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2009-10

ワインコラム 第32回 ボルドー シャトー訪問の話 レオヴィル&ランゴア・バルトン編

今回は、ボルドーのシャトーを訪問したお話です。

 

訪れたのはシャトー・レオヴィル・バルトンChâteau Léoville Barton1855年のボルドー地方のワイン格付けで第2級に列せられた、格式あるシャトーです。

 

位置しているのはアペラシオンサン・ジュリアンSaint-Julienの真ん中あたり、ジロンド川寄りのところです。

 

サン・ジュリアンはボルドー地方を代表するワイン生産地区であるメドックMédocの真ん中あたりに位置していて、この地区のワインはいずれのシャトーも押し並べて水準が高く、品質が安定していることで知られています。

 

シャトー・レオヴィル・バルトンは、バルトン家が所有しているのですが、バルトン家はもうひとつ、シャトー・ランゴア・バルトンChâteau Langoa Bartonも所有しています。なんとシャトー・ランゴア・バルトンも1855年の格付けで3級に選ばれています。特級シャトーを2つも所有しているバルトン家、すごいですね!

 

シャトー・レオヴィル・バルトンとシャトー・ランゴア・バルトンは同じ醸造所で発酵、熟成が行われています。つまり両者の主な違いは、原料となるぶどう、ということになりますね。

 

シャトーには白い石が敷き詰められた美しい中庭があり、そこを散歩しながらシャトーの歴史などを伺いました。醸造所にはアルコール発酵のための発酵槽が整然と並んでいます。この醸造所では木製のものとぴかぴかのステンレスの2種類を併用していました。

 

醸造所を案内していただいたあとに、2種類のワインをテイスティングさせていただきました。ひとつはシャトー・レオヴィル・バルトンの2003年。もうひとつはシャトー・ランゴア・バルトンの2003年です。私が訪問したのは20048月だったので、まだ樽熟成中の未完成ワインです。収穫からまだ1年も経っていません。通常では、このシャトーのワインが商品として出荷されるのは収穫から2年ほど経ってからです。

 

ワインのスタイルにもよりますが、このように熟成途中の赤ワインを口に含むと、まだ荒々しいタンニンが口中を支配して、ぎすぎすした感じを受けることが多いのですが、今回テイスティングした2種類はこの時点で素晴らしくおいしいものでした。両者ともに黒っぽい濃い色調。香りは樽から来るロースト香が支配的だったものの、ジャムのように火を通した黒い果実の香りもしっかりと感じ取ることができました。これは酷暑だった2003年ならではの個性だと思います。タンニンは強いものの、特にランゴア・バルトンのほうは柔らかく、ざらつくような感触はありませんでした。

 

最近これら2つのシャトーの2003年ヴィンテージをテイスティングしたことはありませんが、どのように熟成しているか楽しみです。おそらく、ワインには強い濃縮感がありますので、まだまだ若い状態でしょう。

 

ワインは、同じものでも開ける時期によって変化しますので、それも大きな楽しみですね!

シャトー・レオヴィル・バルトンのように比較的長命なワインは熟成による変化を長年にわたって楽しむことができますので、若い状態のワインを数本購入して、数年にわたって楽しむのも一興ですね。

 

じっくり取っておくのはなかなか難しいですが(笑)

 

 

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ワインコラム 第31回 ぶどう品種の話 アリゴテ編

美しい瓶に入った高級嗜好品であるワイン。

 

醸造工程で糖などを加える場合がありますが、ワインはぶどうそのものと言っていいと思います。

 

今回は、そのぶどうのお話です。

 

現在、ワイン用に栽培されているぶどう品種は世界中で約1000品種あると言われています。そのうち、主要品種は100品種ほどのようです。

 

人気があり、世界中で栽培されているスター品種はシャルドネChardonnayカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignonなどごく一部に限られています。

 

というのも、ピノ・ノワールPinot NoirネッビオーロNebbioloなどのように、類稀な素晴らしいワインになり得るぶどう品種の中には、限られた条件のもとでしかうまく栽培できないものもあるからです。

 

このコラムではあまり有名ではないものの、注目に値するぶどう品種を紹介していきたいと思います。

 

今回ご紹介するのはアリゴテAligotéです。

 

白ぶどうであるこの品種の故郷はフランス、ブルゴーニュBourgogne地方です。この土地には前述のスター品種、シャルドネの聖地であり、アリゴテはどうしても霞んでしまうのですが、私はこの品種は注目に値するものだと思います。

 

この品種の特徴として、ワインにすると酸味が際立つ点が挙げられます。一般的にはブルゴーニュ・アリゴテBourgogne Aligotéというアペラシオンで低価格で販売される、若飲みタイプのワインです。

 

キールKirというカクテルをご存知でしょうか?カシスのリキュールと白ワインで作られますが、あのカクテルはブルゴーニュ生まれです。そしてその白ワインこそ、アリゴテのワインなのです。酸味が強いワインですので、カシスリキュールの甘味が加わるとバランスの良い味わいになるのですね。

 

今回は、カクテルにされてしまうようなアリゴテではなく、ゆっくり味わうに値するアリゴテをご紹介いたします。

 

まずご紹介しなければならないのは、ブズロンBouzeronでしょう。ブルゴーニュ地方のコート・シャロネーズCôte Chalonnaise地区にあるブズロン村のワインで、必ずアリゴテ100%で造られます。アリゴテならではのしっかりした酸味がありながら、ある程度果実味の厚みがあります。優れた造り手(A et P de Villaineなど)のワインは数年の熟成によりさらに品質が向上する、良質なワインです。

bouzeron ブズロン村のぶどう畑

 

もう一つ、隠れたアリゴテ栽培村がブルゴーニュ地方にあります。モレ・サン・ドゥニMorey-Saint-Denisです。クロ・ド・ラ・ロシュClos de la Rocheクロ・ド・タールClos de Tartなどのグラン・クリュを擁し、赤ワインのイメージが強いかもしれませんが、上質な白ワインも産出しています。その白ワインの一部が、アリゴテから造られています。ドメーヌ・ポンソDomaine Ponsotモレ・サン・ドゥニ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・モンリュイザンMorey-Saint-Denis 1er Cru Clos des Monts Luisantsです。1級畑に植えられているアリゴテはとても珍しいものです。高価なワインですが、良い意味で一般的なアリゴテらしくない上質なワインです。

mont-luisant モン・リュイザン畑

 

高価なアリゴテと言えば、ドメーヌ・ドーヴネDomaine d’Auvenayコシュ・デュリーCoche Duryがトップクラスです。並のグラン・クリュを上回る価格ですが、一般的なアリゴテと全く異なるワインになっています。特に張りつめたミネラル感が凄く、アリゴテの持つ可能性を教えてくれます。一度は飲んでおきたいワインだと思います。

 

Clos Yが行う111日のレストラン講座で、ドーヴネのアリゴテが登場いたします!ご興味のある方は是非ご参加ください。)

 

その他、注目に値するアリゴテの生産者をご紹介いたします。

 

シュヴロChevrot(特にTilleul)、アラン・コシュ・ビズアールAlain Coche-Bizouardフランソワ・ミクルスキFrançois Mikulskiドミニク・ドゥランDominique DerainルロワLeroyなど...

 

機会がありましたら試してみてください。きっとアリゴテが好きになると思いますよ!

 

 

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ワインコラム 第30回 ボルドー地方の話 コート・ド・カスティヨン編

このワインコラムも早いもので第30回になりました。

 

毎度つまらないことを、思うままに書いてきましたが、今回は私の好きなコート・ド・カスティヨンCôtes de Castillonについて書きたいと思います。

 

このアペラシオンは、ボルドー地方、サンテミリオン地区の東隣に位置しています。カスティヨン・ラ・バタイユCastillon La Batailleという町の北部に、約3,000haのぶどう畑が広がっています。

 

この地を初めて訪れたのは、2000年の秋でした。ボルドー地方には、ポルト・ウヴェルトPortes Ouvertesという素晴らしいイヴェントがあります。直訳すると、「開かれた扉」という意味です。ワイン生産者が、自らの扉を開放し、ワイン愛好家を受け入れ、ワインを振る舞う、という夢のような企画です!

 

友人と2人で、このイヴェントに参加するために電車でカスティヨンまで行きはしたものの、さて、これからどうしようかということになりました。とりあえず観光案内所に行ってみたものの、日曜日で閉まっています。近くにあったワイン屋さんらしきところに入ると、ここが幸運にもメゾン・デュ・ヴァンMaison du vinでした!メゾン・デュ・ヴァンは、主要な産地にほぼ必ずある施設で、簡単に言うとそのアペラシオンの広告宣伝のようなことを行っています。今日はポルト・ウヴェルトですよねと尋ねると、なんと会場まで送っていってくださるとのこと!

 

びっくりしながらも、ありがたい申し出に感謝しながら、友人とメゾン・デュ・ヴァンの人の車に乗り込み、今回のイヴェント会場であるシャトー・ピトレイChâteau Pitrayに向かいました。途中いくつものCôteを越えました。山道を走っているような感じです。左岸のメドック地区は比較的平坦ですが、ボルドーのテロワールも個性があり面白いです。

 

この年のポルト・ウヴェルトの会場だったシャトー・ピトレイは、本当に立派なお城があり、広い美しい庭がありました。お城の前にはクラシック・カーがずらりと並んでいます。庭にはテーブルが並べられていて、そのテーブルはワインボトルで埋め尽くされていました。集ったワイン愛好家は、グラスを買えば(160円ほどでした。)思い思いにワインを試すことができます。

 

当時は2000年。供されたワインは19971998がほとんどでした。若いながらも、シャトーごとの違い、ヴィンテージによる違いなどいろいろ比較できて勉強になりました。

 

そこで、私にとっては衝撃的な光景に出合いました。おばあさんが、赤ワインが入っているグラスに氷を入れて、おいしそうに飲んでいたのです!

 

当時私は学生で、ワインに関する専門知識はなく、しかしとてもワインが好きで、勉強したい、勉強したいと思っていました。その時に見たあの光景は、「ワインはそんなに難しく考えるものではなくて、気軽においしく飲めばいいんだよ。」と言っているような気がしました...

 

ほんとうに、ワインは愛すべき飲み物ですから、楽しく飲むことが一番素敵ですよね!

 

満足するまで試飲したあと、他のシャトーへ移動しました。偶然訪れたシャトー・ラヴェルニョットChâteau Lavergnotteでは、なんとぶどう収穫機を運転させてもらいました!当時車の免許を持っていなかった私は、ゴーカート以外の乗り物を運転するのは初めてでした。シャトーのムッシュに操作方法を教えてもらいながら、恐る恐る運転してみましたが...楽しかったです!!運転席が高いところにあり、景色がよく見えて気持ち良かったのを覚えています。

castillon1 コート・ド・カスティヨンの風景

 

そして、運転が終わった後、なんと免状をもらいました!ぶどう収穫機運転免許です!ムッシュが用意してくれたひとつの記念品ですが、フランスの粋なところですよね。

 

さらに、近くのシャトーでは、ワインの試飲のほかにフォワ・グラの試食までさせてもらいました。ポルト・ウヴェルト恐るべし...

 

このようなイヴェントは、そのアペラシオンの知名度を上げるためにも、愛好家を増やすためにもいいですよね。おかげで私はすっかりカスティヨンが好きになりましたから(笑)

 

帰りはまたメゾン・デュ・ヴァンの人に駅まで送ってもらいました。本当に、なぜ?と思うほど親切でした。別れ際に「また来なさい」って...

 

幸せな一日でした。

 

 

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ワインコラム 第29回 ジュラJura地方の話

ワイン王国フランスには、様々な個性を持つワインを生むワイン産地があります。スパークリング・ワインの代名詞にもなっているシャンパーニュChampagne地方、重厚な赤ワインで知られるボルドーBordeaux地方、歴史あるテロワールのワインを産するブルゴーニュBourgogne地方...

 

数あるワイン産地の中で、では最も知られていない産地はどこかと考えてみると、「ジュラ&サヴォワJura et Savoie地方」かもしれません。

 

そもそも、ジュラ地方とサヴォワ地方は全く異なるタイプのワインを生み出す別産地です。なのに、ワインに関する本などを見てみるとほとんどの場合ジュラ地方とサヴォワ地方がひとくくりに扱われています。この事実だけを見ても、いかに注目されていないかがわかるというものです。

 

しかしながら、私はジュラとサヴォワは素敵なワイン産地だと思います。

 

特に今回ご紹介するジュラ地方は実に個性的なワイン産地です。

 

まずは位置を確認しましょう。ジュラ地方はフランス東部、スイスとの国境近くに位置しています。ブルゴーニュ地方の町ボーヌから、ジュラ地方の町アルボワArboisまで約90kmほどと近く、ブルゴーニュ系の品種であるシャルドネやピノ・ノワールも盛んに栽培されています。

 

ジュラ地方のワインの魅力は、ブルゴーニュ系品種も良いのですが、やはりジュラならではの品種にあると思います。

 

ジュラ地方の地場品種は複数ありますが、ここでは白ぶどうサヴァニャンsavagninをご紹介いたします。サヴァニャンはこの地方のワインに広く使われますが、この品種による特に有名なワインが「黄ワイン=ヴァン・ジョーヌvin jaune」と呼ばれるワインです。

 

黄ワインは十分に糖度の上がったサヴァニャンから造られる白ワインの一種で、樽で6年以上もの長い期間熟成されてからでないと出荷されません。結果、じっくりと熟成=酸化が進み、ワインは黄色く見えるほどの濃い色調を呈します。シェリーのような独特の香りがあるワインです。フランスではカレーの香りがあると言われていますが、確かにカレーの香辛料の香りがすることがあります。

 

黄ワインはアルボワを始めジュラ地方全域で造られていますが、シャトー・シャロンChâteau Chalonのものが最良とされています。

 

ch-chalon2 シャトー・シャロンのぶどう畑

 

他にもジュラ地方には個性的なワインがあります。陰干ししたぶどうから造られる甘口ワインヴァン・ド・パイユvin de paille、ぶどう果汁とマールmarc(ぶどうの搾りかすを原料とするブランデー)のブレンドであるマックヴァン・デュ・ジュラMacvin du Juraなどです。

 

いずれもジュラならではの、「テロワールのワイン」だと思います!

 

生産者も家族単位の小規模な造り手が多く、私が訪問したジャック・ピュファネイJacques Puffeneyピエール・オヴェルノワPierre Overnoyベルテ・ボンデBerthet Bondetなどは生産量こそ少ないものの上質なワインを造っていました。

arbois-jqcques-puffeney ジャック・ピュファネイのカーヴ

p-overnoy2 ピエール・オヴェルノワのドメーヌ

berthet-bondet ベルテ・ボンデのドメーヌ

 

ジュラ地方のワインは個性的で、本当に面白いと思います。しかしあまり知られていないのは、やはりその生産量の少なさが原因のひとつかと思われます。もし幸運にも見つけることができましたら、試してみてくださいね!

 

 

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