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ワインコラム 第35回 ワイングッズの話 デキャンタ編

ワインの魅力は、芳醇なワインそのものはもちろん、その関連用品にも及んでいると思います。

 

プルタブを開けて飲むだけの缶ビールと違い、ワインを飲むためにはコルクを開ける道具(最近はスクリューキャップも増えていますが)、グラスなどが必要です。

 

さらに、古いワインの澱を舞わせないためにボトルを静置するためのパニエpanier(籠)、美しいソムリエ・ナイフ、ワインを移し替えるデキャンタ、デキャンタ用の漏斗、コルクを置くプレート...など美しい道具はワインの魅力を高めてくれます。

 

今回は、デキャンタDécanteurについて書きたいと思います。

 

デキャンタは、ワインボトルに入っているワインをボトルから移し替える(この移し替えの作業をデキャンタシオンdécantationもしくはデキャンタージュdécantageと言います。)ための容器のことです。主にガラスでできていて、その形状は様々です。

 

その様々な形状は見た目の美しさのためもありますが、デキャンタシオンに期待する2つの大きな目的を考慮して設計されています。

 

その目的の一つは、「澱を取り除くこと」です。熟成が進んだワインや、若くても瓶詰めの際に清澄もろ過もしていないワインは瓶内に固形物の澱が生じている場合があります。その澱はぶどう由来の自然なものなので、体に悪いものではありませんし、飲んでしまっても大丈夫なのですが、そのざらざらした触感や(主に赤ワインの澱に感じられる)苦みは心地の良いものではありません。細かい澱はワインを濁らせてしまって、ワインの美しい色調を損ねてしまうこともあります。

 

それを回避するために、デキャンタを使います。瓶底の澱だけを取り除けばよいのですが、一般的な手法として瓶内の澱の無い部分のワインをデキャンタに移し替えます。すると、デキャンタには澄みきった美しいワインが入り、もとのワインボトルには少量の(時にはある程度の量の)ワインとともに澱が残されます。

 

これで、私たちは澱に悩まされることなく、そのワインを楽しめるわけですね!

 

さて、もうひとつの目的は、少し専門的な話になります。

 

ワインは、場合によっては「還元」した状態にあるときがあります。このような状態のワインは、茹でた小豆や硫黄のような香りが目立ちます。還元とは酸化の反対の状態なので、酸化させてあげれば還元状態が緩和されるわけです。このようなときに、ワインを酸化させることを目的としてデキャンタシオンを行います。

 

長期熟成タイプのワインを若い状態で飲むときにも、同じ目的でデキャンタシオンをします。

 

以上のように、同じデキャンタシオンという行為でも、目的が複数あります。すると、その目的に合った形状のデキャンタを選ばないといけないわけですね。

 

澱を取り除くことが目的の場合、特に古いワインの場合はなるべくワインを空気と接触させたくありませんので、液面の面積が狭くなるような、縦長のデキャンタがよいでしょう。

 

逆に、酸化を目的としてデキャンタシオンを行う場合、なるべくワインを空気と触れさせたいので、フラスコのように底が広がっている形状のデキャンタを用いる必要があります。

 

以上、ワインをおいしく飲むためのデキャンタの話を書きました。

 

もうひとつ、実はデキャンタシオンの意味があります。

 

それは、レストランでソムリエが行うデキャンタシオンです。ワインが美しいデキャンタに入っていると、見た目も美しいですし、ソムリエに大切に扱われている、という満足感も生まれますよね。

 

3つ星レストランでワインをオーダーすると、デキャンタシオンされることが多いように思います。中には、ミネラルウォーターをデキャンタシオンしてくれたお店までありました!

 

みなさまも、たまには家でデキャンタシオンしてみてはいかがでしょうか?良く飲むお気に入りのワインの風味が少し変わると思いますよ。

 

くれぐれも、こぼさないように(笑)

 

 

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