った時のお話です。

 

2年ほど前から、日本でもミシュラン・ガイドによるレストランの格付けが行われていますね。どうやら日本の審査では、味のみを見ているようですが、フランスではレストランをトータルで見ます。つまり、料理だけでなく、内装、サービスなども含めての「星☆」というわけです。

 

実際星付き(一つ星から三つ星)のレストランは例え一つ星でもきれいなお店で、食器も美しいものを揃えています。ただ、フランスのミシュラン・ガイドには星のないお店も紹介されています。そのようなお店はカジュアルな雰囲気のところが多く、おいしく食べて、飲んで、高くつかないコストパフォーマンスに優れたお店です。東京のミシュラン・ガイドには星付きのお店しか載っておらず、残念に思います。

 

さて、それでは実際に私が訪れたお店のお話です。

 

初めて星付きのレストランに行ったのは、2005年のことでした。南西部にある一つ星レストランGindreauです。数百年前から時間が止まっているような、緑の美しい、人の姿がほとんど(全く?)見かけられないような小村にあります。流れている時間が違うように感じられました。お店は意外に明るくてモダンな内装です。

 

オーダーしたコースはアミューズ・ブーシュ、前菜、主菜、デザートで構成されていました。まずアミューズ・ブーシュです。ハムを挟んだ小さなトースト、塩味のかぼちゃのタルトなど、小さなフィンガー・フードで食事が始まります。

 

続いて前菜は豚足のキャベツ包み。

e794bbe5838f-027

豚足はカジュアルな食材で、よくビストロ料理などに使われますが、星付きレストランでは上品な料理になって出てきました。素材独特の香りがありながら品よくまとまっていて、繊細な料理でした。

 

メインは仔羊です。地元(Quercyケルシー)で育った仔羊をロゼ(焼き方。牛肉ではレアsaignant、ミディアムà point、ウェルダンbien cuitなどありますが、仔羊に関してはロゼroséに焼くのが一般的です。)に焼きあげ、付け合わせにはやはり地元のチーズ、ロカマドゥールrocamadourとじゃがいもを和えたものが添えられています。

e794bbe5838f-028

臭みなど全く感じられない、上品な料理でした。

 

デザートは装飾的で、薄くスライスしてぱりぱりにした洋梨が添えられた洋梨のシャーベットと栗入りのクリームです。あと、食後にコーヒーと一緒にプティ・フール(ショコラやマカロン等の焼き菓子など)が運ばれてきます。

 

地方のレストランの楽しみは、地元の食材を使った料理と地元のワインのマリアージュですよね!選んだワインは白はシャルドネchardonnay主体のVin de Pays du Lot Blanc、赤はCahors 1990でした。白は心地よく樽が効いているタイプでとても上質でした。赤は熟成が進み穏やかな状態で、ケルシーの仔羊と寄り添うようでした。これが地元のマリアージュなのでしょうか?!

 

初めての星付きレストランは、1つ星でしたが大満足でした。やはり料理だけではなく、内装を含めて「そこで過ごす時間を楽しんだ」ようです。

 

次回は三つ星レストランのお話です。

 

 

このコラムを読まれて、何かご意見、ご感想がございましたらご連絡ください。

vinclosy@aol.com

  • Comments (Close): 0
  • Trackbacks (Close): 0

Home > Archives > 2009-07

サイト内検索
Feeds
Meta

Return to page top