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ワインコラム 第7回 スペイン フミーリャ、カタルーニャ編

昨年はいろいろなワイン産地を回ることができました。今回のコラムでは、その旅の中から前回に引き続きスペインのお話をご紹介いたします。

 

2008823日にマドリッドに入りました。2004年にもお世話になった友人の家に1晩泊めてもらい、翌日電車でスペイン南東部に向かいました。エジンという町に住む、ボルドー時代の友人を訪れるためでした。エジンはひっそりとした小さな町ですが、近くにフミーリャという比較的大きな町があります。この周辺で造られるワインはフミーリャという名前で市場に出ます。知名度はあまり高くないものの、モナストレル(フランスのムルヴェードル)というぶどう品種が主体の果実味たっぷりの赤ワインは、コストパフォーマンスが高く注目すべきだと思います。

 

もともと友人との再会だけが目的でこの地を訪れました。彼はスペイン人ですがボルドー時代の親友でした。何をするという予定もなくエジンに飛び込んだのですが、意外と近くにワイン産地があったため、ワイナリー巡りをすることにしました。ワイン好きはどこへ行ってもワインに惹かれるようです...

 

エジン近くの数件のワイナリーを訪問しましたが、一番印象に残ったのはこの地を代表するワイナリーのひとつ、カーサ・デ・ラ・エルミータです。町から離れ、辺りには何もないような降水量の少ない乾いた大地に、ワイナリーはあります。

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8月の燦々と照りつける太陽が痛いほどです。ぶどうは良く熟し、芳醇なワインに生まれ変わります。さすが上質なワインを造っているワイナリーだけあって、この地にどのようなぶどう品種が適しているか、実にたくさんの種類のぶどうを植えてその適合性を観察しているようです。数年後、この地から思いもよらないぶどう品種による素晴らしいワインが誕生するかもしれません!

 

ワインの話からはそれますが、ここで過ごした数日は素晴らしい日々でした。友人宅には4泊させていただいたのですが、今までになくスペインの生活に浸ることができました。一日の流れを見てみると、8時ころに起き、まだ太陽がおとなしいうちに一仕事済ませます。12時頃昼食ですが、家族そろってゆっくりと、たっぷり食べます。食後はシエスタです。3時間ほどでしょうか、暑さを避け体を休めます。その後また仕事に戻り、夕食は22時過ぎになりますが、昼と比べて驚くほど簡単に済ませてしまいます。一日の食事のメインは昼のようでした。確かに、体のことを考えると夜にたくさん食べるよりいいですよね。

 

意外だったのが、あまりワインを飲まなかったことです。スペインはワインの生産量が世界的に見ても多いのですが、消費量は生産量に比べると多くありません。実際この家族もワインはあまり飲んでいないようでした。まさかスペインまで来て、地元の人に地元のワインを紹介することになるとは思ってもいませんでしたが、現実はこのようなものかもしれませんね。このコラムを読んでいいただいているみなさまも、地元に地酒があるかもしれません。それをうまく説明できるかというと、難しいかもしれないですね。

 

さて、友人と別れ、スペイン北東部に向かいました。これから訪れるのは、スペイン屈指の名醸地プリオラートです。この地のワインはここ数年急激に評価を高めており、要注目です。私が訪問したのは、この地を代表する造り手、アルバロ・パラシオスです。最上のキュヴェ「レルミタ」には110万円もの価格がつけられる、プリオラートのみならずスペインを代表する造り手のひとりです。

 

プリオラートはグラタジョプスという小さな村を中心に広がっています。グラタジョプスは本当に小さな村で、最も近い大都市タラゴナから車を借りて行かざるをえないようなところです。

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私はタラゴナという比較的大きな町で車を借りました。レンタカーはそれほど利用しないのですが、いつも初めての車には苦労しますね。特にマニュアルの場合、ギアがどうなっているのか(特にバック)、サイドブレーキはどれか、など...。慣れない車で、初めての道を恐る恐る走りようやくたどり着きました。しかしこの土地は恐るべきところです。神がかっているように感じられます。畑に入って、ぶどうから「見られている」ように感じたのはこの場所以外にはありません。

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明らかに別格の土地です。小石の多い急斜面の土地に、整然とぶどうが植えられています。素晴らしいワインができるのは自然の成り行きのようにすら感じてしまうところでした。働く人は大変だと思いますが。

 

テイスティングさせていただいたワインも特別でした。上級のワインになるほどピュアさ、繊細さが際立ちます。一般的には高額ワインほど凝縮され密度の高いものになるのですが、最上級キュヴェである「レルミタ」は別格の、浮遊するような不思議なエネルギーを感じました。フランスを代表するワインのひとつ、ロマネ・コンティにも共通する不思議な力だと思います。

 

充実した訪問を終え、私はバルセロナに向かいました。バルセロナの近くに、スペインを代表するスパークリング・ワインであるカバの産地があります。カバはフランスの高級スパークリング・ワインであるシャンパーニュと同じ製造法(=瓶内二次発酵。手間暇がかかり、高級スパークリング・ワインに向く)で造れているにもかかわらず信じがたいコストパフォーマンスを実現しているワインです。ここでも数件の造り手さんを訪れましたが、特に印象深かったのがレカレド社でした。

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カバはシャンパーニュ同様、生産規模の大きな造り手が多いのですが、その中にあってレカレドは家族経営の小規模な造り手です。ぶどう栽培にはビオディナミ(有機栽培の一種。)を採用し、手間暇をかけています。上質なワインの理由は、畑を一目見ただけで十分に理解できました。整然と手入れされ、他の畑と比べて美しさが違います。「上質なワインを造る」というのを何よりも重視しているようで、作業のひとつひとつに手間暇がかけられ、理にかなっていました。

 

ワインの発酵には、スパークリング・ワインでは珍しく樽を使います。こうすることによって穏やかに酸化が進み、複雑な風味のワインができます。一度出来上がったワインを瓶詰めし、さらに2度目のアルコール発酵を起こさせ、ガスを得ます。そして長期間熟成させます。テイスティングしてみると、ぶどうからくる果実味がしっかりとあり、酸味がエレガントで、恐ろしいほどのミネラル感があり、複雑な余韻は長く続きます。スペインのみならず、世界規模に上質なワインでした。

 

残念ながら、価格は上質なシャンパーニュほどするのですが、内容を考えると納得の価格です。ただ、その価格のために売れ行きが順調とは言えないようでした。難しいですね。しかしこのような「情熱」のあるワインは高く評価されるはずです。

 

カジュアルなワインから、今回ご紹介したような偉大なワインまで、魅力的なワインを生み出す国、スペイン。これからも素晴らしいワインをご紹介していきたいと思います。

 

次回は、「食」について書きたいと思います。

 

 

 

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