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2012-11

ワイン・コラム 第114回 ブルゴーニュ地方の話 ドメーヌ・デュ・シャソルネイ編

時が止まったような、静かなサン・ロマン村Saint-Romainに居を構えるドメーヌ・ドゥ・シャソルネイDomaine de Chassorneyのワインは柔らかく、旨味が強く、ナチュラルで、強い抽出はありませんが密度があります。私はこの造り手のワインが個人的に大好きで、過去に飲んだワインは忘れがたい記憶を残しています。

St-Romain サン・ロマン村 

世界中のワインの造り手を訪問させて頂いて、忘れられないワインは数多ありますが、中には忘れがたい記憶を残す人物もいます。今は亡きディディエ・ダギュノー氏やジュラの巨匠ピエール・オヴェルノワ氏、ペゴーのポール・フェロー氏...シャソルネイのフレデリック・コサールさんは、そのワイン同様に(?!)インパクトの強い人物でした。

 

ドメーヌを訪問させて頂いて、ひと通り(醸造設備、熟成庫等)を見せて頂いて、一般的な訪問の流れの通り最後にワインの試飲をさせて頂きます。私の質問にはまじめに答えて頂いておりましたが、試飲の際には「まあ飲んでいけ」というような、試飲というよりこれから飲み会が始まってしまうような雰囲気です。初対面でしたが、旧知の友人のように接してくれます。

 

おいしいワインですし、飲みたいのですが、私は複数のワインを同時に試飲する場合はワインを飲み込まずに、口に含んだワインを吐き出すようにしています。もったいないようなことですが、世界中のほとんどのソムリエやワイン醸造家はそのようにしています(一度口に含んだワインを吐き出す用の専門の容器もあります。)。まして私は車で来ていますから、ワインは飲みたいですがアルコールを摂取するわけにはいきません。友好的なコサールさんのありがたい申し出を断るのは大変でしたが、最終的にはほとんど飲まずに切りぬけました。コサールさんは途中合流した友人と楽しそうに話しながらご機嫌です。結局予定時間を大幅にオーヴァーして暗い道を帰ることになりました...

 

まあコサールさんの好人物っぷりは置いておいても、この造り手のワインは実に素晴らしいものです。アルコール発酵には天然酵母を用い、SO2を添加しない、フィルターをかけずに瓶詰めをする、などいろいろ醸造所でのこだわりもありますが、やはり高品質ワインの鍵は畑仕事にあると思います。

 

シャソルネイのワインは世界にその名を轟かせるシャンベルタンChambertinやモンラシェMontrachetではなく、知名度の低いサン・ロマンやオークセイ・デュレスAuxey-Duressesなどが主力商品です。このような、いわゆる世界トップの極上畑ではない畑からこれだけ素晴らしいワインを造るというのは尊敬に値すると思います。

 

ドメーヌの規模が大きくないため生産本数は多くなく、人気の造り手なので入手は簡単ではないかもしれませんが、試す価値あり、です。白も赤も見事な品質で、楽しませてくれると思います!

St-Romain2

St-Romain3 

Clos Yは、12月2日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、上質なブルゴーニュ・ワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。シャソルネイのサン・ロマン・コンブ・バザン2006とオークセイ・デュレス・レ・クレ2006の同時比較も行います!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

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世界の銘醸地を巡る!2013 受講を受け付けております。

レストラン講座とは、レストランを会場に料理とワインを合わせて楽しむ講座です。ワインの勉強ができて、料理とのマリアージュも体感できる、一石二鳥の講座です!
 
この講座は、テーマの産地の優良ワインと、そのワインに合わせてフランス料理店に特別に作って頂くフル・コースのフランス料理(冷前菜、温前菜、主菜、デザート、コーヒー)をお楽しみ頂ける講座です。毎月、世界の銘醸地を旅するように楽しい時間をお過ごし頂きます。
 
日時&テーマ
11月20日(水曜日) テーマ フランス ブルゴーニュ地方

12月18日(水曜日) テーマ 半年に一度の豪華版 ※ワインも料理も豪華版です!

全会20時開始です

 

場所 

オザミ・サンカントヌフ (池袋 サンシャイン60ビルの59階にあります。)

 

受講料 

いずれか1回、単発でお申し込みの場合 10,500円(12月の豪華版は15,750円) 

料金は全て税込みです。

 

最大定員 

7名

 

詳細

11月テーマ フランス ブルゴーニュ地方

ブルゴーニュ...。ワイン愛好家の心をこれほど強くひきつけるワイン産地は他にあまりないのではないでしょうか。おいしい食材が充実する晩秋の日本で、希少な銘柄を含む上質なブルゴーニュのワインをお楽しみいただきます。

アミューズ・ブーシュと クレマン・ド・ブルゴーニュ ブラン・ド・ブラン エクストラ・ブリュット N.V. アンリ・ボワイヨ

冷前菜と サン・ヴェラン 2009 ドミニク・ラフォン もはや入手不可?!希少なドミニク・ラフォンのサン・ヴェラン!

温前菜と ボージョレ・ヴィラージュ・ロゼ 2006 ドメーヌ・ジョエル・ロシェット ボージョレの上質ロゼ。決して侮れないワイン。

肉料理と ボーヌ・プルミエ・クリュ 赤 グレーヴ 1999 ルイ・ジャド 偉大な1999!優良生産者による、素晴らしい畑のワインです。

デザートと ヴァン・ド・ターブル アリ・ボワ・ボワ・エ・レ・40 ビュヴェー N.V. アニェス・パケ・エ・ダヴィド・モレ 甘いタイプのスパークリング・ワインです。

 

12月テーマ 半年に一度の豪華版

さあ2013年最後の月は、半年に一度の豪華版です!ワインも、食事も豪華版。いろいろな産地のワインを、それに合わせた料理とお楽しみください。赤ワインは、水平の飲み比べも体験していただきます。

アミューズ・ブーシュと シャンパーニュ グラン・クリュ ブリュット キュヴェ・トラディション N.V. ピエルソン・キュヴリエ やはりシャンパーニュもグラン・クリュは格別。

冷前菜と プティ・シャブリ 2009 ルネ・エ・ヴァンサン・ドーヴィサ 偉大な作り手が登場!プティ・シャブリも上質です。

魚料理と ヴァン・ド・ペイ・デ・コート・カタラン グルナッシュ・ブラン ヴィエイユ・ヴィーニュ 2005 ドメーヌ・デュ・クロ・デ・フェ 豊かな、深みのある白ワインです。

肉料理と マーガレット・リヴァー カベルネ・ソーヴィニヨン メルロ 2005 ピエロ 西オーストラリア州、マーガレット・リヴァー屈指の生産者!

フロマージュと マーガレット・リヴァー カベルネ・ソーヴィニヨン メルロ リザーヴ 2005 ピエロ 上記ワインの上級キュヴェです。

デザートと ラザーグレン マウント・カーメル N.V. チェンバーズ・ローズウッド・ヴィンヤーズ とろりとした、味わいの幅が広い甘口ワイン。一度飲んでいただくと、常備したくなる?!ワインです。

 

オザミ・サンカントヌフ杉原シェフによる、ワインに合わせた特別料理にもご期待ください!

DSC00854

DSC00855 冬はジビエも!

DSC01090 極上のパエリア!(スペイン編)

DSC01036 キャラメリゼした洋梨。  

受講ご希望の方、使用予定のワイン、料理などについて気になる方はメールでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

 

※以上の予定ワインは変更になる場合があります。また、予期せぬワインの劣化(ブショネなど)が起こり得ることを予めご了承ください。

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ワイン・コラム 第113回 シャンパーニュ地方の話 ボランジェ編

ボージョレ・ヌーヴォーの解禁も終え、2012年も残すところあと1ヵ月ほどとなりました。

 

寒くなってまいりましたが、ワイン業界は熱い季節を迎えております!

 

年末は特にシャンパーニュChampagneの需要が高まります。やはり、クリスマスの乾杯にシャンパーニュは欠かせないですよね。

 

しかし世界のスパークリング・ワインの中でも特に重厚で熟成感の強いシャンパーニュは、乾杯用だけにとどめておくのはあまりにもったいなさすぎます。上質なシャンパーニュはフランス料理でも和食でも、料理と共に楽しむことにより、さらにその魅力を高めることができると思います。

 

今回は、上質なシャンパーニュ・メゾンの中でも常にトップにおかれるボランジェBollingerをご紹介いたします。

 

ボランジェはシャンパーニュ地方のピノ・ノワールの聖地とも言えるグラン・クリュGrand CruアイAÿに居を構えています。

Bollinger

樽熟成をしたワインを使って造られるシャンパーニュは重厚で、複雑な風味を備えています。

 

ボランジェのシャンパーニュの高品質の秘密はたくさんあります。実際、「ボランジェ10の誓いLes 10 Engagements Bollinger」という厳格な自社規定を掲げ、変わらぬ高品質を保っています。中でも私が注目するのは、

1、  自社畑の比率の高さ

2、  樽を使っての一次発酵

3、マグナム・ボトル、コルク栓でのリザーヴ・ワインの保管

です。

 

まず1、自社畑の比率の高さですが、ぶどう栽培農家からぶどうや果汁を買い、それからワインを造ることが多いシャンパーニュの大手メゾンの中で、必要量の約2/3のぶどうをボランジェは自社畑でまかなっています。一般的な大手メゾンの自社畑のぶどうが占める割合は全体の約11%ということですから、相当に高い比率です。ボランジェの高品質なシャンパーニュに値する素晴らしいぶどうを厳しい基準の下自社で栽培しているということです。そして、ピノ・ノワールに比率が高いこともボランジェの大きな特徴の一つです。このことにより、骨格があり、華やかというより質実剛健な力強いシャンパーニュが生まれます。

 

2、樽を使っての一次発酵ですが、ここ10年ほどで樽を使用するシャンパーニュ・メゾンが増えてきており、今となってはそれほど珍しく感じられないかもしれませんが、やはり今でもシャンパーニュ造りに樽を使用するメゾンは少数派です。中でもボランジェは樽に強いこだわりを持ち、社内に樽工場を設けているほどです。

Bollinger 樽工場 ボランジェ社内の樽工場 

樽を使ってアルコール発酵を行うことにより、緩やかな酸素との接触が進み、ワインは複雑味を有し、長期の熟成に耐える構造になります。

 

3マグナム・ボトル、コルク栓でのリザーヴ・ワインの保管に至ってはこだわりの極致と言えるでしょう。リザーヴ・ワイン(シャンパーニュは一般的にはヴィンテージがラベルに記されることが無いワインです。それは、複数の収穫年のワインをブレンドしてひとつのシャンパーニュを造っているからです。ブレンド用にストックしてある過去の年のワインのことをリザーヴ・ワインと呼びます。)は複雑な風味を持つ重厚なタイプのシャンパーニュ造りには命とも言える重要なものですが、大手メゾンのその量は膨大なものになります。一般的にはステンレス・タンクなどで保管されていますが、これをマグナム・ボトルで、しかもコルク栓をして置いておくというのです。理由は、マグナム・ボトルはゆっくりとした理想的な熟成が期待できる容器だということ。そして栓として王冠ではなくコルクを用いるのはコルクは穏やかに瓶内に酸素を供給し、理想的な熟成環境を作る、また王冠は酸化が早く進んでしまうということです。品質のためにこのようなこだわりを実行しているわけですが、これは大変なことです。ひとつのリザーヴ・ワインを例えばひとつのステンレス・タンクで保存しておくことは比較的容易ですが、僅か容量1.5リットルの瓶で長い間ワインを保存するにはスペースも必要ですし、瓶詰め、抜栓という仕事が増えます。さらにコルクを使用するということはブショネの可能性も出てくるわけですから、これをチェックする必要もあります。いやー、本当に大変です!

 

他にもドザージュは控えめにする、ですとかルミュアージュについて、デゴルジュマンなどもいろいろあるのですが書ききれません!

 

どうしても紹介したいのはこのメゾンの特別なキュヴェ、ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズVieilles Vignes Françaisesです。ワイン造りに適したぶどう品種ヴィティス・ヴィニフェラVitis Viniferaは世界中に生息しているフィロキセラという害虫に抵抗力が無く、やられると死んでしまいます。その対策のため、耐性のあるアメリカ系のぶどうの台木に接ぎ木をして一般的に栽培されています。ところが、ボランジェはフィロキセラが生息できないという砂質の土壌に接ぎ木無しの自根でピノ・ノワールを植えて、そのぶどうからこの特別キュヴェを造っています。畑は本社前のアイ村にありますが、少し離れたブジーBouzy村(ここもグラン・クリュです。)にもあります。

Bollinger VVF Aÿ本社前のV.V.F.の畑

Bollinger VVF2 砂地に自根で植えられている

私はボランジェを2005年に訪問させていただいたのですが、何と2004年にブジー村のヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ用の畑がフィロキセラにやられたと伺いました。やられた木は引き抜いてしまったとのことです。

 

リスクを負いながらも特別なワインを造る。職人気質のこのメゾンのワインは単なる商品ではなく、1本1本に魂の入った芸術品のようにも思えます。

 

Clos Yは、12月8日(土曜日)の12時から、「偉大なワインを飲む!シャンパーニュ・ロゼ」をテーマに単発講座を行います。ルイ・ロデレールのクリスタル・ロゼ、ボランジェのグランド・アネ・ロゼを含む4種類のシャンパーニュ・ロゼの試飲を含んでおります。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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vinclosy@aol.com

ワインコラム 第112回 ローヌ地方の話 ル・サン・デ・カイユー編

食欲の秋、と言いますが、確かにこの季節はおいしいものがたくさん出てきますね。
 
野山にいる鳥獣を狩って得た肉、ジビエもレストランのメニューを賑わせています。

ジビエと聞くと、私はローヌRhône地方のワインと合わせたくなります。
 
一言でローヌと言っても、シラーSyrahやヴィオニエViognierなど主に単一品種でワインを造るローヌ北部複数品種をブレンドしてワインを造ることが多いローヌ南部に分かれます。北部と南部は同じ「ローヌ地方」として括るのはどうかと思うほどワインのスタイルが異なります。

 

今回はローヌ南部のヴァケラスVacqueyrasというアペラシオンに注目してみたいと思います。

Vaqueyras 

ローヌ南部で代表的なアペラシオンと言えばまずシャトーヌフ・デュ・パプChâteauneuf-du-Papeが挙げられます。グルナッシュGrenacheを主体とした力強い赤ワインが一般的に知られています。それに迫る品質のアペラシオンとしてジゴンダスGigondasがあります。ヴァケラスはジゴンダスから4kmほどしか離れておらず、ワインも似たスタイルとなります。

 

ヴァケラスでトップの生産者としてドメーヌ・ル・サン・デ・カイユーDomaine Le Sang des Caillouxが挙げられます。「小石たちの血」という風変わりな名前を持つこのドメーヌを、私は2004年の12月に訪問させて頂きました。この辺りは山の麓ののどかな田舎なのですが、突然現れた赤い色の建物に驚かされました!

Vacqueyras 

収量を低く(22~25hl/ha)抑え、天然酵母によるアルコール発酵、無ろ過で瓶詰めというこだわりを持つ当主に案内して頂きました。内部はきれいに保たれていました。

 

お隣のジゴンダスと異なり、ヴァケラスは白ワインの生産も認められています。ごく少量しか生産されていませんが、この白がびっくりするほど素晴らしいのです!もちろん、赤も凄いです。当主の娘さんの名前が付けられていて、家族、そしてワインに対する愛情が感じられます。

 

この造り手のワインもそうなのですが、南ローヌの赤ワインは是非熟成させて飲みたいものです。一般的なコート・デュ・ローヌCôtes du Rhôneというアペラシオンのものは若くても楽しめますが、シャトーヌフ・デュ・パプなどのクリュに関しては、若い状態で飲んでしまっては強すぎて素直においしいと思えず、ワインの本質も引きだされておらず、とてももったいないと思います。

 

良い造り手の、きれいに熟成した南ローヌのワインは、それは素晴らしいものです。ジビエと合わせるもよし、単体でもじっくりと味わうことができます。

 

これからの季節、まさに熟成南ローヌの出番です。ヴァケラスのようにあまり知名度が高くないワインは熟成したものでも比較的お手頃です。試してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、11月21日のレストラン講座のテーマを「ローヌ地方」とし、ローヌ地方の上質なワインをそれに合わせたフランス料理と共にお楽しみ頂きます。ドメーヌ・ル・サン・デ・カイユーのヴァケラス赤2000も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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