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ワイン・コラム 第113回 シャンパーニュ地方の話 ボランジェ編

ボージョレ・ヌーヴォーの解禁も終え、2012年も残すところあと1ヵ月ほどとなりました。

 

寒くなってまいりましたが、ワイン業界は熱い季節を迎えております!

 

年末は特にシャンパーニュChampagneの需要が高まります。やはり、クリスマスの乾杯にシャンパーニュは欠かせないですよね。

 

しかし世界のスパークリング・ワインの中でも特に重厚で熟成感の強いシャンパーニュは、乾杯用だけにとどめておくのはあまりにもったいなさすぎます。上質なシャンパーニュはフランス料理でも和食でも、料理と共に楽しむことにより、さらにその魅力を高めることができると思います。

 

今回は、上質なシャンパーニュ・メゾンの中でも常にトップにおかれるボランジェBollingerをご紹介いたします。

 

ボランジェはシャンパーニュ地方のピノ・ノワールの聖地とも言えるグラン・クリュGrand CruアイAÿに居を構えています。

Bollinger

樽熟成をしたワインを使って造られるシャンパーニュは重厚で、複雑な風味を備えています。

 

ボランジェのシャンパーニュの高品質の秘密はたくさんあります。実際、「ボランジェ10の誓いLes 10 Engagements Bollinger」という厳格な自社規定を掲げ、変わらぬ高品質を保っています。中でも私が注目するのは、

1、  自社畑の比率の高さ

2、  樽を使っての一次発酵

3、マグナム・ボトル、コルク栓でのリザーヴ・ワインの保管

です。

 

まず1、自社畑の比率の高さですが、ぶどう栽培農家からぶどうや果汁を買い、それからワインを造ることが多いシャンパーニュの大手メゾンの中で、必要量の約2/3のぶどうをボランジェは自社畑でまかなっています。一般的な大手メゾンの自社畑のぶどうが占める割合は全体の約11%ということですから、相当に高い比率です。ボランジェの高品質なシャンパーニュに値する素晴らしいぶどうを厳しい基準の下自社で栽培しているということです。そして、ピノ・ノワールに比率が高いこともボランジェの大きな特徴の一つです。このことにより、骨格があり、華やかというより質実剛健な力強いシャンパーニュが生まれます。

 

2、樽を使っての一次発酵ですが、ここ10年ほどで樽を使用するシャンパーニュ・メゾンが増えてきており、今となってはそれほど珍しく感じられないかもしれませんが、やはり今でもシャンパーニュ造りに樽を使用するメゾンは少数派です。中でもボランジェは樽に強いこだわりを持ち、社内に樽工場を設けているほどです。

Bollinger 樽工場 ボランジェ社内の樽工場 

樽を使ってアルコール発酵を行うことにより、緩やかな酸素との接触が進み、ワインは複雑味を有し、長期の熟成に耐える構造になります。

 

3マグナム・ボトル、コルク栓でのリザーヴ・ワインの保管に至ってはこだわりの極致と言えるでしょう。リザーヴ・ワイン(シャンパーニュは一般的にはヴィンテージがラベルに記されることが無いワインです。それは、複数の収穫年のワインをブレンドしてひとつのシャンパーニュを造っているからです。ブレンド用にストックしてある過去の年のワインのことをリザーヴ・ワインと呼びます。)は複雑な風味を持つ重厚なタイプのシャンパーニュ造りには命とも言える重要なものですが、大手メゾンのその量は膨大なものになります。一般的にはステンレス・タンクなどで保管されていますが、これをマグナム・ボトルで、しかもコルク栓をして置いておくというのです。理由は、マグナム・ボトルはゆっくりとした理想的な熟成が期待できる容器だということ。そして栓として王冠ではなくコルクを用いるのはコルクは穏やかに瓶内に酸素を供給し、理想的な熟成環境を作る、また王冠は酸化が早く進んでしまうということです。品質のためにこのようなこだわりを実行しているわけですが、これは大変なことです。ひとつのリザーヴ・ワインを例えばひとつのステンレス・タンクで保存しておくことは比較的容易ですが、僅か容量1.5リットルの瓶で長い間ワインを保存するにはスペースも必要ですし、瓶詰め、抜栓という仕事が増えます。さらにコルクを使用するということはブショネの可能性も出てくるわけですから、これをチェックする必要もあります。いやー、本当に大変です!

 

他にもドザージュは控えめにする、ですとかルミュアージュについて、デゴルジュマンなどもいろいろあるのですが書ききれません!

 

どうしても紹介したいのはこのメゾンの特別なキュヴェ、ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズVieilles Vignes Françaisesです。ワイン造りに適したぶどう品種ヴィティス・ヴィニフェラVitis Viniferaは世界中に生息しているフィロキセラという害虫に抵抗力が無く、やられると死んでしまいます。その対策のため、耐性のあるアメリカ系のぶどうの台木に接ぎ木をして一般的に栽培されています。ところが、ボランジェはフィロキセラが生息できないという砂質の土壌に接ぎ木無しの自根でピノ・ノワールを植えて、そのぶどうからこの特別キュヴェを造っています。畑は本社前のアイ村にありますが、少し離れたブジーBouzy村(ここもグラン・クリュです。)にもあります。

Bollinger VVF Aÿ本社前のV.V.F.の畑

Bollinger VVF2 砂地に自根で植えられている

私はボランジェを2005年に訪問させていただいたのですが、何と2004年にブジー村のヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ用の畑がフィロキセラにやられたと伺いました。やられた木は引き抜いてしまったとのことです。

 

リスクを負いながらも特別なワインを造る。職人気質のこのメゾンのワインは単なる商品ではなく、1本1本に魂の入った芸術品のようにも思えます。

 

Clos Yは、12月8日(土曜日)の12時から、「偉大なワインを飲む!シャンパーニュ・ロゼ」をテーマに単発講座を行います。ルイ・ロデレールのクリスタル・ロゼ、ボランジェのグランド・アネ・ロゼを含む4種類のシャンパーニュ・ロゼの試飲を含んでおります。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

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