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2013-03
ワイン・コラム 第124回 ぶどう品種の話 パロミノ編
スペイン南部、アンダルシア地方、ヘレスJerez(ヘレス・デ・ラ・フロンテラJerez de la Frontera)の町の周辺で造られるワインで、スペインではヘレスと呼ばれています。日本ではその英語での呼び名であるシェリーが定着しています。
シェリー自体は世界的に有名でも、その原料であるぶどう品種はあまり知られていないと思います。
ペドロ・ヒメネスPedro XimenezやモスカテルMoscatelなどの例外がありますが、シェリーのほとんどはパロミノPalominoという白ぶどうからできています。
シェリーは世界中で愛されていますが、パロミノはシェリーの原料以外であまり見かけることがありません。
パロミノの原産地はほぼ確実にアンダルシア地方とされています。パロミノの栽培は、暖かく乾燥した気候に適しており、その果汁には糖分と酸味が少ないという特徴があります。このため、一般的なワインに醸造してもとても上質なワインになることは難しいのですが、「アルバリサalbariza」という土壌で栽培されるパロミノからは上質なシェリーが生まれます。
アルバリサはヘレス・デ・ラ・フロンテラJerez de la Frontera、サンルカール・デ・バラメーダSanlúcar de Barrameda、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアEl Puerto de Santa Mariaの3つの町の間に見られる真っ白な土壌で、石灰の含有量が多く高い保水性を備えています。
このアルバリサ土壌で栽培されたパロミノのぶどうは特に上質とされ、その果汁から造られるシェリーは世界屈指の偉大なワインになる可能性を秘めています。
Jerezの畑。
実際、シェリーは世界的に見てもコスト・パフォーマンスの高い、素晴らしいワインだと思います。
すっきりした辛口タイプのフィノFinoから、重厚で余韻がとてもとても長いオロロソOlorosoまで、シェリーというひとつのワインでありながら世界でも類を見ないバラエティの広さがあります。
フィノは良く冷やして、タパス全般と楽しむことができると思います。鰯のマリネなど、一般的なワインと合わせることが難しい料理とも相性が良いです。オロロソは世界的に見ても最も余韻の長いワインのひとつと言えるでしょう。ソレラ・システムと言う独自の熟成方法により、長い樽熟期間を経たワインも含まれるこのワインは、酸化熟成により複雑な風味を備えています。しばしば紹興酒のフレイヴァーとの共通点も指摘されますが、このような重厚なワインは煮込んだ肉料理や濃厚な中華料理と合わせても楽しむことができると思います。
このような多彩なワインを生みだすパロミノ。注目されることは少ないですが、覚えておいて損は無いぶどう品種のひとつだと思います。
Clos Yは4月24日のレストラン講座のテーマを「シェリー~知られざる真価~」とし、5種類のシェリーをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。中には最低でも30年以上の熟成を経たワインで構成される希少なシェリーも含まれております。ご興味がございましたら是非ご参加ください。
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ワイン・コラム 第123回 オーストラリアの話 ソレンバーグ編
少量生産のため希少、さらに超高価で様々な意味で入手困難なワインです。カリフォルニア州にそのような銘柄が複数存在していますが、もちろんアメリカ以外の国にも存在しています。
今回ご紹介するソレンバーグSorrenbergのワインも、カルト・ワインと呼ばれています。
ソレンバーグはオーストラリアAustralia、ヴィクトリア州Victoriaの北東部に位置するビーチワースBeechworthという地区に居を構えるワイナリーです。
ワイナリー入口
このビーチワースという小さなワイン産地には、ジャコンダGiaconda、カスターニャCastagna、サヴァテールSavaterreなど高品質なワインを造る造り手が集中しています。
ソレンバーグもこの地区を代表する重要な造り手のひとつです。有機栽培で育てた健全なぶどうを、なるべく人の手を加えずに上質なワインにしています。
これはピノ・ノワール
この造り手を代表する銘柄が、ガメイGamayです。フランス以外でほとんど見かけることが無い、カジュアルなイメージを持つこのぶどう品種が、オーストラリアの奥地(?)でひっそりと栽培され、それがカルト・ワインになっているのはとても興味深いことです。
カルト・ワインだけに現地でもなかなか見つかりません。ソレンバーグのHPにオーダー・フォームがありますが、ガメイはunavailableとなっています(2013年3月15日現在)。引き合いの強さが伺い知れます。
ビーチワースの町のレストランのメニューを見て歩き、ようやくこのガメイが置いてあるお店を見つけました!
のどかな田舎のレストラン
カルト・ワインと言っても一部のカリフォルニア・ワインのような値段は付けられておりません。また、凝縮感を追い求めた結果の少量生産のワインでもありません。あくまでもナチュラルに造られた、言わば自然派ブルゴーニュ的ワインです。とは言えボージョレBeaujolaisのガメイとは様子が違います。と言うより、このガメイをブラインドで飲んでボージョレを思い浮かべる人はほとんどいないのではないかという、構成のしっかりとした密度の高いワインです(ピノ・ノワールが10%ほどブレンドされています。)。
このワイン、2012年までは日本へ輸入されていましたが、現在はもう入ってきておりません。私たち日本のワイン愛好家にとって真に手の届かないカルト・ワインになってしまいましたが、このようなワインを現地で飲むことこそ、旅の醍醐味ですよね。
カルト・ワインに限らず、日本で手に入れることができない素晴らしいワインが世界中のワイン産地に隠れています。現地を訪れる際には、有名なワインではなくそのようなワインを試してみるのも良い思い出になることでしょう。
Clos Yは4月7日のレストラン講座のテーマを「オーストラリア」とし、極上のワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ソレンバーグのガメイも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第122回 フランス、プロヴァンス地方の話 ドメーヌ・ヴァンスリーヌとラミラル編
今回は新鮮な情報をお届けいたします。
まずは南仏、プロヴァンス地方のニースNiceから出発です。
ニースに行かれたことがある方は少なからずいらっしゃると思いますが、ニースとワイン産地を結び付けて考える方はほとんどいらっしゃらないことでしょう。
ニースの町のすぐそばに、ベレBelletというA.O.P.のワイン産地があります。
全体で約50haほどのぶどう畑しかないこのアペラシオンは、フランスのワイン産地の中でも極小と言えますので、ご存じでない方が多いのも無理が無い話です。
ちょうどバタイユ・デ・フルールBataille des Fleurs(フラワー・パレード)で浮き立つニースを北西に抜け、山道を登っていくと25分ほどでベレの畑ゾーンに着きます。
小さなアペラシオンなので、造り手さんも密集しています。今回訪問させていただいたのはドメーヌ・ヴァンスリーヌDomaine Vincelineです。
2006年創立のこのドメーヌは、僅か0.8haの畑を所有しています。私が今まで訪問させていただいた造り手さんの中で最も規模の小さな造り手さんです!
小さなプレス機
ベレは白、ロゼ、赤の生産が認められていますが、このドメーヌは白と赤のみを造っています。白はロールRolleという白ぶどう品種100%で造られる、フレッシュでフルーティなタイプ。このロールはヴェルメンティーノVermentinoと全く同じ品種で、この地ではこのように呼ばれています。
赤は地場品種のフォル・ノワールFolle Noireを主体に造られます。ベレ以外ではまず耳にすることの無いぶどう品種です。2011は少しジャム様の熟した赤黒い果実の香りに少し動物っぽいニュアンスが混じり、スパイスの要素も感じられます。味わいは果実味が主体で酸味は少し穏やかで、タンニンが少し多く、余韻にボワゼ(樽)が現れ少し長く続きます。ある程度長期の熟成に耐えられそうな構造をしていました。
これらのぶどうが育つ畑は標高約230mのところに位置し、土壌は砂質で少し大きめの小石が点在しています。風の吹き抜ける谷間に面していて、昼夜の温度差が大きいとのことです。
このワイン産地に来る度に思いますが、とても美しい眺めです!
ニースから近いので、興味のある方は行かれてみてはいかがでしょうか。
この日はニースとカンヌの間の、ジュアン・レ・パンという小さな町に泊まりました。この街にはラミラルL’Amiralという素敵なレストランがあります。
海に面したこの町、夏は観光客で賑わうと思うのですが、2月は閑散としていました。落ち着いて食事ができます(笑)
前菜はじゃがいものグラタン黒トリュフのスライスがけ、メインはTurbotチュルボというカレイ科の魚をお願いしました。コースの選択肢としては無かったのですが、尋ねてみたところコースに組み込んでくれました。感謝です!
ワインはプロヴァンスのロゼ!このお店、ワインの種類はあまり豊富では無いのですが、オーダーしたワインが品切れだったようで、同じ価格で少し良いものを出してくれました。良心的なお店です。
ワインも料理もおいしかったのですが、強いインパクトを残しているのはデザートでした。今でも鮮明に思い出すことができます。今回の旅では3つ星レストランなどにも行ったのですが、デザートに関してはこのお店が一番でした!
お皿にアーモンド・パウダーを使っているような、少しさっくりとした食感のガトー(クレープ?)を敷き、その上に皮も入っているプラムのシャーベットを乗せます。そのシャーベットの周りをメレンゲで覆い、表面をさっと焙ってミントを乗せて完成です。
甘味は強すぎない程度にしっかりしているのですが、はちみつを使っているこのデザート、砂糖ではないはちみつの甘味、香りが個性的で、私はすっかり気に入ってしまいました。
本当においしかったです。レストラン講座で、腕利きのパティシエにお願いして、いつか再現できればと思っております!
プロヴァンス地方はフランスのワイン産地の中で、高品質ワインを愛する人があまり注目しない産地であるのが現状です。実際この地方で造られるワインのほとんどは軽く、フルーティなロゼで、それはそれで悪くないのですが大変魅力的とは言い難いです。しかし、中には極上のワインも少量ですが存在しています!
それにつきましては、またこのコラムや講座でご紹介していきたいと思っております。
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