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ワインコラム 第10回 ボルドー研修編 その2 白ワイン醸造の話

無事に収穫が終わると、今度は醸造所(じょうぞうじょって言いづらいですよね!ボルドーでは醸造所のことをChaiシェと言います。以下、醸造所をシェと書きます。)が忙しくなります。

 

せっかく収穫した新鮮なぶどうも、時間とともに腐敗に向かい劣化していきます。迅速にぶどうを処理することが重要です。トラクターでぶどうがシェに着くと、カジェット(ぶどうが入っている小さなかご)が次々に運ばれてきます。私の仕事は、カジェットを持ち上げてぶどうをプレス機に入れることでした。小さなかごといっても10kgほどあります。少しやるだけならよいのですが、かごを持ち上げてぶどうをあけてという作業を延々とやっているとかなり疲れます。肉体労働です。

e38397e383ace382b9e6a99fe381b8プレス機にぶどうを運ぶコンベアーです。ここにぶどうをあけます。

 

 

プレス機にはいろいろなタイプがあるのですが、シャトー・ラトゥール・マルティヤック (Latour-Martillac) で使用していたのは円筒形の金属のもので、中にはゴム風船のようなものが入っています。作動させるとゆっくりとゴムが膨らんで、ぶどうがその圧力で搾られるわけです。得られた果汁はタンクに移すのですが、澄みきっておらず、低温で半日ほど静置しておきます。すると果汁に含まれていた誇りやぶどうの果肉などがタンクの底にたまり、きれいな果汁が得られます。この静置する工程をデブルバージュと呼びます。

 

こうして得られた果汁を、まずは大きなステンレス・タンクに移します。そこでアルコール発酵が始まります。アルコール発酵は酵母という微生物が行うため、まずは温度調節の容易なタンクで始めるわけです。発酵が安定してきたら、バリックと呼ばれる225ℓ容量の樽に移し、引き続き発酵を続けます。樽で発酵させると、より空気との接触も増え、樽からの成分がワインに与えられ、より複雑な風味のワインになります。

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アルコール発酵が終わると、そのままバリックでの熟成に入ります。発酵中は気の抜けない日々が続きますが、発酵が終わるとひと安心です。仕事も減りますが、この時期にやることがあります。バトナージュです。樽の丸い小さな穴から棒を入れて、中のワインをかき混ぜます。樽の中にはワインと、発酵の役目を終えた酵母の死骸(=澱)が入っています。この澱はアミノ酸などのうまみをワインに与えてくれるので、よりワインと接触させるためにかき混ぜるわけです。樽が二段に重ねられた、それほど広くはないセラーで樽に上りながら延々と作業を続けたものです。懐かしいです...

 

発酵後1ヵ月ほどでしょうか、回数を徐々に減らしながらバトナージュを続けます。バトナージュが終わるとワインは静かな熟成に入ります。この間、人はあまりワインに手を出しませんが、ウイヤージュという重要な作業があります。これは樽にワインを移してから生じる作業です。樽は完全密閉容器ではありませんので、少しずつワインが蒸発して目減りしていきます。するとワインが過度に空気と接触し、望まない酸化が起こってしまうので目減りしたワインを他の樽から補充します。この作業をウイヤージュといいます。清潔なじょうろにワインをいれ、一つ一つの樽に少しづつワインを補充する地味な作業です。でも、重要なんです。

 

熟成が終わると、ほぼワインは完成です。澱を取り除き、きれいなワインを瓶詰めします。

 

造ってみて実感できたのですが、ワインってほんとうにぶどうそのものなんですね。手造りの、自然なものです。日々、ワインの状態を確かめるためにテイスティングをしたのですが、素晴らしいワインでした!あのワインが時を重ねてどのように熟成していくのか楽しみです。

 

次回は、赤ワイン醸造のお話です。

 

 

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