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2013-01

ワイン・コラム 第120回 スペインの話 ボデガス・アユソ編

工場見学をされた経験はありますか?

 

私は小学生の頃、パン工場やガラス工場に学校の社会科見学で行った記憶があります。

 

最近は「大人の工場見学」という名の下、ビール工場の見学などが人気のようですね。

 

私がワイン生産者を訪問させて頂く場合は、ボルドーのシャトーやブルゴーニュのドメーヌなど、例え規模が大きくても「工場」というような印象を受けるところにはほとんど行ったことがありません。

 

大規模なところで印象に残っているのは、オーストラリアに数軒あります。カンガルーのラベルのワインで有名なカセラCasellaや、川の水を利用して灌漑を行い大規模にワインを造るリヴァー・ランド地区のワイナリーなど、その規模の大きさにはびっくりさせられました。

 

今回ご紹介させて頂くボデガス・アユソBodegas Ayuso、スペインのワイナリーですが規模が大きいところです。

 

スペインで最大、そして世界でも最大級のワイン産地、ラ・マンチャLa Manchaのワインを造るこの造り手は、スペインのほぼ中央、少し南に位置しています。

 

ラ・マンチャは広大なワイン産地ということだけあって、大規模に、大量生産型のワインが多く造られるところです。大規模、大量生産とはいえ自然の賜物であるワインですので、原料であるぶどうが生まれ育った土地を表現しておりますが、「嗜好品としてのワイン」愛好家にはあまり注目されることが無かった産地です。

 

そんなラ・マンチャにおいて、高品質なワインで世の注目を集めたのがボデガス・アユソです。高品質なぶどうから造った上質なワインをじっくりと熟成させたエストーラEstolaシリーズは、その品質の高さにおいて評価されました。コスト・パフォーマンスの高さも見逃せないポイントです。

 

実際にワイナリーに着いてみると、まずはその入り口で驚かされました。巨大なタンクがそびえ立ち、2008年当時私が訪問させていただいたヨーロッパのどのワイナリーよりも「巨大さ」を伺わせるものでした。

Bodegas Ayuso 

内部も巨大なコンクリート・タンクや

Estola 

フル稼働の瓶詰めライン

Estola2 

広いストック・スペース

Estola3 

 があり、ときおりすぐ脇を通過するフォーク・リフトに気をつけながらの訪問でした。

 

肝心のワインの品質はというと...いや、流石ですね、経験豊富なワイン評論家が高く評価するだけありまして、見事なワインが造られていました。

 

実際、最高級のグラン・レセルバGran Reservaのものは何年もの樽熟成を経てからようやく瓶詰めされ、さらに数年の熟成を経てようやく出荷されます。そのようなワインを造る、と決めた時点で、造り手さんの「品質へのこだわり」が垣間見えるように思います。

 

素晴らしいワインは有名なワイン産地ではないと生まれないというわけではありません。「有名では無い産地の素晴らしいワイン」を見つけるのは大変ですが、そのようなワインにこそワインの楽しみが詰まっているのかもしれません。

 

 

Clos Yは2月6日のレストラン講座のテーマを「スペイン」とし、広大なスペインから選りすぐった上質なワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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vinclosy@aol.com

ワイン・コラム 第119回 ローヌ地方の話 ポール・ジャブレ・エネ編

クリスマス、そして年末・年始という大きなイヴェントを終え、フランス料理レストラン業界は静かな1月を迎えています。
 

ですが、冬本番のこの季節は熱い食材が溢れています!

 

例えば、黒トリュフ。ほぼヨーロッパでのみ産出されるこの食材は、冬に旬を迎えます。夏にはサマー・トリュフと呼ばれるトリュフがありますが、こちらは外側は黒いのですが切ってみると中は白いです。黒トリュフは断面まで黒く、その官能的な香りの強さには驚かされるばかりです。

 

また、冬の食材と言えば、ジビエGibierでしょう!ジビエとは野生の鳥獣類のことです。野生の動物ですから、狩りをして捕まえ、それを食肉として利用するわけです。猪、鹿、鴨、鳩などその種類は多岐にわたります。

 

野性味あふれるジビエの料理とは、やはり野趣あふれるワインと合わせたいものです。その候補の筆頭として上がってくるのがローヌRhône地方のワインです!

 

代表的な銘柄としまして、コート・ローティCôte RôtieエルミタージュHermitageシャトーヌフ・デュ・パプChâteauneuf-du-Papeなどが挙げられます。

 

今回はエルミタージュをご紹介させて頂きます。

 

エルミタージュのワインのもととなるぶどうの畑は、タン・レルミタージュTain-l’Hermitageの町の北側で、南を向いた急斜面に展開されています。

 

コート・ローティの畑同様見上げてしまうような急斜面です。ドイツのモーゼルMoselの極上畑など、世界でも極一部の神がかった畑だけが持つ特有のオーラを放っているようです。

 

トップの造り手として、ジャン・ルイ・シャーヴJean-Louis Chave、シャプティエChapoutier等が挙げられますが、恐らく最も有名なエルミタージュのワインはポール・ジャブレ・エネPaul Jaboulet Aîné社のラ・シャペルLa Chapelleでしょう。

 Paul Jaboulet Aine

その名の通り、エルミタージュの丘にある小さな礼拝堂に由来する名を持つこのキュヴェは、多くのラインナップを誇るポール・ジャブレ・エネの中でもフラッグ・シップのワインです。樹齢の高いシラーから、驚くほど低く抑えられた収穫量で凝縮したぶどうを摘み取ります。濃密で、凝縮感がありながらミネラルを湛えクラシックな構成のこのワインは、まさにエルミタージュを代表するワインのひとつです。

 

エルミタージュは赤ワインのイメージが強いと思うのですが、実際は少量ながら白ワインの生産も行われています。ラ・シャペルとして、1962年まで白ワインの生産が行われていたことをご存知の方は少ないと思いますが、ポール・ジャブレ・エネは2006年に、失われていたラ・シャペル白を再び造ることを決断しました。

 

今日では既に市場に流通しています。ローヌ地方の白ワインとしてはトップ・クラスの価格が付けられていますが、マルサンヌMarsannne 100%のこのワインは実に見事な仕上がりです。密度の高い果実味を持ち、ある程度しっかりした酸味を備えた構成は、ブルゴーニュの上質な白ワインを彷彿とさせます。

 

ラ・シャペルを含むポール・ジャブレ・エネの高級ワインは、ユニークな場所で熟成されています。本社を訪問した際、案内してくれたのは本社から車で数十分行ったところにある洞窟でした。紀元前121年にローマ人によって作られたというその洞窟は、美しく整えられており、神秘的な雰囲気を備えていました。今まで訪問させて頂いたカーヴの中で最も印象の強いもののひとつでした。

 

ジビエのシーズンもあと1ヵ月ほどで終わりを迎えます。今のうちに、ローヌ・ワインを片手に楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、2月9日の単発講座のテーマを「エルミタージュ」とし、ジャン・ルイ・シャーヴのエルミタージュ赤2007、白2009、ポール・ジャブレ・エネのラ・シャペル赤1999などの試飲も予定しております。約1時間の講座の後にはワイン持ち寄りの食事会も企画しております。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第118回 アルザス地方の話 ジョスメイエ編

2013が始まりました。

 

今年はどのような年にしていきますか?

 

今年は3月に世界ソムリエ・コンクール東京で開催されます。過去、1995年に東京で開催された時には日本代表の田崎真也氏が優勝され、世間がワインに注目しました。今回も、メディアが注目することでしょう。ワイン業界のイヴェントが一般的なニュースとして取り上げられるのは、毎年ボージョレ・ヌーヴォーの解禁くらいのものですから、3月のコンクールが日本のワイン業界全体を盛り上げてくれるかなと期待しております。

 

Clos Yは、2013年も秘蔵のワインをレストラン講座等で提供していきます。まずは2013年第1回目のレストラン講座、極上ワインと料理のマリアージュ(1月14日)で、シャトー・デュクリュ・ボーカイユChâteau Ducru Beaucaillou1966や、アルザス ゲヴュルツトラミネール ヴァンダンジュ・タルディヴ Alsace Gewurztraminer Vendanges Tardives1990 ジョスメイエJosmeyerなど...

 

今回は、アルザス地方の実力派の造り手、ジョスメイエをご紹介したいと思います。

 

この造り手は、アルザス地方の人気の観光町コルマールColmarから西に5kmほどのヴィンツェンハイム村に居を構えています。

 Josmeyer - コピー

この造り手の特徴として、畑を有機栽培で管理していることが挙げられます。1999年にはビオディナミ農法を取り入れました。醸造もナチュラルで、酵母は添加せず天然酵母によるアルコール発酵を行い、補糖(ぶどう果汁に糖分を加えてワインのアルコール度数を上げる技術)は行いません。

 

しっかりと果実味がありながらしなやかで優しさのある味わいが和食と合うのでしょうか、東洋的思想に通じる哲学があるのでしょうか、漢字で「蓮」と書かれたものなど、和風のラベルが貼られたワインもあります。

 

実際ワインは素晴らしい品質です。アルザスは、アルザス・グラン・クリュAlsace Grand Cruという特級畑が51ありますが(今後これらのグラン・クリュひとつひとつが独立したアペラシオンになる模様です。)、グラン・クリュを名乗るためには厳しい条件をクリアしなければなりません。良く知られているものとしては、アルザス高貴4品種しか(例外もありますが)グラン・クリュと名乗ることができません。ジョスメイエは、グラン・クリュの畑に高貴4品種以外の品種、例えばピノ・オーセロワPinot Auxerrois等を植えて、一般的なアルザスとして販売しています。これが素晴らしいのです!

 

特級畑に特級を名乗ることができない、言ってしまえば無名の品種を栽培し続け、高品質なワインを造る...かっこいいです!

 

このような造り手さんは応援したいと思いますが、私などが応援しなくてもその品質によって世界で高く評価されています。

 

世界には稀にこのような「裏グラン・クリュ」とでも言うべきワインが存在しています。このようなワインを見つけ出して、偉大な土地を思いつつ味わうのもワイン特有の楽しみですね!

 

 

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