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ワインコラム 第3回 フランス南西部

手に入れたばかりの車でソーテルヌを訪れた翌日、旅支度を整え、私はスペインに向かい出発しました。

 

89日。6時過ぎに出発したのですが、まだ日が昇らず、暗い状態です。フランスの夏の太陽は、朝は遅いですが、日中はさんさんと地表を照らし、夜22時くらいでもまだ明るさが残っているほど、光を与えてくれます。日本のように19時ころ夕食を取ると、明るい中で食事を始め、食後も明るいまま、なんてことになります。

 

さて、ボルドーからスペインを目指す場合、大西洋の海沿いに、海を見ながら国境を超えるのが一般的だと思いますが、私は途中フランス南西地方のワイン産地に寄り道しました。

 

フランス南西部は、知名度こそないものの素晴らしく上質なワインが「隠れて」いる、非常に面白い産地です。私はこの土地のワインが大好きです。

 

まず最初に向かったのは、マディランという産地です。

 

しかし、ここに着くまで大変でした...なにせフランスでの運転経験が乏しい上に、未知の道を行くわけです。車にも慣れていません。ウインカーをだそうとしてワイパーを動かしたことが何度あったことか(笑)!その程度なら良いのですが、一度死にそうな思いをしたことがあります。

 

フランスの国道は、思いもよらぬものが走っています。

 

ボートを積んだ車や、動物(馬など)を積んだトラックのほか、何に使うのか巨大な石柱や、場合によっては家(!)を載せた大型トラックなどが見られます。これらのトラックはしばしば小さな先導車とペアになっているのですが、かなりスピードを抑えて走行しています。追い越し車線が無い時にこのような車に出会ってしまうと大変です。対向車線からこのような巨大トラックがくると、端によけないとぶつかりそうです。同じ車線にこのようなトラックがいると、遅々として進みません。ブロックされた気の短いフランス人ドライバーは追い越そう、追い越そうといらいらしているのが後ろから見ていてよくわかります。私はまだ買ったばかりの車にも、フランスでの運転にも慣れていなかったのでゆっくり運転していたのですが、このような状況が2度、3度と続くと、さすがに追い越したくなりました。

 

目の前にトラックがいます。対向車線を確認すると、長い一本道に対向車は見られません。緊張しつつ、いくぞ!と対向車線に入りスピードを上げます。中古のフィアットは徐々にスピードを上げていきます。

 

...追い越せません。

 

トラックが長いんです!!本当に、日本の常識が通用しない長さです!

 

ようやく追い越せそうになったとき、さらに同じ型のトラックが続いているではありませんか!スピードも乗ってきているし、一気に長いトラックを2台追い越すことにしました。

 

...追い越せません。

 

どれだけの距離を走ったのでしょうか?500m800mかもしれません。もっとでしょうか。すると、対向車が現れました!アクセルを踏めども踏めどもトラックをなかなか抜くことができません。対向車との距離は縮まるばかり。頭の中に、ブレーキを踏んで、またもとのトラックの後ろに戻ろうか、という選択肢も浮かんだのですが、やはりトラックを追い抜くことにしました。結果、対向車とぶつかる寸前?!でクラクションの中、トラックの追い抜きをすることができました。5年前の話ですが、今こうして書いていても手に汗握る経験でした。

 

それ以来、安全運転を心がけています!

 

さて、脱線話が長くなってしまいました。無事に生きて(笑)たどり着いたマディランは、地元のtannat (タナ)という黒ぶどう品種から力強い赤ワインを造っている産地です。ワインのほかに、世界3大珍味の一つ、フォワ・グラの産地でもあり、地元のレストランではフォワ・グラを摘出した鴨の肉が供され、マディランと素晴らしい相性を見せています。

 

私が訪問したのは、かのトム・クルーズ氏が自家用ジェットでワインを買いに来ると言われる(本当かどうかわかりませんが)アラン・ブリュモン氏のドメーヌです。ここのワインは渋みの元となるタンニンがたっぷりとあり、若いうちはやや粗い印象を受けるほどなのですが、熟成するに従い洗練さを増していきます。飲みごろになると、他のどんな高級ワインにも見つけることができない独特の高貴さを備えてきます。

 

実際に畑を案内していただき、ぶどうの樹を観察しました。ボルドーから少し南に来ただけなのに、ぶどうの樹の仕立て方が違います。

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ぶどう品種が違うということももちろんあるのでしょうが、やはりテロワール(=ぶどう畑と、それを取り巻く環境)が違うのでしょうね。その土地、気候に合ったぶどう品種を植え、最適な栽培をする。シンプルですが、これが物事の本質ですね。

 

続いて醸造所を見せていただき、テイスティングもさせていただきました。畑も、醸造設備もシンプルながら、一つ一つの作業を丁寧に行うことが偉大なワインへとつながるのだと実感しました。

 

いろいろ貴重な経験をさせていただいた一日でした(笑)!

 

次回は、南西地方第2話です。

 

 

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