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ワインコラム 第60回 ボルドーの話 サンテミリオン編

2010年の9月にフランスとイタリアのワイン産地を訪問してきました。

 

そのまだ新鮮な情報をお伝えしようと思います。今回はボルドーBordeauxの町とサンテミリオンSaint-Emilionがテーマです。

 

ボルドーに限った事ではありませんが、この時期のフランスは朝、晩は冷え込みますが、日中は照りつける太陽の日差しが強烈で、暑く感じます。しかし空気は乾燥しており、日陰は涼しく、快適です。

 

そんな爽やかな空気の中、サンテミリオンへと向かいました。

DSC00365 ボルドーの町。 

ちょうどこの日はイベントがあり、小さな町が大変混雑していました。

DSC00367 サンテミリオンの教会前で。 

訪問したのはシャトー・ロル・ヴァランタンChâteau Rol Valentinです。

 

ボルドーではひとつのシャトーが100ha以上の畑を所有していることも珍しくないのですが、シャトー・ロル・ヴァランタンはわずか7.5haの畑を所有するのみの小さな生産者です。

DSC00375 ロル・ヴァランタンの畑。 

そのためでしょうか、ワイン造りの方法も一般的なボルドーのシャトーと異なっています。畑を小さな区画ごとに分け、区画ごとに小さな容量の発酵槽で発酵させます。このことについては、大規模なシャトーでも高品質なワインを目指すところでは実施しています。

 

特徴的なのは、アルコール発酵中にピジャージュpigeageをするということです。少し専門的な話になりますが、赤ワインを造るために必要不可欠な色素、渋みはぶどうの皮や種からもたらされます。そのため、アルコール発酵中は果汁と果皮、種を接触させておくことが必要になるのですが、アルコール発酵中に生じる炭酸ガスのために果皮や種などの固形物は発酵槽の上部に浮かんで行ってしまいます。すると色素などの抽出ができなくなってしまいますので、何か手を打たなくてはなりません。

 

ボルドーで一般的なのは、ルモンタージュremontageという方法です。発酵槽の下部から果汁を引き抜いてポンプで上部に送り、浮かんでいる固形物に振りかける作業を指します。ロル・ヴァランタンが実施しているピジャージュとは、発酵槽の上部に浮かんでしまった固形物を木の棒で上から下へ(発酵槽の内部へ)押し下げる作業です。

 

ルモンタージュもピジャージュも固形物と液体を接触させる、という点では一緒ですが、ピジャージュのほうが抽出が強くなります。そのため、この方法はぶどうの果皮の色素が薄い、もしくはタンニンがそれほど強くないピノ・ノワールPinot Noirなどのぶどう品種に適応されることが一般的です。ロル・ヴァランタンの主要品種はメルロMerlotで、色素もタンニンもしっかりしているぶどう品種です。

 

では、ロル・ヴァランタンのワインが過度に凝縮して、渋みの塊のようかというと、そうでもないのです。渋みは確かにしっかりしているのですが、ぎすぎすしないまろやかな口当たりです。これは、いろいろな意味で本当に良く熟したぶどうによるものでしょう。ワインの質の大部分はぶどうの質によるものですからね。

 

面白いものを見せてもらった充実した訪問の後、ボルドー市内に戻り、夜はラ・チュピナLa Tupinaで食事をしました。ボルドーを代表する素晴らしいレストランのひとつで、フランス南西部の料理を得意としています。珍しい、アキテーヌ地方Aquitaine(フランス南西部、ボルドーを含む。)のキャビアなど、地元の上質な食材を使ったおいしい料理を楽しみました。

DSC00380 キャビアを乗せた帆立のタルタル。 

最後に、まだ確定的なことは言えないのですが、「この調子でいけば、今年(2010年)は偉大な2009年を凌ぐほどのヴィンテージになるだろう」と、ロル・ヴァランタンのオーナーが言っていました。2010年も良い年になるといいですね!価格さえ控えめであるならば...

 

 

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