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ワイン・コラム 第191回 ワインの提供温度に対する考察

美味しいワイン、とは。

近年ではスーパー・マーケットでも多彩なワインの選択が可能になり、1,000円前後でも日常的に楽しめる良質なワインがお手軽に手に入ります。

考えてみると、20年前はそうでもなかったと思います。日本では1998年にチリの赤ワイン、特にカベルネ・ソーヴィニヨンのワイン・ブームがありました。その頃からワインが徐々に日本の食文化に定着してきたかなと思います。当時は1,000円出しても、今の1,000円のワインのような品質のボトルが手に入らなかったと思います。

フランスにおいても、やはり近年になって、特に底辺クラスのワインの品質向上が顕著だと思います。私が2000年にフランスに居た時には、中級クラス以上のワイン(当時70フランくらい以上。1フランは約20円でした。)は良い品質ものが多かったですが、200円~300円で買えるようなワインの中には、A.O.C.を取得しているものでもあまり楽しめないワインが少なくなかったように記憶しています。

実際のところ、1980年代にボルドー大学のドゥニ・デュブルデューDenis Dubourdieu教授が推進した白ワイン革命に始まり、醸造や栽培の技術が向上し、それが世界に広まっていきました。結果として、2000年前後から世界的にワインの品質がより現代的に改革されていった実感があります。

ここで冒頭の問いに戻りますが、現代ではたとえ1,000円くらいのワインでも、ご自分のお好みに合うワインを探すことができれば美味しいワインにたどり着くことができると思います。何が美味しいワインなのか、はまた別のテーマになりますので以下、今回のコラムのテーマに移りたいと思います。

さて、今回のコラムのテーマに参りますが、ワインを美味しく楽しむための2大条件は、「グラス」と「温度」と言えると思います。

美しい色調を見るため、また素晴らしい香りを十分に楽しむためには、透明で口の部分がすぼまった形状のワイン・グラスを選ぶべきでしょう。

そしてワインの温度ですが、低すぎても高すぎてもいけません。厳密にいうと、ある程度の幅を持ちながらも、世界中のワインひとつひとつに適した温度があると思います。

白ワインは冷やして。赤ワインは常温で。この時代はもう終わっているのです。

スパークリング・ワイン、白ワイン、ロゼ・ワイン、赤ワイン、甘口ワイン...全てのワインに共通して、
「複雑さを有するワイン(高価なワインに多いです。)は冷やし過ぎず、比較的高い温度で。」
「軽快でシンプルな構成のワインは温度を下げ気味に。」

ここでワインの温度を高く/低くするとどうなるか
温度を高くすると
香りが豊かになる。温度が低いと感じ取れなかった香りが出てくる。香りの要素数と、そのボリュームが増す。
アルコール感が強くなる。
タンニンが柔らかく感じられる。
酸味が穏やかに感じられる。

温度を低くすると
香りがシンプルになる。温度が高い時に感じ取れた香りが取れなくなる。香りの数とボリュームが減る。
アルコール感が目立たなくなる。
タンニンがより強く感じられる。
酸味が比較的強く感じられる。

まだいくつかありますが、これはワインだけでは無くて、あらゆる食品に言えることかと思います。果物、チョコレート、生ハム、チーズ、アイスクリーム...温度によって香りや味わいが変わりますよね。

具体的に例を挙げますと、スパークリング・ワインの場合、比較的安価でシンプルなスパークリング・ワインは、それほど複雑性を備えていませんし、食前酒的な役割を負うものが多いですので、氷水を入れたワイン・クーラーの中に入れてよく冷やして、爽やかさを強調してあげると良いでしょう。
ヴィンテージ入りのシャンパーニュやフランチャコルタ、カバなど特に上質なスパークリング・ワインは、ワインとしての複雑性が高く、香りの要素も豊かです。これを強く冷やしてしまうとせっかくの複雑さがちぢこまってあまり感じ取れなくなってしまいます。上質なスパークリング・ワインは氷水などに絶対に入れずに、12℃前後で楽しむとより良い結果になると思います。食前酒としてだけではなく、お料理と合わせて楽しめるでしょう。

白ワインの提供温度も、スパークリング・ワインのような考え方で良いと思います。かなり複雑性の強いグラン・クリュなどは、15℃前後まで温度を上げても良いでしょう。

赤ワインの場合は、そのワインに含まれるタンニンの量が鍵になると思います。渋みの元であるタンニンは、冷やすと粗く、強く感じられますので、タンニンを多く含むワインは18℃以上にするなど、冷やしすぎない方が良いでしょう。しかし温度を上げ過ぎても、香りがぼやけてアルコール感が強くなり、洗練に欠けるようになるので、24℃以下にとどめると良いように思われます。
タンニンを多く含まない赤ワインは、銘柄によっては12℃など、なかなか冷たく冷やしてもフレッシュ感が強調されて美味しく飲めると思います。

ロゼ・ワインは、スパークリング・ワインや白ワインの考え方を基調に、含まれるタンニン量を加味して考えると良いでしょう。

具体的に温度を挙げましたが、ひとまずの参考にして頂ければと思います。世界には多くのワインがありますので、上述の枠外の温度でサービスすべきワインもありますし、状況もあると思います。

難しい部分もあると思いますが、良いグラスがあれば、あとは温度を制すれば快適なワイン・ライフを送れることでしょう。最初のうちはいろいろ温度を変えてワインの表情を見てみると、発見があって面白いと思います。

是非試してみてください!

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