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2009-09
ワインコラム 第28回 シャンパーニュChampagneの話 その2
- 2009-09-28 (月)
- ワインコラム
「テロワール」
ワインを語る上で、よく耳にする言葉ですね。
テロワールとは、フランス語の単語terroirです。実際にフランス語の辞書を引いてみると、「地方」、「領土」などの意味があります。
ところが、ワイン用語としてこの単語が使われる場合は意味合いが異なってきます。実はこの単語は曖昧な部分がありまして、使われる文脈により多少意味が変わるのですが、「ぶどう畑とそれを取り巻く環境」と定義できると思います。
このテロワールという単語が多く使われるのは、フランスのブルゴーニュBourgogne地方です。なにしろこの土地では畑がとても細かく分かれていて、ひとつひとつの畑に名前がついてあり、さらに格付けまで存在するのですから!
もしかすると、そのブルゴーニュの対極にあるのがシャンパーニュChampagneかもしれません。大手メゾンがブランド戦略でマーケティングを展開し、消費者は「ラグジュアリーな泡の出るお酒」としてシャンパーニュを受け入れます。
それが悪いことだとは言いません。しかし、ここで私がはっきりと申し上げたいのは、シャンパーニュも他のワイン同様、ぶどうが生まれ育ったテロワールをしっかりと反映した上質ワインである、ということです。
シャンパーニュ地方のぶどう畑
シャンパーニュ地方にもグラン・クリュGrand Cruがあります。このことすらあまり知られていないのは、いかにシャンパーニュ地方が「テロワールのワイン産地」として見られていないかを表しているように思えます。
実際、ワインの品質の約8割は原料となるぶどうで決まりますので、シャンパーニュもいかによいぶどうを確保するかが品質の鍵になります。
そこで重要になってくるのがグラン・クリュです。シャンパーニュ地方では17の村がグラン・クリュに指定されています。豊潤で完璧なバランスを持つヴェルズネイVerzenay、緻密で雄大なアイAÿ、鋼のように堅固な構成のメニル・シュール・オジェMesnil sur Ogerなど、グラン・クリュのシャンパーニュは明らかに他と一線を画しています。
ヴェルズネイの畑
アイの畑
メニル・シュール・オジェの畑
前回のコラムでご紹介したエグリ・ウーリエEgly Ouriet、サロンSalonなども、グラン・クリュのシャンパーニュです。
今回はアイAÿ村をご紹介いたします。中世よりシャンパーニュ地方最上のテロワールとされ、今日でもそのピノ・ノワールの品質は群を抜いています。
村自体は、小さくて静かな、フランスの田舎のどこにでもありそうな(失礼!)佇まいですが、村の北側にある南向きの斜面畑は見るからに別格の様相です。この村にはボランジェBollinger、ゴッセGossetなどの高品質メゾンが軒を連ねています。
その中で、2008年に私が訪問した造り手はガティノワGatinoisです。ガティノワのシャンパーニュは2007年のシャンパーニュ騎士団叙任式で公式に使われました。私はソムリエとしてサービスに携わったのですが、入手困難な綺羅星のような錚々たるシャンパーニュが並ぶ中で、ひときわ輝きを放っていたのがガティノワでした。
このメゾンのシャンパーニュの特徴は、何と言ってもアイのピノ・ノワールによる芳醇さでしょう。シャンパーニュというより、まるでピノ・ノワールの赤ワインを飲んでいるようなエレガントで緻密な香り、細やかな味わいは、かつて王侯貴族に愛されたアイのテロワールの偉大さを余すところなく表現しています。
訪問したメゾンはしかしながらこぢんまりとしており、家族単位で仕事をしている様はまさに職人だと思いました。
エグリ・ウーリエ、サロン、ガティノワ...
偉大なシャンパーニュは、やはり偉大なテロワールから生まれるようですね。グラン・クリュがグラン・クリュとされている理由は、やはりそのシャンパーニュを飲めばわかるわけです。
これからは、いつもの有名メゾンのシャンパーニュもいいですが、「テロワール」を感じる村単位のシャンパーニュにも注目してみてください!
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ワインコラム 第27回 美食の話 レストラン ル・サンク編
- 2009-09-20 (日)
- ワインコラム
すっかり秋らしくなってきましたね。
夏は良く冷やした白ワインが飲みたくなりましたが、そろそろ赤ワインも似合う季節です。
おいしい食材もたくさん出てくる、まさに食欲の秋!
今回はそんな秋に相応しい美食のお話です。
コラムの19回で、三ツ星レストランのロジュ・ドゥ・ローベルガードLoges de l’Aubergadeをご紹介いたしました。
今回はパリの3つ星レストラン(2005年当時。現在は2つ星です。)ル・サンクLe Cinqをご紹介したいと思います。
ル・サンクはホテル・フォーシーズンズ・ジョルジュ・サンク内にあるフレンチ・レストランです。洗練された美しい内装、一流の料理...ここを訪れる理由はいくつでもありますが、私がこのレストランを訪れた一番の目的は「ソムリエ」でした。
3年に一度、「世界ソムリエコンクール」なるものが開かれます。その頂点に立つためには世界中のワインに関して問われる筆記試験と非常に高度な技術を要求される実技試験、そしてコンクールの花形であるブラインド・テイスティングで優秀な成績を収めなければなりません。
1995年は東京でこのコンクールが行われ、田崎真也氏が見事チャンピオンになりました。彼は、恐らく日本で一番有名なソムリエでしょう。実際尊敬に値する素晴らしい方です。
そんな偉大な世界ソムリエ・チャンピオンがル・サンクにはいたのです。2004年に、史上最年少で優勝したエンリコ・ベルナルド氏(現在はル・サンクから離れています。)です!
彼にお会いして、お話を伺うのを楽しみにしていたのですが...残念ながら私が行った日には彼は不在でした。
しかし素晴らしいワインに出会いました!
アンヌ・マリー・エ・ジャン・マルク・ヴァンサンAnne-Marie et Jean-Marc Vincent(造り手) オークセイ・デュレスAuxey-Duresses(ワイン名) 白 2003です。
白桃、あんずなどの熟した果実、ミネラル、樽からのロースト香が素晴らしく調和し、2003年という猛暑を反映した溢れるほどの果実味を持った、今でも忘れられないワインでした...
あまりに感動したので後日この造り手を訪問するに至るのですが、ブルゴーニュの静かな村にいながら先取の気鋭に満ちた、素晴らしい人物が造るワインでした。有名な造り手ではなく、私もル・サンクで飲んだのが初めてだったのですが、このような隠れた上質ワインを見つけ出してくるのはさすがですね!
ル・サンクで飲んだのとは別のワインですが、同じ造り手のものです。
さて、料理はというと...
お昼の75ユーロ コース
最初のアミューズ・ブーシュは、脂身をきれいに取り除いた甘味を感じる生ハム、ナッツの入った塩味クグロフ(アルザス地方のパンのようなお菓子のようなたべもの。)など。
最初に提供される料理と向き合う瞬間は、いいものですね!アミューズ・ブーシュは簡単なものが多いのですが、このレストランではきちんと仕事がされていて、今後のお料理への期待が高まりました!
続いて、前菜の前のお料理が、サーモンのマリネ、キャビアソース。塩加減が絶妙でした。
いよいよ前菜です。私が選んだのは、サーモンの頭肉のハーブジュレ寄せ。これも記憶に残る一皿でした。臭みなど全くない、透明感すら感じさせるようなサーモンは絶品で、ワインと良く合いました...
メインは、海の幸のリゾット。フランス料理にしては珍しい一皿だと思います。そういえば、提供されるパンもフォカッチャがあったり、イタリアの影響を感じました。
さて、そのリゾットはやはり素晴らしかったです。テーブルでかけられるソースは車海老など贅沢な海の幸の旨味を凝縮させた濃厚なもので、まさにメインを飾るにふさわしいものでした。
続いてデザートに移りますが、まずデザート前にパンナコッタ、エキゾチックフルーツ、パイナップルのソルベ。
そしていよいよデザートです。クリーム状のチョコレート、エキゾチックフルーツのソルベ、エキゾチックフルーツのかけら...上質なチョコレートは濃厚で、なめらかでした。
これでコースは終了です。別途コーヒーを頼んだのですが、リストにはコーヒー豆の産地が書かれていて、産地により値段も異なっていました。私がオーダーしたのはサン・ドミング。酸味がしっかりとしていました。
コーヒーとともに供されたプティ・フールは柔らかい、恐らく自家製のヌガー、各種ショコラ、カリソン(南フランス名産の、アーモンド粉のお菓子)など。
素晴らしい内装に始まり、上質な料理、最高のワイン、とてもよい時間を過ごすことができました。
特筆しておきたいのは、サービスです。きっちりとした隙のないサービスでしたが、決して堅苦しくなく、話をすると気さくな感じで、とてもリラックスして食事をすることができました。
このときは、さすが三つ星、と思ったものです。
...なんだか、今またおいしいレストランに行きたくなってしまいました(笑)
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ワインコラム 番外編 オーストラリア横断の話 動物のお話
- 2009-09-09 (水)
- ワインコラム
2008年、オーストラリアには、純粋にワインの勉強のためだけに行きました。
観光もせず、ひたすら車を走らせてワイン産地をめぐる日々です。
その中で、たった1日だけ、ワイン以外の目的のために時間を使ったことがありました。
それは...
動物園です!
私が訪れたのは南オーストラリア州にある動物園ですが、「ワイルド・パーク」という名前が付けられています。通常の動物園は檻の中に動物がいて、それを外から見る形式ですよね。ところが、この「ワイルド・パーク」は違います!
中に入ってみると...
近くの茂みの足元を、何かがかさこそ動いています!
ちょろちょろと、ねずみの仲間のようです。
そうここは、直接動物と対峙できるのです!
ちょっと、怖いですね。
どきどきしながら歩いて行くと、広い空間に出ました。このワイルド・パークは広い割に客が少なく、動物たちの世界に人間がお邪魔しているような気分になります。
異国の地で、ひとりでワイルド・パークを歩くのは、けっこう怖いです。どきどきします。
あっ、何かがいます!!
そう、カンガルーです!恐る恐る近寄ってみると...
...やる気なさそうですね。
しかし至近距離で、カンガルーと二人っきりというのは初めてで、緊張しました。
なんてワイルドなんだ、ワイルド・パーク!!
園内には実にたくさんの動物がいました。タスマニア島に生息しているタスマニア・デビルや、さまざまな鳥類などです。
こんな映画ありましたね。
ダチョウのような大型の飛べない鳥、エミューです。
どれも楽しかったですが、私が一番心を奪われたのは...
そう、コアラです!
道を走っていて、ユーカリの森を見るたびにコアラがいないかそれとなく探していました。でも見つけられませんでした。
そのコアラが、今、とても近い距離にいます!
かわいいですねー。とてもとても癒されました。
やはり園内で一番人気の動物だと思いますが、このワイルド・パーク、空いていました。おかげでゆっくりコアラを見ることができました。
実はコアラを抱いて写真を撮ってもらったんです!有料でしたけど。
とにかく、いい思い出になったワイルド・パークでした。
珍しい白いカンガルー!左側がカンガルーです。
オーストラリアにはコアラがいる動物園が複数あるようですが、コアラを抱くことができる所は限られているようです。
オーストラリアに行かれる機会がありましたら、ぜひワインとコアラをテーマに旅してみてください!(笑)
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