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ワイン・コラム 第159回 チリの話 コノ・スル編

チリのワイン

そう聞いて、どのようなイメージが浮かぶでしょうか?カベルネ・ソーヴィニヨン、赤ワイン、安い、濃い...

恐らく「エレガント」や「(価格が)高い」というイメージはほとんど無いことでしょう。

一般的にはその通りだと思います。今回は、コノ・スルCono Surをご紹介いたします。日本でも人気の生産者ですね。ここのワインは特に「安い!」というイメージがあると思います。私はもう何年も前に、コノ・スルの日本で3桁の値段のワインを開けてみて、これはどうしたものかと悪い意味で驚かされた経験があります。

私は2013年にコノ・スルを訪問させて頂きました。果たして今日現在、コノ・スルは、そしてチリのワインは世界的にどの程度の位置にいるのか、確かめてみましょう。

コノ・スルが居を構えるのはチリの首都サンティアゴの南、ワイン産地としてはコルチャグア・ヴァレーColchagua Valleyに位置しています。

その歴史は1993年からとまだ新しいワイナリーですが、既に世界的に高い評価を得ています。

安く、質もそれなりだった経験のあるこのワイナリーのワイン。しかし比較的最近発売されたスパークリング・ワインの品質にとても良い印象を持っていましたので、現在はどうなのだろうと不安と期待を交えての訪問でした。

到着は夜。ゲスト・ハウスに案内され、コノ・スルのワインとバーベキューでもてなしてくださいました。
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夜空は月と星が美しかったです。
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広大な敷地には、畑と大きな醸造所があります。
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訪問させて頂いたのはちょうど収穫&醸造の時。
DSC01392丁寧な選果は上質ワイン造りに必須の工程です。

さて、肝心なテイスティングですが、シングル・ヴィンヤードSingle Vineyard20バレルズ20Barrelsシリーズを中心に行われました。

結果は驚きの連続でした。いずれも高品質!これが日本で1,000円台後半から2,000円台前半で売られているのを考えると、素晴らしく充実した内容です。

そしてコノ・スルの虎の子オシオOcio。チリで最高の、そして世界的にもトップ・クラスの、エレガントさを備えた、完成度の高いピノ・ノワールです。

訪問を終え感じたことは、この生産者のワインは「安い」のではなく「コスト・パフォーマンスが高い」ということです。品質に合わない低価格だと思います。そしてリースリングやピノ・ノワールはもちろん、カベルネ・ソーヴィニヨンなどにも「エレガントさ」が感じられました。

いわゆる新世界で「濃いだけ」のワインを造ることは難しいことではないのかもしれません。しかしそこにエレガントさを持たせるのはとても大変なことです。

コノ・スル1社を見ただけでも、チリ・ワインが世界的に高い位置づけにあることがわかります。

特にワインが好きという方々、今一度チリのワインを見直してみてはいかがでしょうか?

Clos Yは8月24日の「偉大なワインを飲む!」単発講座のテーマをピノ・ノワールとし、同品種による世界各国のテロワールの表現に注目してみたいと思っております。コノ・スルのオシオも登場いたします!ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

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ワイン・コラム 第158回 ブルゴーニュ地方の話 ブルノ・クレール編

マルサネイMarsannay。コート・ドール最北のアペラシオンです。マルサネイ・ラ・コートMarsannay-La-Côteと、その北隣り、そして南隣りの村の一部の畑がマルサネイの名を名乗ることができるワインを生みだします。

軽いタイプの赤、白が造られますが、近年では優良生産者はなかなかしっかりとした赤白を生みだしていて、注目に値します。

この村のワインと言えば、赤も白も良いのですが、何と言ってもロゼRoséが有名です。100%ピノ・ノワールで造られる、淡い色調のマルサネイ・ロゼは、ピノ・ノワールのワインであることをしっかりと感じさせてくれる、とてもエレガントなワインです。エレガントなロゼ・ワインとしては、フランスの中でもトップ・クラスの品質であると言えます。

そのマルサネイ・ロゼを生みだしたのが、今回ご紹介するブルノ・クレールBruno Clairの祖父に当たるジョゼフ・クレール氏です。ブルノ氏は偉大な祖父を持ちながらも、相続問題で苦労し、自分の名のドメーヌを立ち上げたのは1979年のことでした。

当時は4つの村に僅かな畑を持つのみでしたが、今日ではグラン・クリュを含む22のアペラシオンを手掛ける、重要なドメーヌに成長しました。

私がこのドメーヌを訪問したのは2013年の2月末。雪の降る寒い日でした。
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試飲は地下のカーヴで行われました。
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温度は年間を通じてほぼ一定に保たれています。やはりシャンベルタン・クロ・ド・ベズなどグラン・クリュが素晴らしいのはもちろんですが、マルサネイ・ラ・コート村に居を構える造り手ですので、マルサネイのワインも大変興味深いものです。

マルサネイにはプルミエ・クリュもグラン・クリュもありませんが、ブルノ・クレールは畑の個性を尊重し、ワインを造り分けています。

1級畑に昇格するかもしれない可能性を秘めたレ・ロンジュロワLes Longeroies、しっかりした果実味、細かいタンニンを備えるレ・ヴォードネル、Les Vaudenelles、そして凝縮感が強く、力強いワインが生まれるレ・グラス・テットLes Grasses Têtes。

マルサネイのワインに端的に現れていますが、ブルノ・クレールのワインは現代的なきれいな造りで、過度の抽出など無く、気品のあるスタイルのように感じられます。

「苦労人」ブルノ・クレール氏が醸すワインには、どのアペラシオンでもそのテロワールがきれいに反映されていると思います。

Clos Yは、8月16日の夏のワイン会でお楽しみ頂くワインの中に、ブルノ・クレールのマルサネイ・ロゼ2010も含めております。ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第157回 ロワール地方の話 トゥール・グリーズ編

強く印象に残っているスパークリング・ワインの中で、初めて口にしたクリュッグKrugやシュラムスバーグのJ シュラムJ. Schram、ジュリアン・メイエJulien Meyerのブリュット・ゼロなどに並び、アンジュAnjouのワインがあります。

A.O.C.アンジュのスパークリング・ワインなどそれ以来見たことがありませんが、それは2004年、ボルドーに住んでいる時に、近くの大きなスーパーの片隅で見つけた、確か4ユーロほどのものでした。樽熟成をしたのかと思うほどロースト香が強く、印象はまるでクリュッグ。その時の驚きは今も色褪せていません。
Anjou - コピー

そんな規格外のワインを生みだす可能性を秘めたロワール地方。今回はトゥール・グリーズTour Griseという生産者をご紹介いたします。

居を構えるのはル・ピュイ・ノートル・ダムLe Puy Notre Dame。アペラシオンはソーミュールSaumurです。
Saumur 地図 Saumur付近地図。

このアペラシオンで注目すべきトップ生産者のひとりです。日本での知名度は依然高くありませんが、フランスでは高い評価を得ています。

私がこのドメーヌを訪問させて頂いたのは2005年の3月でした。静かな村を、他所者のように感じながら行きましたが、出迎えてくださった当主はホスピタリティにあふれ、少し離れた畑やカーヴなど丁寧に案内してくださいました。

畑はこの通り。
Tour Grise 樹

土壌は石灰質が強く、ワインにはミネラル感が強く現れます。

この生産者で特筆すべき点は、栽培にビオディナミを採用しているなどありますが、長期熟成を経てからワインを出荷するというところがあります。

若いヴィンテージもあるものの、10年以上熟成したものが大半を占めています。世界的に見ても稀な生産者と言えるでしょう。実際、今日本で流通しているソーミュール・ブリュットSaumur Brutは2002年という有様です。それがお手頃な価格なのですから、感心させられます。知っておくべき生産者ですね。

ドメーヌでカベルネ・フランの赤ワインを購入し、当時働いていたボルドーのビストロ・デュ・ソムリエBistro du Sommelierのスタッフとお昼の賄いの時にテイスティングしました。

ロワールのカベルネ・フランは日本ではあまり受けが良くないですが、トゥール・グリーズのカベルネ・フランはビストロ・デュ・ソムリエで好評でした。飲み手の嗜好の違いか、トゥール・グリーズの品質が高かったのか...

今考えるとどちらも当てはまると思います。

トゥール・グリーズ、未経験の方は一度経験して頂く価値があると思います。

Clos Yは7月16日のレストラン講座のテーマを「ロワール」とし、上質なロワールのワインをそれに合わせた特別料理とお楽しみ頂きます。幕開けはトゥール・グリーズのスパークリング・ワイン2002です!ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第156回 イタリアの話 リブランディ編

イタリア南部、カラブリア州Calabria。イタリアの国土をブーツに見立てた場合、つま先の部分に当たります。

この州でも上質なワインが造られておりますが、代表的な銘柄は何と言ってもチロCiróでしょう。

チロは白、ロゼ、赤の生産が認められています。白はグレコGreco、ロゼと赤はガリオッポGaglioppoから造られる、いずれも果実感のいきいきとしたフルーティなワインです。この土地では唐辛子を使った料理が食べられていますが、辛みの効いた料理と合うということで、韓国料理との相性の良さも指摘されています。

そのチロの代表的生産者であるリブランディLibrandiをご紹介いたします。

私がこのワイナリーを訪問したのは2008年の秋。北からイオニア海の海岸沿いを南下したのですが、とても美しい風景が広がっていました。
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リブランディはチロ・マリーナという海に面した町の高台に位置しています。

この町の海岸のすぐそばに南北に道が通っていて、家々が立ち並んでいます。ホテルもあり、夏は観光客で賑わうのでしょうが訪問は10月上旬。ちょうど収穫の時期でした。

周辺にあるぶどう畑には収穫直前のぶどうがあり、ワイナリーには収穫されたぶどうが次々に運び込まれて来ていました。
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Librandi Galioppo

ステンレス製の発酵容器の他に、小さな木製の発酵容器もあり、高品質ワインへのこだわりが感じられます。
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特筆すべき点は、上質なグレコ、ガリオッポはもちろん、他にあまり他所では見かけない古代品種を保護し、そのぶどうから素晴らしいワインを生みだしていることです。例えばマリオッコMagliocco(黒ぶどう品種。)、マントニコMantonico(白ぶどう品種)など。

フレンチ・オークの樽発酵、樽熟成を施したマントニコの出来は特筆ものです!

今年の夏は、美しいイオニア海を思い浮かべながら、チロを飲んでみてはいかがでしょうか。唐辛子料理との相性を検証してみるのも面白いかもしれませんね!
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Clos Yは、7月13日の極上ワインと料理のマリアージュ講座にリブランディの古代品種キュヴェEfesoを取り入れています。ワイン単体でも素晴らしいですが、料理と合わせてお楽しみ頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第155回 ブルゴーニュ地方の話 クリオ・バタール・モンラシェ編

数ある世界のワイン銘醸地の中でも、特に人気の高いブルゴーニュ地方。

この土地では畑ひとつひとつに名前が付けられ、さらに特級Grand Cru、1級Premier Cruなど格付けもされています。

最上級の格である特級の畑グラン・クリュからは素晴らしいワインが生まれ、愛好家の垂涎の的となっています。

今回は、それらブルゴーニュ地方のグラン・クリュの中でも面積が小さく、希少なクリオ・バタール・モンラシェCriots-Bâtard-Montrachetをご紹介いたします。
Criots-Batard-Montrachet

ブルゴーニュ地方で、白ワインを産するグラン・クリュはミュジニーMusignyとコルトンCorton系、そしてモンラシェMontrachet系と3ヵ所しかありません。

中でも何も付かないモンラシェ(いわゆるル・モンラシェLe Montrachet)は世界中の辛口白ワインの頂点に立つワインと言って差し支えないでしょう。

モンラシェ系と前述しましたが、その偉大なモンラシェの周りに、「モンラシェ」という名前が付くグラン・クリュが4つあります。シュヴァリエ・モンラシェChevalier-Montrachet、バタール・モンラシェBâtard-Montranet、ビアンヴニュ・バタール・モンラシェBienvenues-Bâtard-Montranet、そしてクリオ・バタール・モンラシェです。

ピュリニー・モンラシェPuligny-Montrachetとシャサーニュ・モンラシェChassagne-Montrachetという単語がありますが、これらは村の名前であり、そしてその村で産されるワインの名前でもあります。これらは、ワインとしましてはグラン・クリュではありません。世界の頂点に立つような偉大なワインを産するモンラシェという畑が、ピュリニー村とシャサーニュ村にまたがって存在しているのですが、それぞれの村が偉大な畑の名を自らの村の名前に付け加えた結果、現在の名になっています。

モンラシェ系のグラン・クリュは、それぞれ微妙に質が異なりますが、やはり偉大な白ワインです。クリオ・バタール・モンラシェは、中でも最小の1.57haしかない極小畑です。偉大なモンラシェの斜め向かいに位置していて、南を向いていて、少し赤っぽい土壌です。
Criots-Batard-Montrachet2

この小さな畑を複数の生産者が分割所有しているため、1樽(750mlのボトル約300本)以上のワインを生産できる面積を所有するのは僅か4人という状況です。そのため、ほとんど見かけることがないワインです。希少性に関してはモンラシェの上を行くグラン・クリュです。

この畑はシャサーニュ・モンラシェ村に属していますが、この村の平均的なワインに比べると、香りの複雑さ、強さ、果実味の豊かさ、ボリューム、余韻の長さにおいて勝り、全体的に密度が高いワインです。流石グラン・クリュです。

クリオ・バタール・モンラシェ。ブルゴーニュのグラン・クリュの中でも、興味深い畑のひとつです。

Clos Yは、6月2日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、素晴らしいブルゴーニュのワインを神楽坂の名店さ々木の特別料理と合わせてお楽しみ頂きます。希少なクリオ・バタール・モンラシェも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第154回 アルザス地方の話 マルセル・ダイス編

フランス北東部に位置するアルザスAlsace地方。

小さな村々には色とりどりの美しい家が並び、観光客が多く集まります。

この土地は美食の地としても知られています。フォワ・グラやマンステールMunsterチーズ、ボリュームのある豚肉料理...

ワインの品質も素晴らしく、ワイン愛好家の中でも特に人気の高いワイン産地のひとつです。

この地方のワインは、単一品種により造られるのが一般的です。リースリングRieslingやピノ・グリPinot Gris、ゲヴュルツトラミネールGewurztraminerなど、品種の個性が生きた華やかなタイプのワインが多いです。

今回ご紹介する生産者マルセル・ダイスMarcel Deissはアルザス地方を代表する生産者でありながら、そのワインはアルザス地方の「例外」的なものが多い、特異な造り手です。
Marcel Deiss

アルザス地方には特級Grand Cruに格付けされている畑が51あります。一般的にはアルザス地方でグラン・クリュを名乗るためには、指定されている畑のぶどうからワインを造らなければならないのはもちろん、高貴4品種と言われる限定されたぶどうだけしか使用が認められず、それもほとんどの場合単一品種でワインが造られます。

しかしマルセル・ダイスは、例えばグラン・クリュであるマンブールMambourgの場合、この地はピノに適しているという考えの下、Pinot Blanc, Pinot Gris, Pinot Noir, Pinot Beurot, Pinot Meunierを栽培し、ワインを造っています。Pinot Meunierなどアルザス地方でA.O.P.ワインを造るためには認められていない品種です!それを使ってでもなおグラン・クリュとしてワインを流通させることができるのはこの生産者のみでしょう。
Mambourg Mambourgの畑

マルセル・ダイスはワイン法をも変える、まさに別格の生産者なのです。

他にもこの造り手の特筆すべき点として、ぶどう品種の混植、混醸、密植(1haあたり12,700株など)、低収量(1haあたり15~20hlなど)など、枚挙に暇がありません。

ワイン造りに何でもありのような感もありますが、この造り手が目指すものはただ一つ、「テロワールの表現」です。そのために土地と真摯に向き合い、ワインに表現しています。

マルセル・ダイスのワイン、特にグラン・クリュなどは高価です。アルザス・ワインが好きな方の中でも、15,000円を払ってマンブールを飲もうと思う方は少ないようです。そのため、知名度が高い割にそのワインは謎に包まれている部分が多いように思われます。

ある土地の声を聞いてみたいと思った時、マルセル・ダイスのワインを飲んでみてはいかがでしょうか。その土地でしか表現できない何が示されているはずです。

Clos Yは、マルセル・ダイスが手掛ける全てのグラン・クリュの試飲を含むワイン講座を企画しています。ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第153回 コニャックの話 マーテル編

コニャックCognac

ブランデーを代表する銘柄のひとつですが、コニャックというお酒が、フランスにあるコニャックという町の周辺の限られたぶどう畑のぶどうのみを原料とする、原産地保護されている農産物であることはあまり知られていないようです。

コニャックの町は、フランス西部にありまして、ボルドーBordeauxの町の北、約100kmの所に位置しています。

同じく、ブランデーを代表する銘柄のひとつ、アルマニャックArmagnacはボルドーの町の南東、約120kmの所で、やはり限定されたぶどう畑のぶどうから造られています。フランスの代表的なブランデーの2銘柄は、ボルドーの町を挟んでそれぞれ100kmほどのところで対峙しているわけです。

コニャックとアルマニャックでは、使用するぶどう品種やぶどうが植えられている地質、蒸留の方法などが異なります。また生産者のスタイルの違いなどもあり、一言で両者の酒質の違いを述べることは難しいのですが、敢えて表現するならばコニャックは華やかでエレガント、アルマニャックは質実剛健で重厚と言えるかもしれません。

今回は、数あるメゾンの中からマーテルMartellをご紹介いたします。

コルドン・ブルーCordon Bleuという銘柄で有名なこのメゾンは、コニャックを造ることができる限定された地域の中でも、ボルドリBorderiesという小地区のぶどうをブレンドに多く用いることが特徴です。

コニャックは蒸留酒ですが、ワイン同様原料となるぶどうの品質が重要です。品種としましてはユニ・ブランUgni Blancが主体で、同じ品種でも育つ地区により性質が異なります。
Cepages

コニャックの代表的な生産地区としまして、グランド・シャンパーニュGrande Champagneやプティット・シャンパーニュPetite Champagne等が挙げられます。前述したボルドリも重要な地区です。
Borderies
Borderie ボルドリの土壌

マーテルが重要視するボルドリの特徴として、すみれの花の香りが出ると言われています。

ワインがお好きな方の中でも、食後に蒸留酒まで楽しまれる方は、今の時点の日本ではあまり多くありません。

忙しい現代、時間の問題もあると思いますが、時にはオー・ド・ヴィeau de vie(=命の水)と呼ばれるコニャックなど蒸留酒の時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。深い癒しの時間にもなることでしょう。

Clos Yは、5月6日のレストラン講座のテーマをボルドーとし、シャトー・ヴァランドローやシャトー・ラトゥール・マルティヤックなど特級格付けのシャトーを含むワインをお楽しみ頂きます。食後にはマーテルのコニャックも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第152回 ジュラ地方の話 レトワール編

フランス東部に位置するジュラJura地方のワイン。

より正確には、フランシュ・コンテ地域圏のジュラ県で造られるワインを指します。

ワイン産地の括りとしてサヴォワSavoieとまとめられることが多いですが、ジュラのワインとサヴォワのワインは、使用する品種も一部を除き異なり、タイプも異なります。

ジュラのワインは黄ワインとして知られるヴァン・ジョーヌVin Jauneや藁のワインヴァン・ド・パイユVin de Pailleなど、個性的なものがありますが、シャルドネやピノ・ノワールも栽培されています。実はブルゴーニュからほど近い(ボーヌBeauneからアルボワArboisまで70kmほど)ワイン産地です。

今回は、小さなジュラ地方の中でも特に小さなワイン産地、日本であまりお目にかかることがないレトワールL’Etoileをご紹介いたします。

フランス語でエトワールは星を意味します。そんな美しい名を持つこのアペラシオンは、ジュラのワイン産地のちょうど中央あたりに位置しています。

レトワールの名を名乗ることができるワインを生みだすことができる畑は僅か80haほど。レトワールのワインはフランスでもあまり出会うことができない希少なワインです。

レトワールのワインは白のみ。白と言っても個性的で、いわゆる一般的な白ワインの他、前述したヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユがあります。

ヴァン・ジョーヌはサヴァニャンSavagninというジュラの地場品種のワインなのですが、樽で6年も熟成させる他に類を見ないワインです。濃い色調とシェリーのよう、と例えられる独特の風味が特徴です。

ヴァン・ド・パイユは、ジュラ地方以外でも見られますが、藁の上で収穫したぶどうを乾燥させて造る複雑な味わいを持つ甘口ワインです。

私はこのアペラシオンを代表する生産者であるシャトー・ド・レトワールChâteau de l’Etoileを訪問しました。

小高い丘の上にあるワイナリーは風情があり、この地方の風景に溶け込んでいます。
Ch. l'Etoile
l'Etoile

この生産者はスパークリング・ワインも造っていますが、こちらはレトワールではなくクレマン・デュ・ジュラCrémant du Juraのアペラシオンが適応されます。
l'Etoile Cremant

レトワールのシャルドネによる白ワインは、お隣のブルゴーニュのシャルドネの白ワインと、やはりタイプが異なります。樽熟成を2~3年もの長い間行うこともあるといった醸造上の違いもありますが、やはり同じ品種とは言えぶどうの質が異なるのでしょう。少しスパイシーでナッツのような香りがあります。

このようなワインは、まさに食事と共に楽しむべきワインです。甲殻類、特にほんのりカレーの風味を纏わせた料理との相性は抜群です。

もしレトワールのワインが手に入る機会がありましたら、試す価値ありです!

Clos Yは、4月16日のレストラン講座のテーマを「ジュラ地方」とし、入手困難な銘柄を含む素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。レトワールも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第151回 イタリアの話 マルケ州 イエージ編

イタリアのワイン。

真っ先に思い浮かぶ銘柄は、キアンティChiantiやバローロBaroloなど赤ワインが多いと思います。

白ワインでは、イタリア北部のヴェネトVeneto州やそのお隣のフリウーリ・ヴェネツィア・ジュリアFriuli-Venezia Giulia州などで上質なものが見られます。

比較的低価格で楽しめる銘柄は、ピエモンテ州のガヴィGaviやヴェネト州のソアヴェSoave、そしてマルケMarche州のヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージVerdicchio dei Castelli di Jesiなどがあります。

今回は、マルケ州のお話です。

アンコーナAnconaを州都とするこの州は、イタリア中部の東側に位置しています。北はエミリア・ロマーニャ州、西はウンブリア州、南はアブルッツォ州と接し、東側には美しいアドリア海が広がっています。
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この州を代表するワインは、上述したヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージです。日本では、銘柄によりますが1,000円ほどで入手できる、名前の長さに反して(?)カジュアルなワインです。

海に面したマルケ州では新鮮な魚介を使った料理がありますが、そのような料理と気軽に楽しむことができるワインです。

さて、この長い名前のワイン、解読するとカステッリ・ディ・イエージ(地名)のヴェルディッキオ(ぶどう品種の名前)、となります。

イタリア語で緑のことをヴェルデverdeといいますが、ヴェルディッキオという白ぶどう品種は緑がかった色をしていますので、そのように名づけられました。

重要な産地であるイエージの町は、アンコーナから内陸に20kmほどの所に位置しています。この州では比較的大きめの町で、私は車で街中を通っただけでしたが、大きめの通りが長く続いており、落ち着いた雰囲気を感じました。
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もうひとつ、挙げるべき産地としてマテリカMatelicaがあります。
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マテリカは海から50km以上離れた内陸にあり、イエージと同じヴェルディッキオでできる白ワインながらこちらの産地のものは「山のワイン」というイメージがあります。ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージよりヴェルディッキオ・ディ・マテリカのほうが、一般的にはよりしっかりした構成をしています。そうなると、合わせる料理はイエージの方には魚介類を、マテリカには魚介も良いですが白身の肉類と合わせても良いと思います。

どちらも軽めのタイプが主流ですが、中には熟成に耐えるワインもあります。そのようなワインはほとんどの場合ClassicoやSuperiore(もしくはその両方)が名前の後に付いています。前者は歴史的に古い、言い換えると長いぶどう栽培の歴史を持つ、特に上質なぶどうが収穫できる限定された地区のワイン、後者は一定の基準よりも良く熟し、糖度が上がったぶどうから造られるワインが名乗ることができる単語です。

優れた生産者のこのようなワインを飲むと、ヴェルディッキオのイメージが変わると思います。

しっかりめのヴェルディッキオのワインは、春の訪れを告げる山菜などと合わせてみても良いと思います。試してみてはいかがでしょうか?

Clos Yは、4月6日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリア全土から選りすぐった素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。樽熟成を施した、別格のヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ クラッシコ スペリオーレも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第150回 オーストラリアの話 タンバランバ編

オーストラリアのワイン。

そう聞くと、アルコールのヴォリュームが強く、果実味が主体で酸味が控えめのワインが想像されるかもしれません。

それは正しくもありますが、もちろんそうではないワインも多く存在しています。

今回は、オーストラリアの南東部、ニュー・サウス・ウェールズ州New South Walesの中でも冷涼な南部に位置するタンバランバTumbarumbaをご紹介いたします。

ワイン造りの歴史の長いヨーロッパなどでは、シャブリChablisやポイヤックPauillacなどワイン産地とその土地で造られるワインの特徴が認識されています。例えば、シャブリと言えばブルゴーニュ地方北部のシャルドネで造られる軽やかな白ワイン、というように。

ではオーストラリアはどうでしょうか。ハンター・ヴァレーHunter Valleyやマーガレット・リヴァーMagaret River、ヤラ・ヴァレーYarra Valleyなどある程度広く認知されつつある産地が出てきておりますが、それぞれの土地で複数のぶどう品種が栽培されていますし、まだ産地自体とその産地を代表するワインのスタイルが確立されていない部分があるように思われます。

それは問題なのかもしれませんが、逆に考えるとそれぞれの土地に多様性があり、知られざる部分が多いとも言えると思います。

特に、注目したいのが、知名度は低いもののしっかりとした特徴を持つ、冷涼な気候に属するワイン産地です。

タンバランバはまさにそのようなワイン産地のひとつです。

James Halliday氏のWine Atlas of Australiaによると、標高は300~800m。ぶどう栽培上の主な懸念事項としては「霜」が挙げられる、冷涼な産地です。栽培されている主要な品種はピノ・ノワールとシャルドネです。

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上質なぶどうが収穫できるのに、タンバランバの名前はあまり知られておりません。なぜかというと、大手生産者が、上質なスパークリング・ワインの原料の一部としてこの土地のぶどうを購入し、ブレンドして用いるためです。必要不可欠なのですが、最終的な商品の一部を成すに過ぎませんのでタンバランバの名前がラベルに表記されることはありません。このような事情のため、この土地の名前を聞いたことが無くても、この土地で栽培されるぶどうから造られたワインを口にしている方もいらっしゃると思います。

稀に、タンバランバの名を記したラベルのワインに出会うことがあります。そのワインは、冒頭で書いたようなヴォリュームのあるタイプではなく、シャブリのようとまでは言いませんが、線が細めながらも充実した果実味を備えた素晴らしいものが多いです。まさに「テロワール」が良く表現されています。当然のことなのですが、オーストラリアにもテロワールの妙があるのです!

このようなワインは、ワインが好きながらもあまり新世界のワインを飲まないような方に是非試して頂きたいと思います。

人生にまたひとつ楽しみを増やしてみてはいかがでしょうか?

Clos Yは、3月19日のレストラン講座のテーマを「オーストラリア」とし、オーストラリア全土から選りすぐった素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ハンギング・ロックのマセドンやデ・ボルトリのノーブル・ワン、そしてペンフォールドのタンバランバ シャルドネも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

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