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2010-04
ワインコラム 第50回 イタリア シチリア編
- 2010-04-23 (金)
- ワインコラム
シチリアSiciliaと聞いて、何を思い浮かべますか?
熱い南の島、ゴッド・ファーザー、おいしい海の幸...
いろいろあると思います。
今回はシチリアのお話です。
シチリアは地中海最大の島で、イタリア最大の州でもあります。内陸部はごつごつした岩山があり、島の北東部にはエトナEtna火山があります。
私がこの島を訪れたのは2008年の10月でした。日本では秋ですが、シチリアの太陽が熱かったことを覚えています。南の島らしく、サボテンが生えていて、花を咲かせていました。
市場ではサボテンの実(一番手前)も売られています。
州都であるパレルモPalermoに着いた私は、車を借りて島内のワイン産地を回りました。
パレルモの風景
パレルモの大きな交差点。信号がなく、非常に危険です。
まずはパレルモの南西にあるマルサラMarsalaに向かいました。シチリアで生産されているワインは多彩で、辛口の白ワイン、赤ワインだけでなく、甘口の白ワインや酒精強化ワイン(ブランデーを添加して造られるワイン。シェリー、ポート、マデイラなどが有名。)まであります。マルサラは世界的に知られている酒精強化ワインで、このマルサラの町周辺のぶどう畑で収穫されるぶどうから造られています。
マルサラの大手、フローリオ社。
海に面した町自体はそれほど大きくなく、活気に満ちた様子には見えませんでした。優れたマルサラは世界の頂点の一角を占めることができるほどの偉大なワインになり得るのに、衰退していく様子を見るのは寂しいものです。
続いて私はメンフィMenfiに向かい、プラネタPlaneta社を訪れました。
南らしい雰囲気が漂うプラネタ社のワイナリー。
同社はシチリアを代表するワイナリーのひとつで、白、赤、甘口と高品質なワインを造っています。ワイン造りに対する哲学を聞かせて頂き、醸造所を見学させて頂きました。醸造所の内部は清潔に保たれており、最新の設備も導入され、優れたワインを造り続けていることに納得しました。シャルドネなどの国際品種で有名になりましたが、チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアCerasuolo di Vittoriaなど、シチリア独自のぶどう品種を使ったワインにやはり私は心ひかれます。
ヴィットーリアの町。
この日は島の南東に位置するラグーザ・イブラRagusa Iblaに泊まりました。やや内陸部の標高の高いところにあるこの町は世界遺産に登録されており、町全体が独特の雰囲気を持っています。くねくねと山道を登らないといけないのですが、この町にはイタリア版ミシュラン・ガイドでひとつ星に輝くレストランもあります。私は世界遺産の町よりも、レストラン目当てで行きました(笑)。
夜はそのロカンダ・ドン・セラフィーノLocanda Don Serafinoでコース料理を食べました。
まずは希少な上質オリーヴ・オイルとパンが出てきます。フランスのレストランとイタリアのリストランテでは、パンそのものも違いますが、パンにバターをつけるかオリーヴ・オイルをつけるかが異なりますね。フレンチのほうに慣れている私はオリーヴ・オイルが出されると「イタリアンだな」と認識させられます。
上質なバターには感動させられますが、上質なオリーヴ・オイルもいいですね!オリーヴにも品種があり、オリーヴが育った土地(テロワール)を表現しているところがワインに似ていると思います。
まぐろのタルタルが出て、次に温製の魚のミルフィーユ、肉が乗ったなすのフラン、パスタと続きます。もちもちとした食感のフェットチーネは最高でした!
メインはまぐろでした。シチリアではまぐろ漁が盛んなようですね。やはり島だけあって、このコースを見ても魚を使った料理が多いようです。まぐろはミ・キュイ(外側のみ火を通して、中は生の状態)で仕上げてあり、ソースはこの島唯一のD.O.C.G.格付けのワイン、チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアを使ったものでした。食べてみると、予想に反してソースが甘い!私個人の意見ですが、ちょっといまいち、でした...
残念な?まぐろ
デザートはクリーム状のガトーとクレーム・ブリュレのようなもので、おいしくいただきました。
ワインはもちろん(?!)チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアを選びました。1本でコースを通しましたが、南のワインにしては酸味がしっかりしており、エレガントな印象で、料理と良く合っていました。
様々な文化が融合した不思議なこの不思議な島に、独特の個性があるワインが生まれるのは驚くことではないようですね。極上ワインが少なからずありますので、今後も講座で紹介していきたいと思っています。
Clos Yでは、5月9日(日曜日)のランチ講座のテーマをイタリアとし、イタリア各州のワインをご紹介いたします。上質なスパークリング・ワインD.O.C.G.フランチャコルタFranciacorta、世界遺産に指定されている珍しいD.O.C.チンクエ・テッレCinque Terre、シチリアのD.O.C.G.チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアCerasuolo di Vittoriaをお食事とともにお楽しみいただきます。ご興味のある方はご連絡ください。
コラム50回記念!
コラムに関する感想をメールしてくださった先着3名様に、特別出張講座をプレゼントいたします。ご希望の場所で、ご希望のテーマについて約60分の講義(ワインのテイスティングは含みませんが、ご希望の場合はご相談ください。)を無料(交通費について、講義を行う場所が都内の場合は講師の交通費はClos Yが負担します。都内以外の場合は講師の交通費の実費を頂きます。受講者の交通費はご自身でご負担ください。)で行います。ワインに関する知識を深めるチャンスですよ!
まずはコラムに関する感想(今後このようなコラムが読みたい、もっと見やすくしてほしい、ボリュームが多い、少ないなど、なんでも)をメールください。
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ワインコラム 第49回 シャトー訪問の話 幻のデュ・テルトル編
- 2010-04-18 (日)
- ワインコラム
この10年で、訪問させていただいたワイナリーの数は300を超えました。
車がすれ違うこともできないような細い曲がりくねった山道をどきどきしながら登ったり、ふいに開けた視野に飛び込んできた雲海に目を奪われたり、数メートル先も見えない濃い霧の中を恐る恐る進んだり...
偉大なワインを生み出す優れたワイナリーは、人里離れた場所にあることが少なくなく、「ワイナリーを訪れること」が「ちょっとした冒険」になってしまうことがあります。
初めて訪れる土地が多いですし、時間にゆとりを持って訪問の計画を立てるのですが、今までに2件ほど、訪問の予定をしておきながら訪問できなかったワイナリーがあります。
今回はそのひとつ、幻に終わったシャトー・デュ・テルトルChâteau du Tertre訪問のお話です。
シャトー・デュ・テルトルは、ボルドーにある、1855年の格付け5級のグラン・クリュです。しっかりとした構成がありながらしなやかで、若いうちからおいしく飲めるスタイルが好きで、2008年の秋に訪問することにしました。
アペラシオンとしてはマルゴーMargauxになりますが、シャトーはマルゴー村の近くのアルサックArsac村に位置しています。
ボルドー、メドック地区の有名シャトーは、ほとんどのものが主要道路近くに位置していて、初めて訪れるにしても道に迷う心配はほとんどありません。あの道を走ったことがある方なら、ワインのラベルに描かれているシャトーの建物が次々に現れる風景を楽しまれたことでしょう。
しかし、アルサック村は主要道路から外れた内陸部にあります。村に行くこと自体は難しくないのですが、村に着いてもシャトーがどこにあるか分からず迷ってしまいました。
そこで、近くにあったシャトー・ジスクールChâteau Giscoursに立ち寄り、シャトーの場所を教えてもらおうとしたのですが...
シャトー・ジスクール
私「すみません、あの...」
ジスクールの受付の人「ああ!ナカニシさんですね?お待ちしておりました。」
私「???」
どうしたことでしょう、シャトー・ジスクールの人が、私の訪問を予定しているとは??!
実は、シャトー・デュ・テルトルとシャトー・ジスクールは同一人物が所有しております。系列会社ということですね。どうやら、これら2つのシャトーの訪問を管理する人は同一人物で、私のシャトー・デュ・テルトルへの訪問の予定を、ジスクールのほうに入れてしまったようなのです!
道を聞くために偶然訪れたシャトーでこのようなことになっているとは...驚きました...!!
シャトーの人曰く、今の時間はシャトー・デュ・テルトルには予定が入っており、訪問ができないとのこと。ジスクールを訪問しないかと提案されたのですが、ジスクールは過去に訪問したことがありましたし、何よりデュ・テルトルを一目でも見たかったので、ジスクールを出て、デュ・テルトルに向かいました。
シャトー・デュ・テルトル
メドックMédocらしい、小石が多く含まれた石灰質の痩せた土壌にぶどうの木が整然と列をなしています。よく手入れされているのがわかります。
デュ・テルトルの畑
あの素晴らしいワインは、この畑から生まれるのだなと、きちんとした訪問はできなかったものの、来られて良かったと思いました。
みなさまもワイナリーを訪問するときはお気をつけください(笑)
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ワインコラム 第48回 カリフォルニアの話 ナパ・ヴァレー編 その2
- 2010-04-04 (日)
- ワインコラム
オーパス・ワンOpus Oneの後、私はスタッグス・リープ・ディストリクトStags Leap District地区に位置するスタッグス・リープ・ワイン・セラーズStag’s Leap Wine Cellarsを訪れました。
ナパ・ヴァレーは南北に細長い地区で、東西には山脈が走っています。スタッグス・リープ・ディストリクトは東側の山の斜面に位置し、ぶどう畑は急な斜面にも展開されています。
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズは、1976年、パリで行われたフランスワインとカリフォルニアワインのブラインド・ティスティングにおいて、フランスの錚々たるワインを押さえ見事1位に輝いた伝説を持っています(このワイナリーのすぐお隣に、スタッグス・リープ・ワイナリーStags’ Leap Wineryというよく似た名前のワイナリーがありますが、まったく関係のない別ワイナリーなので注意が必要です。とはいえ、スタッグス・リープ・ワイナリーのワインも上質です。)。
ここでは、畑を見せてもらい、樽熟成庫でワインを試飲させてもらいました。白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ、赤はメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の4種類のキュヴェです。樽で熟成させたソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネはどちらもしっかりとした構成がありながら、過度なボリュームが無く、上品にまとまっていました。赤は伝説のカスク23Cask 23はもちろん素晴らしいものでしたが、興味深かったのがアルテミスArtemisでした。カベルネ・ソーヴィニヨンに少量のメルロをブレンドしたこのキュヴェは、アニマル系の香りが立っていて、食事と合わせたら面白そうだなと思いました。いずれ、レストラン講座でご紹介できればと思っています。
続いて、カーネロス地区CarnerosのセインツベリーSaintsburyを訪れました。
看板のないワイナリー入口。
カーネロスはナパとソノマ、2つの地方にまたがっていて、冷涼なサン・パブロ湾に近く、冷たい空気が流れ込んできます。そのため、栽培されているぶどう品種もピノ・ノワールなど冷涼地に適したものが多くなっています。
リラ仕立ての畑
ここではシャルドネとピノ・ノワールの複数のキュヴェを試飲させてもらいました。キュヴェによりワインの性格が異なり、いかにも新世界的なものもあればブルゴーニュ風のものもあり、面白い比較ができました。同じ地区のぶどうから同じ造り手が造るのに、こうもワインの性質が異なる。要因はいろいろあるのでしょうが、不思議と言えば不思議ですね。これがワインの面白さなのでしょう。
さて、夜はレストランで食事しました。セント・ヘレナの町を北側に抜けてすぐのところにある、ザ・ワイン・スペクテイター・グレイストーン・レストランThe Wine Spectator Greystone Restaurantです。
このレストランは料理学校が運営しており、料理学校の敷地の中にレストランがある、という格好になっています。
店内は広く、テーブル・クロスのない木のテーブルが並んでいます。
前菜は、小さなスープ、魚のフライなどの盛り合わせを選びました。
トーストしたパンに乗せたブランダードがおいしかったです。
メインは牛肉のステーキです。
牛肉の質、ソースが抜群に良く、非常においしかったです。ワインはソノマ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンを合わせたのですが、とてもよく合いました!
デザートも前菜同様、小さなポーションの盛り合わせです。
やはり世界的に有名なワイン産地だけあって、美食家も集まるのでしょう、予想以上に上質な料理を楽しむことができました。それと、サービスが素晴らしかったです。カジュアルな雰囲気ですがきめの細かいサービスをしてくださり、それは感動に値するものでした。
旅はいいものですね。勉強になります!
Clos Yでは、4月15日のレストラン講座のテーマを「カリフォルニア」とし、上質なワインとそれに合わせた料理を召し上がっていただきます。ご興味のある方は是非いらしてください。
このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。
vinclosy@aol.com
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