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ワイン・コラム 第132回 チリの話 見落とされがちな気候区分そして意外なワインの価格編

前回に引き続き、チリのお話です。

 

ワイン・コラム131回で、「南半球に位置するチリでは、北半球に位置する日本とは逆に、南に行くほど冷涼になります。」と書きました。このことは間違いではないのですが、チリのワイン産地の気候を語る上で、もうひとつ非常に重要な要因があります。

 

それは、東西の条件差です。キーとなるのは冷涼な海流二つの山脈です。

 

まずは冷涼な海流についてご説明します。チリの西側には太平洋が広がっています。そしてこの場所にはフンボルト海流という冷たい海流があり、海に近ければ近いほど冷涼な気候になります。

DSC01480 冷たい海。 

続いて、山脈のお話です。チリで山脈、と言うとまずはアンデス山脈を思い浮かべますね。最高峰が約7,000mにも達する、南米大陸を貫く重要な山脈です。

 

そしてもうひとつ、あまり語られることが無いように思われますが、チリには海岸山脈があります。この海岸山脈はその名の通り海岸沿いある山脈で、アンデス山脈とほぼ並行して南北に連なっています。

 

これらの要素をもとに、チリのワイン産地は東西の区分で3に分類されます。

 

1、 海岸地区Costa

2、 エントレ・コルディエラス地区Entre Cordilleras

3、 アンデス地区Andes

 

1の海岸地区は、その名の通り、冷たいフンボルト海流の影響を強く受ける、海に近いところです。

 

2を飛ばしてまず3のアンデス地区の説明を先にしますと、こちらもその名の通り、アンデス山脈の麓に位置する、標高の高いところです。標高が高ければ高いほど、単純に気温が低くなります。

 

そして2のエントレ・コルディエラス地区。この地区は複雑です。単純に考えると、冷たい海の影響をあまり受けず、標高もあまり高くなく、暑い土地、ということになります。実際この区分に属するワイン生産地の多くはぶどうが完熟する環境に恵まれていて、ワインのアルコール度数が15度を上回ることも珍しくありません。濃厚なカベルネ・ソーヴィニヨンがこの地区の代表的ワインです。しかし、海岸山脈は途切れることなく続いているわけではありませんので、場所によっては冷涼な海風が吹き込んでくるところがあります。そのような場所では、比較的クールな印象のエレガントなワインができます。

 

少し難しいお話ですが、細長いチリという国のワイン産地は、北に行くほど暑く、南に行くほど冷涼だ、と単純に言い切ることができない、複雑なテロワールを持っているということです。

 

さて、続いてサンティアゴの街を歩いて気付いたワインの価格に関するお話です。

 

私自身チリのワインは安くコスト・パフォーマンスが高い、というイメージが強くありましたので、チリはかなり物価が安い国だと思っていました。しかし、ホテルやレストランの価格を見る限り、決して物価の安い国では無いようです。ホテルやレストランはもちろん格によりますが、日本とあまり変わらない程度の価格。コンビニのようなミニ・マーケットの商品の値付けを見ても、日本と比べて物価が極端に安いわけではありません。

 

そして、1軒のワイン・ショップに入り、値付けを見て衝撃を受けました。日本でもお馴染みの銘柄が並んでいます。ディスプレイは美しく、扱っているのは上質なものが多かったので、チリのワインショップの中でも高級店だったのだと思いますが、高級銘柄は、日本での値付けのほうが安かったのです。

 

それも、僅かな違いではありません。日本で6,000円ほどで購入することができるチリの極上ピノ・ノワールのそのお店での値付けは、当時の換算レートで日本円にして1万円以上。日本で1万円近くする高級カベルネ・ソーヴィニヨンなどは、日本円に換算して2万円以上と、倍ほどの差があったのです。

 

事実として、私たちは、日本に居ながら、チリで買うよりも安くチリ・ワインを楽しむことができる環境にいます。

 

この不思議は、恐らく「税金」がポイントになってくるのだと思いますが、チリでの価格を考えると、異常とも言えるチリ・ワインのコスト・パフォーマンスの高さのわけがわかる気がします。

 

もし、チリのワインを、安いからと敬遠されている方がいらっしゃいましたら、「本当はこの値段の2倍するワインなのだ。」と思ってみてはいかがでしょうか。そのチリ・ワインが少し高級に見えてくるかもしれません(笑)。

 

 

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