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ワインコラム 第17回 フランスにおけるミシュランガイドとレストラン

私は3回に分けて、合計で2年と3ヵ月フランスで暮らしましたが、どの滞在中も期限付きだったためにできるだけいろいろな経験をしようと思っていました。殊に、「食」に関してはいろいろ冒険しました。フランスの食材、調理法などにとても興味があったので、日本食が恋しくなることもなく、ひたすらフランスの食文化を探っていました。

 

みなさまは、「フランス料理」というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?

 

恐らく、絵画のように美しく飾り立てられた、目にも鮮やかな高級料理を連想される方が多いかと思います。

 

それはそれで一つの真実です。フランス料理を世界に知らしめたのはそのようなスタイルの料理でしょう。しかし、私たち日本人が毎日懐石料理や寿司を食べていないのと同様、フランス人も毎日フォワ・グラやキャビアを食べているわけではありません。

 

例えば日常生活でいうと、一般的なフランス人は大きなスーパーマーケット(もしくは巨大なハイパー・マーケット)で食材を買います。ハム、サラミなどの肉類、チーズ、バターなどの乳製品、野菜、果物...

 

日本と比べて驚くほど異なる食文化ではないと思います。食生活において、日本とフランスの大きな違いは、やはりパンか米か、でしょうか。パンの消費量は日本人の比ではないと思います。フランス人はそれこそ小さな小さなときからパンを食べて育ってきているので、パンに対するこだわりというか、パンに対する「慣れ」があり、他の食材はスーパーで買ってもパンだけは専門店(パン屋=ブランジュリー)で買うという人もいます。フランスにも様々なパンがありますが、一番消費されているのがバゲットbaguette(=棒の意。日本人が使う箸のこともバゲットと言います。)です。俗に言うフランス・パンですね。細長くて普通の袋には入らないので、みんな手に持って歩いています。よく見ると先端が食べられていたりします(笑)。

 

私が大好きだった(今でも大好きですが)のはおいしいバゲットと、状態のいいチーズ、それにワインだけの、シンプルですが贅沢な組み合わせでした。この「黄金の」組み合わせは、驚くほどお互いを引き立て合い、まさにマリアージュmariage=結婚だなあと思ったものです。

 

この組み合わせの、チーズの部分を肉類加工品に換えても最高です。フランス料理で「豚肉」のイメージはあまりないかもしれませんが、フランス人は実にたくさんの豚肉を加工品として(もちろん加工品としてではなくても)消費します。代表的なものが生ハムJambon Cruです。他にパテpâté、サラミsaucissonなどなど。

 

これらは家庭でよく消費されますが、レストランでも登場します。

 

ここで、フランス料理の構成について少しお話します。

 

フランス料理は一般的に、前菜Entée、主菜Plat、デザートDessertで構成されています。もっと豪華な場合は主菜が魚料理と肉料理両方出たりして、皿数が増えます。逆にお昼などはより簡単に、皿数が減ります。レストランなどでは、最初の前菜が出されてそれを完食するとお皿が下げられ次の料理が出てくる流れになっています。

 

話を戻すと、肉類加工品は前菜として頻繁に登場します。レストランの格にもよりますが、一般的に家庭で食べるものより上質なものが提供されます。

 

ワインもそうですが、ヨーロッパでは「高級食材=限定された原産地で育った個性的な食材」と定義できると思います。なので、例えばレストランで出される生ハムは「バイヨンヌの生ハム」など産地表示があることがあります。このような食材は素直においしいのですが、やはりその土地が育んだ特有の風味があるようです。

 

さて、レストランの格と書きましたが、具体的にはどのような違いがレストランの格の違いに結びつくのでしょうか?

 

元となるのが、オーナーの意向でしょう。高級食材を使った最高の料理をきちんとしたホール・スタッフがお客様に提供する高級店か、カジュアルな雰囲気で、気取らない料理を出す普段使いの店か...

 

日本で「レストラン」というと単に外食をする店というイメージですよね。「ファミリー・レストラン」というものがそれを象徴しているように思います。フランスでは、料理店はそのスタイルにより呼び名が変わります。いわゆるカジュアルなレストランは「ビストロBistro」、もっとくだけた雰囲気のところは「カフェcafé」と表記するところもあります。「レストランrestaurant」は一般的にはテーブルクロスがかけられたきれいなテーブルで、手間暇かけて調理された料理を味わう高級店です。

ajaccio ビストロのテーブル

bernard-loiseau2 レストランのテーブル

 

それぞれの目的=スタイルを確立するために、自然と内装、料理が決まってきます。ビストロでは布のクロスではなく紙のクロスがテーブルに敷かれることが多いようです。高級なレストランで家庭でもできるようなシンプルな料理を出すお店はほとんどないでしょう。

 

重要な事柄として、「サービス」も忘れてはなりません。サービスとは、ホール・スタッフによる接客を意味します。スタッフからお客様へのアプローチ、お客様からスタッフへの要望に対する対応などです。最高の料理を出すお店があるとして、それを提供するスタッフのサービスが悪かったら、最終的にそのお店に対して良い印象は残らないですよね。逆に、料理は最高とは言えなくても、サービスが良いからまた行きたくなる店というのもあると思います。そう言った意味でサービスとは実に重要な要素だと思います。

 

日本でも話題になりましたが、フランスには「ミシュランMichelin」社によるレストラン・ガイドが広く普及しています。その実態は、レストランとホテルを独自の基準で格付けして紹介しているものです。レストランの評価において、特に優れたレストランは星☆付きで紹介されています。一つ星☆から三つ星☆☆☆まであり、最高評価の3つ星評価を手に入れたレストランには成功が約束されます。単なるレストラン・ガイドの枠を超えた、社会的に注目される出版物です。

 

次回は私が実際に訪れた、ミシュラン推薦のお店のお話です。

 

 

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