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2013-07

ワイン・コラム 第134回 チリの話 モンテス編

世界中に美しい風景があると思います。

 

ぶどう畑に限っても、海沿いの絶壁のチンクエ・テッレCinque Terre、円形闘技場の様なプリオラートPriorat、コート・ダジュールに面したカシィCassis、レマン湖北岸の急斜面ヴォーVaud...

 

ワン産地の数だけ美しい風景があるのかもしれません。

 

しかし、今回ご紹介するチリのワイナリーモンテスMontesで、私は世界で最も美しいもののひとつであろう景色に出会いました。

 

まずはモンテスというワイナリーについてですが、1988年創立の、世界的に見てかなり若いワイナリーです。

 

しかし日本への導入は比較的早く、チリワインの日本におけるひとつの顔を担っていると言えると思います。1998年にチリのカベルネ・ソーヴィニヨンが日本で流行しました。私は、ワインを好きになり始めたころにモンテス・アルファ カベルネ・ソーヴィニヨンMontes Alpha Cabenert Sauvignonを飲んで、とてもおいしいと思ったことを今でも覚えています。

 

さて、そのワイナリーと畑を、2013年の4月に訪問させて頂きました。場所は、コルチャグア・ヴァレーColchagua Valley内、サンティアゴから170kmほどの距離に位置しています。

DSC01407 燃えるように色づいた美しい木がお出迎え。 

ワイナリーに着くと、ジープの様な車に乗せて頂いて、早速畑の見学です。急な斜面を登ったり降りたり、激しく揺れる車内ですが、そんなことは気にならないほど美しい風景が目前に広がっています。

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途中、斜面の高い場所で一度車を降りて風景を眺めている時、案内してくださったワイナリーの方が得意げにおっしゃった「この景色、ごめんなさい。」という台詞を今でも覚えています。

 

畑の見学の後は風水を取り入れた、やはり美しいワイナリーに入り、醸造設備や樽熟成庫などを見せて頂きました。

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この日はちょうど収穫の真っ最中。一年で一番忙しい時期です。

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この日用意して頂いたワインは25種類!1990まで遡る、モンテス・アルファ カベルネ・ソーヴィニヨンの垂直も含まれていました。試飲の最後に登場したのは、謎の赤ワイン。モンテスの新商品とのことで、結局正体は明かされずじまい。近いうちに発売されるようです。カベルネでしょうか...?

 

ワイナリーを出た時はとっぷり暗くなっていましたが、空には星が輝いていました。

 

美しい土地で生まれる、健やかなチリのワイン。最近では冷涼な土地から、爽やかな酸味を備えたエレガントなタイプのワインも増えてきています。この週末にでも(いや今夜早速)試してみてはいかがでしょうか?

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ワイン・コラム 第133回 ブルゴーニュの話 クロ・ド・タール編

ブルゴーニュのグラン・クリュGrand Cru
 

その名を冠するワインは、世界で最も素晴らしいワインのひとつである可能性が高いであろうと言うことができます。

 

畑が格付けの対象であるブルゴーニュ地方では、ひとつのグラン・クリュの畑を複数の所有者が分割して所有していることが一般的です。例えば、クロ・ド・ヴージョClos de Vougeotは50ha以上ある大きなグラン・クリュですが、2013年現在約80の所有者が存在しています。

 

そうなると、同じグラン・クリュのワインでも、生産者により品質のばらつきが生じるのは必至ですし、グラン・クリュの中には本当にグラン・クリュの資質があるのか疑いたくなるような、それほど条件が良くなさそうな畑が含まれてしまっています。

 

そのため、ブルゴーニュのグラン・クリュのワインの中には、残念ながらがっかりさせられてしまうものが少なからず存在しています。

 

今回ご紹介するクロ・ド・タールClos de Tartは、特に1996ヴィンテージ以降、特に安心して購入できる安定感のあるグラン・クリュです。

Clos de Tart 

なぜ、安定感があるのか。例えば1996年から醸造責任者を務めるシルヴァン・ピティオ氏Sylvain Pitiotのおかげ、理想的な斜面畑、モメサンMommessinモノポールMonopole...複数の理由を挙げられますが、そのような周知の事実の紹介は他に任せるとしまして、今回はちょっと内部に踏み込んだお話をしたいと思います。

 

まずは畑とドメーヌについて。約7.5haの一枚畑は、全てモレイ・サン・ドゥニ村Morey-Saint-Denisにあります。北隣りはクロ・デ・ランブレイClos des Lambrays、南隣りはボンヌ・マールBonnes Maresと、グラン・クリュに挟まれています。

 

一般的には収穫されたぶどうはできるだけ早く醸造所に運ばれ、すぐに醸造の工程へと流れて行きます。中には畑から醸造所まで遠く離れているケースがあり、そのような場合にはぶどうが時間と共に傷んでいってしまいます。しかしクロ・ド・タールの場合、醸造所は文字通り畑のすぐ隣にありますので、収穫したてのぶどうをすぐに醸造所に入れることができます。

 

シルヴァン・ピティオ氏は、クロ・ド・タールの畑を、細かな違いに基づいて6つの区画に細分化して管理しています。収穫もその区画ごとに行われ、それぞれ別々のステンレス・タンクで醸造されます。

 

Clos de Tart2 畝が斜面に対し垂直になっている。

Clos de Tart3 収穫直前のぶどう。

画像 053 少し大きめの小石が含まれる土壌。

 

2005年を例に挙げると、収穫は9月21日開始、3日半かけて、24日に終了しました。6つに分けられた区画ですが、標高が高い区画の方がぶどうが熟するのが遅い、と単純に予想されますが、実際はそう簡単ではないようで、下の区画より先に収穫した上の区画もありました。

 

さて、ピノ・ノワールが植えられているクロ・ド・タールですが、中にはピノ・ノワール以外のぶどうも存在しているようです。実際ピノ・ノワールは突然変異を起こしやすく、ピノ・グリPinot Grisやピノ・ブランPinot Blancが生まれてきた経緯があります。その手のものか、苗木屋のミスか、わかりませんが、白ぶどうがちらほら見受けられました。しかし、特にこれからワインの資格を取ろうと勉強されている方は、クロ・ド・タールはピノ・ノワール100%と認識してください(笑)

 

さて、(恐らく)世界中どこでも、ぶどうの収穫が終われば祭りが待っています!クロ・ド・タールの収穫終了祭り(ブルゴーニュ地方ではラ・ポーレLa Pauléeと呼ばれます。)は...

画像 052 頭にはぶどうの枝の王冠を!

画像 061 ワインはもちろんクロ・ド・タール!

画像 062 マリア様が見守る。

祭りは良いものです。

 

過去10年を見ると、2004は苦労したようですが、それ以外のヴィンテージは軒並み高評価を得ています。グラン・クリュの中でも特に力強い部類に入るクロ・ド・タールは、熟成させると若いうちには表現できない魅力を開かせていきますが、若いうちに飲んでも若いなりの素晴らしさを楽しむことができます。クロ・ド・タールを飲まずして、ブルゴーニュを、ピノ・ノワールを語ることなかれ、とまでは言いませんが、そう言えるほどの価値があるワインだと思います!

 

Clos Yは、8月4日のレストラン講座のテーマを「半年に一度の豪華版」とし、極上ワインと料理のマリアージュをお楽しみ頂くよう予定しております。10年の熟成を経た、クロ・ド・タール2003も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第132回 チリの話 見落とされがちな気候区分そして意外なワインの価格編

前回に引き続き、チリのお話です。

 

ワイン・コラム131回で、「南半球に位置するチリでは、北半球に位置する日本とは逆に、南に行くほど冷涼になります。」と書きました。このことは間違いではないのですが、チリのワイン産地の気候を語る上で、もうひとつ非常に重要な要因があります。

 

それは、東西の条件差です。キーとなるのは冷涼な海流二つの山脈です。

 

まずは冷涼な海流についてご説明します。チリの西側には太平洋が広がっています。そしてこの場所にはフンボルト海流という冷たい海流があり、海に近ければ近いほど冷涼な気候になります。

DSC01480 冷たい海。 

続いて、山脈のお話です。チリで山脈、と言うとまずはアンデス山脈を思い浮かべますね。最高峰が約7,000mにも達する、南米大陸を貫く重要な山脈です。

 

そしてもうひとつ、あまり語られることが無いように思われますが、チリには海岸山脈があります。この海岸山脈はその名の通り海岸沿いある山脈で、アンデス山脈とほぼ並行して南北に連なっています。

 

これらの要素をもとに、チリのワイン産地は東西の区分で3に分類されます。

 

1、 海岸地区Costa

2、 エントレ・コルディエラス地区Entre Cordilleras

3、 アンデス地区Andes

 

1の海岸地区は、その名の通り、冷たいフンボルト海流の影響を強く受ける、海に近いところです。

 

2を飛ばしてまず3のアンデス地区の説明を先にしますと、こちらもその名の通り、アンデス山脈の麓に位置する、標高の高いところです。標高が高ければ高いほど、単純に気温が低くなります。

 

そして2のエントレ・コルディエラス地区。この地区は複雑です。単純に考えると、冷たい海の影響をあまり受けず、標高もあまり高くなく、暑い土地、ということになります。実際この区分に属するワイン生産地の多くはぶどうが完熟する環境に恵まれていて、ワインのアルコール度数が15度を上回ることも珍しくありません。濃厚なカベルネ・ソーヴィニヨンがこの地区の代表的ワインです。しかし、海岸山脈は途切れることなく続いているわけではありませんので、場所によっては冷涼な海風が吹き込んでくるところがあります。そのような場所では、比較的クールな印象のエレガントなワインができます。

 

少し難しいお話ですが、細長いチリという国のワイン産地は、北に行くほど暑く、南に行くほど冷涼だ、と単純に言い切ることができない、複雑なテロワールを持っているということです。

 

さて、続いてサンティアゴの街を歩いて気付いたワインの価格に関するお話です。

 

私自身チリのワインは安くコスト・パフォーマンスが高い、というイメージが強くありましたので、チリはかなり物価が安い国だと思っていました。しかし、ホテルやレストランの価格を見る限り、決して物価の安い国では無いようです。ホテルやレストランはもちろん格によりますが、日本とあまり変わらない程度の価格。コンビニのようなミニ・マーケットの商品の値付けを見ても、日本と比べて物価が極端に安いわけではありません。

 

そして、1軒のワイン・ショップに入り、値付けを見て衝撃を受けました。日本でもお馴染みの銘柄が並んでいます。ディスプレイは美しく、扱っているのは上質なものが多かったので、チリのワインショップの中でも高級店だったのだと思いますが、高級銘柄は、日本での値付けのほうが安かったのです。

 

それも、僅かな違いではありません。日本で6,000円ほどで購入することができるチリの極上ピノ・ノワールのそのお店での値付けは、当時の換算レートで日本円にして1万円以上。日本で1万円近くする高級カベルネ・ソーヴィニヨンなどは、日本円に換算して2万円以上と、倍ほどの差があったのです。

 

事実として、私たちは、日本に居ながら、チリで買うよりも安くチリ・ワインを楽しむことができる環境にいます。

 

この不思議は、恐らく「税金」がポイントになってくるのだと思いますが、チリでの価格を考えると、異常とも言えるチリ・ワインのコスト・パフォーマンスの高さのわけがわかる気がします。

 

もし、チリのワインを、安いからと敬遠されている方がいらっしゃいましたら、「本当はこの値段の2倍するワインなのだ。」と思ってみてはいかがでしょうか。そのチリ・ワインが少し高級に見えてくるかもしれません(笑)。

 

 

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ワイン・コラム 第131回 チリの話 まるでピュリニー?!知られざる寒冷地の可能性

2013年4月に、チリのワイン産地を訪れる機会に恵まれました。

 

私にとって初のチリ、さらに初の南米大陸の経験でした。

 

成田からパリへ約12時間。パリで6時間過ごし、さらにチリの首都サンティアゴSantiagoまで約13時間半。

 

サンティアゴの手前でアンデス山脈を越えるのですが、朝日に染まるアンデス山脈はそれは美しいものでした。南米に来た!と実感したものです。

 

着いたのは日曜日の朝でしたが、なかなかきつい状態での旅の始まりになりました。

 

しかし空港を出て、乾燥した空気に包まれ、強い日差しを浴び、チリに来たことを実感。初めての土地への期待で疲れはどこかへ行ってしまいました。

 

チリに対する第一印象、このことについて後に訪問するワイナリーで何度か聞かれることになるのですが、それはオーストラリアのよう、というものでした。広大なオーストラリアと南北に細長いチリではいろいろと異なる点が多いのですが、空港からサンティアゴに向かう途中、一面に広がる乾燥した大地は私が旅したオーストラリアの風景の一部に良く似ていました。

 

着いた初日は日曜日ということもあり、ワイナリーが運営する市内のレストランに行ったくらいでワイナリーの訪問は無く、いよいよ翌日からワイナリー巡りが始まります。

 

まず訪れたのはサンティアゴ郊外に位置するアキタニアAquitaniaです。シャトー・コス・デストゥルネルの元オーナー、シャトー・マルゴーの総支配人、ボランジェの会長。これら錚々たる顔ぶれと、ボルドー大学で学んだ経験を持つフェリペ・ソルミニアック氏、4人が立ちあげたワイナリーで、名前からボルドーを意識していることが伺えます(ボルドー市が位置するのはフランス南西部、アキテーヌAquitaine地方。)。

 

サンティアゴの東側、高台に位置するこのワイナリーは、西側に街を一望することができ、東側にはさえぎる物の無いアンデス山脈を望むことができます。

DSC01320 

ここで実感したことは、考えてみればわかることなのですが、チリは東側に高い山脈が通っているので、朝の光がなかなか届かない、と言うことです(快晴のこの日、最初の光が差し込んできたのは9時15分でした。)。逆に言うと、山脈の反対側に位置するワイン産地、アルゼンチンのメンドーサなどでは、午後の西日がやや早い時間に山脈によって遮られるわけです。

 

さて、訪問させて頂いた日は、ちょうどぶどうの収穫の開始日でした。

DSC01327 収穫されたぶどう。

季節は秋です。朝は予想以上に寒かったですが、光が差し込んでくるとすぐに気温が上がっていきます。

 

旧式ながら性能の良い圧搾機、醸造用タンクなどを見学させて頂いて、その後試飲に移ります。

DSC01323 圧搾機。

DSC01322  ステンレス・タンク。

このワイナリーでは8種類のワインを試飲させて頂きましたが、特に強く印象に残っているのはチリ南部のぶどうで造られたワイン、ソル・デ・ソルSol de Solシリーズでした。このソル・デ・ソルのワインの原料となるぶどうは、チリのワイン産地の最南端、マジェコ・ヴァレーMalleco Valleyで栽培されたものです(※日本ではマジェコ・ヴァレーと表記・発音されることが多いようですが、現地の人はマヤコと発音していました。)。

 

南半球に位置するチリでは、北半球に位置する日本とは逆に、南に行くほど冷涼になります。チリで最南端のワイン産地と言うことは、チリで最も冷涼なワイン産地と言うことができると思います。実際、この土地はぶどう栽培には冷涼過ぎるとされ、現時点ではほとんどぶどう栽培が行われていない状況です。

 

さて、ソル・デ・ソルのワインに話を戻します。ピノ・ノワールの赤ワインとシャルドネの白ワインがあり、クールなニュアンスを持つピノ・ノワールも良かったのですが、シャルドネ(2009)にはびっくりさせられました。

 

まず、香りからして冷涼な土地を感じさせます。強い酸味を持っていそうな柑橘類、ミネラル、そこに樽から来るトーストの香りが混じり、グラスを回すとフローラルなニュアンスが現れます。味わいは果実味を上回る酸味があり、ボリュームは強すぎず、ボワゼ(樽由来の香り)が余韻にやや長く続いていきます。

 

まさにブルゴーニュのよう!それも、最近で言えば2008年のような、エレガントさを湛えた年のコート・ド・ボーヌの白、まるでピュリニー・モンラシェにありそうな高い完成度でした。

 

ワインをとても愛している方の中でも、チリのワインについて「安い。そしてあまり興味が無い。」と考えている方が少なくないのが日本の現状だと思います。実際、そのように思われても仕方の無いワインが存在しているのは確かだと思いますが、ワイン愛好家の胸を躍らせるワインも多く造られています。

 

今回の旅で、私が最も興味があった産地はビオビオ・ヴァレーBíobío Valleyでした(マヤコ・ヴァレーの北隣りに位置するワイン産地。)。この冷涼な土地で、エレガントな素晴らしいワインが生まれています。

 

しかしこの訪問で、さらに冷涼な産地の素晴らしいワインと出会うことができました。一言でチリのワイン、と言ってもたくさんの種類があります。きっと新しい発見がどこかにあるはずです。改めて、試してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、7月28日の12時から、「ワン・コイン単発ワイン講座」を行います。テーマは「チリ・ワインの最新情報」です!4種類のワインの試飲を含むワイン講座が500円で受けられます。ご都合の良い方は是非メールvinclosy@aol.comにてお申し込みください。

 

 

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